#7 王女
時を遡る事約30秒前。
「あれっ、ルリアさんなんで前から出てきたんですか!?」
廊下をダッシュしていたルイラは同じくダッシュしていたルリアと遭遇する。今のところ廊下に方向感覚を狂わせるような魔法も仕掛けも無し、どうやら本当に繋がっているようだ。
「私は同じ方向に走ってたんだけど・・・その様子だと道は繋がってたみたいね」
「……あれ?じゃあ……」
「新人君だけがハズレルートかな」
何かとあの人運が無いですね、と流しておいて一つになったルートを二人で走る。
「そうそう、さっき運良く警備に行こうとしてた兵士がいたんだけど」
「その『運良く』ってどういう意味なんでしょう……」
「話を聞けるって意味で。で、どうやら他の兵士たちに合図を出すには『鐘』を鳴らす必要があるらしくて」
「鐘……ですか?」
言われて気づく、確かにこの城の最上階の屋根の下にはいかにもな紐付きベルがあった。アレをどう使うのかは分からないが「鳴らしたら何かの合図が発動する」ということだろう。
「それを鳴らせばいいんですか?」
「そういう事!私は王室行ってくるからそっちをよろしく、さっき警備から地図奪ったし!」
「いつの間に……あの、先に鐘の位置教えて貰えません!?」
鐘の位置が分かっているなら先に教えて貰えばいいのだ。……ただ、ルリアがそんな素直に教えてくれるかが問題なのだが。ルイラのワープは制限は少ないものだがその制限のせいで随分と使い道が絞られてくるタイプ、思わぬところで時間不足で躓きたくはない。
「一番上の階から一つ下、南側の部屋から鳴らせるっぽい。でも普通の警備兵は鳴らせないんだってさ」
「何かがいるとかじゃないですよね……?」
「わかんない!教えてくれなかったし……私は一番上に行くね!」
「そりゃあ敵に重要情報漏らしちゃダメでしょ……行ってみます!」
「……という訳です!」
「わざわざ急ぎ用の時に走りながら回想シーンご苦労様!」
事情を説明されながら登り階段を全力ダッシュ。走りながら会話を理解するのは相当技術がいる、当然そんな技術を持ち合わせているわけでもない。
「で、一番上の一つ下の階の南側の部屋?そこに行けばいいんだな?」
しばらく通信を切断していたトランシーバーを復旧。今の状況は大丈夫かな、と若干不安を感じながら指令を出すためにマイク部分を近づける。
「司令部より連絡!あと少しで作戦成功!引き続き耐久勝負を頼む!」
『ウォイ新人!こちら右人突撃班ウルフ・グランツ!』
「はいぃ!?何でしょうか!?」
突然スピーカー越しに怒声が響いたので驚きで思わず足を止めてしまう。誰だってトランシーバーの先から怒声が聞こえてくればそうなるだろうが、今回は自分のポジションが中々に重要なこともあってかなりの緊張。
『あと何分持ちこたえればいい!?さすがにこっちが疲れ始めてる!』
「……5分でお願いします!」
『オッケー了解!あと5分で終わるってよー!』
グランツの声が少し遠くなってそう叫ぶ、と同時に通信切断。進撃の声は未だに外から響いてくる、確かに終わりが見えない戦い程やってて戦意が削がれるものは無い。
(でもあと5分って言いきっちゃったのはマズイなー……俺って確定してない事を言いきるのは嫌いなんだが……)
「ヒサメさん前っ!前―っ!」
「はえ?―――ッぶっ!?」
声に反応して後ろを振り向き、その目線に釣られて前を向いた直後に額と鼻の頭に走る鈍い痛み。考え事をしていて前を見ていなかったのはどう考えても悪いのは自分。でも階段登り切ったら直後目の前に扉ってのはさすがに卑怯だと思う。
「……頭大丈夫ですか?」
「それどっちの意味?俺の事アホって言ってる?それとも石頭って言ってる?」
「どっちもです!」
「すっげぇ失礼だな……」
ヒリヒリした額を抑えながら体を起こす。眼の前にあったのはいかにも重厚感がある綺麗な扉、宝石のようなものが扉にちりばめられている点が豪華。この城の設計者は装飾とかを重視しすぎて機能性を考えてい無さそうだ。
「部屋の場所はここで合ってるんだよな……?」
「というかこの階はここ以外に部屋が無いんですけど……」
「じゃあ王室ってどこにあるんだ?」
「階段がいくつかあるけど繋がってないって感じだと思います。さっきルリアさんは逆に走って行ったので……」
なるほど、つまりこの城は下の階層は繋がっているが上層部は塔のようになっていて横に移動できないようになっているのだろう。
「ほーん、了解。じゃあなんでその鐘がある場所がこんな頑丈に守られてるんだ?」
「頑丈と言うか……なんか装飾が多いですよね」
普通に考えて、鐘しかないのならば部屋は宝石を散りばめるほど豪華にはしないだろう。しても無駄だし、説明を聞く限りその鐘は非常用の鐘。そんな場所を豪華にする理由はない。
「じゃあ……この部屋には別の何かがある?」
「と考えるのが一般的ですね。部屋はここ以外に無いですし」
「よし了解、はい開錠、っと!」
理解したと呟きながら若干後ろに下がって左足で踏み込み、豪華な扉に向かって曲げた右脚を全力で押し出す。開錠と言っておきながらドアに鍵は掛かってない。頑丈な扉なのに鍵が無いのも何か変だ。
まあ、亜人種補正で扉を蹴破るのも少々非常識ではあると思う。でもこういうの一回やってみたかったのだ。
「ひゃい!?だ……誰!?」
ドアを激しく蹴り飛ばした先はいかにもメルヘンな家具などで彩られた部屋。そしてありがちなフリフリのドレスを着たお嬢様。髪は薄い青―――空色よりもさらに薄い。
この世界でもポニーテールというものはあるのかと今知った。
「…………ルイラ」
「……はい」
「……ここの王様って娘いたのか……?」
「私も今初めて知りました……」
正確には分からないが、この国に長くいるルイラが知らないということは基本的に国民はほとんど知らないのかもしれない。それに頑丈な扉なのに鍵が無いのは―――。
「……なるほど、扉を一人で開けられるほどの力が無いのか」
チラリと自分で蹴り飛ばした重たいドアを眺める。今でこそ難なく蹴り飛ばしたが、「普通の人間」で「部屋に閉じ込められている」のであれば筋力は衰弱するに決まっている。国民に見られずに隔離されていたらあり得なくはないが、その場合ここの王様は少々人間性に欠けているかもしれない。
「えっと……この国の王様の娘さん……でいいんだよな?」
「え!?は、はい……」
なんだろう、この、「クラスで一人で座っているやつに話しかけたらすっごい話しにくかった」みたいな感覚。人に慣れていない説すらある。
「……えー……えっと……ルリアさんに報告と確認してきましょうか……?」
「多分その方が良いな……呼ぶとかそういう方向で頼む。あと早く帰って来て、一人だと死ぬ」
「ヒサメさん今顔真っ青ですよ」
ルイラは「じゃあ行ってきますね!」と言ってワープしていった。この城の中に何があるかわからないのにあそこまで平常心が持てるのはすごいと思う。俺は絶対無理、というか今でも既に恐い。
「……すみません、あなた達は誰なんですか?」
まあ、至極真っ当な疑問。そりゃあ扉を足でこじ開けて入ってくる奴に誰だお前はと聞かずにいれるか。ここで正直に答えるべきなのか否か。
こんな見た目でもしかしたらすさまじく強いのかもしれない、下手に素性を後悔したくはないが、状況的にはもはやどうでもいいような気もする。
「あーっと……何って言うか…………市民革命団体です」
自由民権運動みたいな感じに言ってしまったが簡略するとテロリスト。革命団体の時点で随分とマズイのだがその単語がこの世界にあるかどうかが疑問。
「かっこいい名前の人たちなんですね!」
……失礼、まさかここまでとは思ってもいなかった。
「……あー、簡単に言おうお嬢様、俺達はこの城を占拠して国自体を変えようとしている。場合によっては城の破壊もだ。ウチのリーダーが今王様に直談判中。話が通じなかったら……まあ、その時はその時。そう受け止めておいてくれ」
軽くぼかしておく。たとえ軟禁されてようとも親が殺されるというのはもしかしたら娘には重く映るかもしれない。それでも―――。
「……わかりました。この国は変わってしまうのですね」
「……まあ、そういう事になってしまうんですけど、まあ……その……」
「この国が亜人種に厳しいことは知っています。あなたが隠しているその角もそうでしょう、人種で差別化を図り、人を選りすぐりだけ残すのは確かに良くありません」
「お……おお……?」
なんだろう、めっちゃ話が進んでいくのだけれどいいのだろうか。事前に聞いていたほど亜人種に対する理解が無いようには思えないのだが……?
「私の父、現国王は亜人種が嫌いでしょう。何か恨みがあったらしいですが、その思想を何の恨みを持っていない娘に押し付けるのはそれ以前の問題だと思います」
「……なんて言うか……しっかりしてるなあ……あ?」
耳に少しばかり聞きたくない音が聞こえる。さりげなくスマホをチェック。そうでないことを祈りたいが、どう考えても音が聞き慣れない金属の『それ』だ。
「どうかしましたか?」
お嬢様は何ら問題が無いようにベッドの上に座りながら問いかけてくる。自分が置かれている状況に恐怖を隠せなくて顔が引きつっているのが自分でもわかるがどうにか誤魔化し笑い。
「ああ、いや……どうぞ続けて」
「きっと父は私に次の王を任せようとしたのでしょうけれど、民の事もまともに見させてくれずに王にさせるのはさすがに不誠実ですし、民衆からも反感を買うでしょう」
今まで見た事が無い女がいきなり王に即位して政治を行う、確かに民衆は疑問を覚えるだろう。何時の間に娘が出来ていたのか疑問にもなるだろうが、それよりも問題なのは民衆からの納得だ。
民衆が見た事が無いという事は、その場合は大抵「王様も市民を見ていない」だろう。こちらから見えないのであれば相手からも見えない。民を知らない奴に政治を任せていられるかどうか、その判断を間違える程民衆が馬鹿でもないだろう。
「私は差別は嫌いです。そのためにも今のままでは……あの、後ろっ!」
存在感とリアクションで後ろに何かがいるのが分かる、恐らく凶器持ちだろう。しかも随分と鋭いタイプの剣をお持ちな存在感、城の警備兵とかだろうと予想できる。警備なんだから武器の一つも無ければ勤まらない。
突然背後からの奇襲。後ろを見れる目が無ければ予測できないだろう。
そう、『後ろを見れる目が無ければ』―――。
背後から迫っていた何かが棒状の何かを振り降ろす。そしてそれを。
『紙に映し出しておいた魔方陣』で受け止める。
「良い奇襲だったぜ、スマホが無かったら即死だった」
先ほどの『聞きたくない音』というのは鎧の音。階段の下から金属の擦れる音がした時点でスマホを右手に持ち、下を向きながら内カメラで背後を確認していた。
そして魔方陣。なぜまともな魔法すら扱えないのに魔方陣が出せるのか。
それはルイラと作戦会議をした後、寝る前の実験で使い方を知った魔法である。
「『写真』……どう使うんだろうな?」
寝る前に机に置かれたデスクライトでスマホを眺める。
魔力を送り込んで『写真』を開くことは特に変化なし、ライブラリにある写真を選択して魔力を込める。試しに昔スマホを初めて買ってもらった時にはしゃいで何で撮ったかわからないリンゴの写真でしてみよう。
その写真を選択して魔力を込める、すると―――。
「……印刷できるんだよな、なぜか」
スマホの画面からポン、という子気味良い音と共に正方形の紙が出てくる。それには綺麗に印刷されたリンゴ、スマホは縦長なのになぜ正方形なのだろうか。
「しかもこれ、これ以上の使い道がないんだよな……」
そう、困ったことにこのアプリ、機能が印刷できるだけ。本当に謎。
「何に使えるんだよこれ……プリンターいらずって事くらいだろ……」
写真を天井に翳すように頭上でひらひらさせる。その時に何を思ったのか、紙に魔力を流すとどうなるのだろうか、というアイデアを試してみようと魔力を流し込んだ。その瞬間_。
「―――は?おぼっ!?」
頭上でいきなりリンゴが実体化し、重力に従って顔面を打ち付けた。鼻の頭を押さえながら床に転がったリンゴを拾う、本当にリンゴだ。赤くて光沢がある、表面にとても薄い斑点があるのがまたリンゴらしい
「痛ってぇ……リンゴが、実体化した……!?」
どういう原理かと疑う前にまず食べてみる。シャリッっとした舌触り、味も特に問題なし。いかにも食べたことがある普通のリンゴだ。
「……これ、最強能力じゃ……!?」
写真を実体化できる。ならば、写真であるものならば出せるわけで。
「これリンゴ食べ放題じゃん……マジかよ……出力出力」
そして印刷している時にとある事に気づく。五枚目くらいの時である。
「……ん?あれ?なんか……色が薄くなってる?」
写真が印刷するにつれて少しずつ白黒になっているのだ。写真だけでなく、スマホの中の画像も白黒になっているように見える。
「あれ、でも取りだしたら色が戻る……んぐ……味も普通だな」
よくわからないまま印刷し続けて十回目。
「……お?なんかダイアログが出てきたな。えーっと、『この画像データは壊れています。スキャンして削除しますか?』…………なるほど」
理解した、この印刷はやり過ぎると画像データを壊してしまうらしい。制限がある事は分かったが、無限に出来るものではないということが判明したことはかなり大きい。過剰な期待をしてしまうよりかはまだマシな方だ。
「これで戦闘に使えそうな画像があればいいんだけど……」
そして画像フォルダを漁って15分。とりあえず出力したのは二枚。
動画背景の透過素材にしようとした拾い物の魔方陣と、なぜか持っていた火の玉の画像。後者は何で使おうと思ってたかすら不明だ。
「この魔方陣って使えるのかな……えいっ」
写真に魔力を込めて前に投げる。そこには確かに写真通りの紅い魔方陣が。
「……えっ、これだけ?何か出るとかないの?マジで?」
その後5分位殴ったり触ってみたりして見たが特に変化は無し。
「ハァ、ハァ……ただ……めっちゃ堅いなこれ」
そう、割れない。どうなっているのかは知らないが割れない。何かしたら割れるのだろうが時間経過以外では一人では割れなかった。
時間経過は1分弱。その場しのぎの盾としては優秀かもしれない。
「じゃあ……こっちの火の玉か」
同じく写真を掴んで魔力を流して前に投げる。出てきたのは火の玉が六つ。出てきた火の玉は一列になり、体を取り巻くように周囲に整列した。
「おっ!?……お?これもしかして……」
操作できたりするのだろうか。折角だから今さっき出した魔方陣で試し撃ち。
「……えーっと、どうしたらいいんだろ……手を構えて……射撃!」
手を銃のような形にして唱える。自分の正面にあった火の玉が手に登って来て、火の玉は指先から勢いよく放たれた。そして魔方陣の中心に当たると同時に音を立てて火球は弾けた。
「おおおっ……中々かっこいいじゃんこれ、しかも火の玉。属性付きの攻撃魔法とかロマン溢れてるな」
ただ、これは写真。使いすぎたら使えなくなってしまうことも注意せねば。
「明日の準備でもするか……明日使うアプリは……これと……『写真』。よし、これとこれを手元に置いておこう」
新しく印刷した火の玉と魔方陣をズボンのポケットに折りたたんで入れた。
「あとは本番のルリアさんの統率能力に懸かってるな……よし、寝るか」
そして今に至る。
振りかぶった剣を魔方陣で受け止め、即座に火の玉を魔力展開。どうやらこの魔方陣は物理耐久もそこそこあるらしい。盾としては有能。
「奇襲わざわざご苦労!発射――火の玉だけにな!」
展開した火の玉は六つが一点に収縮し、その後弾けるように相手に一斉突撃。金属の鎧と言えど魔力耐性は微妙、それに金属なら熱が伝導するため火は効果的だ。
……まあ、それを考慮する前に火の玉の威力でドアを突き抜けて警備は階段の壁にぶつかったのだが。
(うっわー……威力スゲェなこれ……回数限られてるのが悔しいな)
「ヒサメさん!?なんかすごい音しましたけど!?」
「来るの遅えよルイラ!その魔法万能なんだからもっと早く来てくれ!」
「ルリアさんにいろいろ聞いてたら遅くなっちゃって……」
「ただ今到着!って、おお、本当にいるんだね、娘さん」
ルイラの空間穴から澄ました顔でルリアが出てくる。
「初めまして娘さん、私はルリア。ちゃんとした名前はあるけど今は急いでいるので。渡すものがあってね」
ルリアはローブの下にある小さなポケットから何かを取り出し、それを投げる。
「わっ……これは……父の……」
ミドリの宝石が埋め込まれたブローチ。ただ、宝石の澄んだ緑は半分以上が謎の赤色で隠れてしまっている。ルリアの表情と宝石の状態で全てが分かってしまう。
「……和解は……」
ルリアは目を瞑って首を振る。この人は危なっかしさはあるけども無差別に人を殺すようなほど危ない人ではない。そしてこの国の国王は反亜人種派。つまり―――。
「……わかりました。この国の国王は……お眠りになられたのですね」
そう呟くと、その少女はベッドから体を起こし、窓を開けて近くにあった紐を持つ。
その紐を引っ張った途端、部屋の中も外も低い金属音が鳴り響いた。
「……あっ、あれ……」
窓の外にあったのは、銀色の月明かりに照らされて鈍い金色を放つ、確かに入り口から遥か上に見えた鐘だった。
「下で戦っていた兵士たちも投降し始めたね。じゃあ帰ろうか」
「……えっと、あの・・・ルリアさん……」
部屋から出ようとして足を進めるルリアが立ち止まる。
「……どうした新人君、私の行動に何か不満でも?」
「いや、これからのこの国どうするんですか」
数秒部屋の空気が凍りついた。誰もが言葉を発せない状況に近いかもしれない。
「…………え?」
「いや、話が通じなかったから王様を殺したのは良いんですけれど……政策切り替わってないのに王様いなかったらさすがに国滅びますよ?誰が後続の王になるんですか?誰か1人でもなったらギルド離れざるを得ませんよ?」
さっきからずっと思っていた疑問をぶつける。『この後はどうするつもりなのか』。トップを挿げ替えたのは良いのだが、今までと対等かそれ以上の誠士式が出来る人物がいなければむしろ改悪だ。
「…………全然考えてなかった……」
「えーっと……僭越ながら言わせて頂きます。アホなんですか!?」
革命運動をしておきながらなぜその後を考えない。その場を変える事ばかりでその後を考えないのなら懐かしき母国の某野党レベルに責任足らずだ。
「和解なら国内の状況変えずに合法化できるって思ってたのにアンタは~~~~!!!」
「違うんだよ!向こうが話を聞かなかったのが悪いんだよ!だってこっち見るなりレイピア持って襲ってきたらうっかり反射で首刎ねちゃうでしょ!?」
それはない、と流しておいて頭を抱えて悩む。まさかこの人がここまで後先考えないタイプだったとは。
「なんで後先考えずに行動するかなぁ……」
「ルリアさん、さすがに今回のは頭悪いと思います」
「やめて!ルイラにすらそんな表情向けられるとかみんなにどう説明したらいいの!?」
「知りませんよ!殺ったのはルリアさんですし!」
「えっと、あのー……それでしたら……」
襲撃前には暗闇で染まっていた街はどうやら騒ぎ過ぎたせいで住民たちを少しばかり起こしてしまったらしい、ぼちぼちと明かりがついている。
「あれ、城の外静かになってますね」
「さっき私がテレパスで先に帰ってていいよって連絡したからね。やること終わってるんだからずっと待たせておく意味も無いし」
「でもあれで市民の人たちは納得してくれますかね?」
「しょうがないでしょ、王様はいなくなっちゃったし」
「誰が消したんでしょうね。俺すっごい気になるんですけど」
本当に誰のせいだろうな、と思いながら少々嫌味を付け加えた目線を飛ばす。誰に飛ばすのかはもうお察し。
「いやー誰だろうなー?」
「まあ後は王女様に任せましょうよ。これからの王政とか」
たった十数分の出来事、その間で国の中心部が変わった。王はいなくなってしまったが「死因不明」として失踪扱いとなった。死体を片づけた訳ではないので城の方で隠蔽してくれたのだろう。
そして統治権は王女「アルマ・デラ・アズドラーク」へと移行する。
「結局あの人に王様やらせることになっちゃいましたけど……」
「国民は納得してくれるでしょ、というかするしかないでしょ。王権を譲る人は既にいないんだから」
この時は知らなかったが、翌日の朝に新聞で少しだけ憲法改正が行われたらしい。
なんでも、18条第2項「亜人種は如何なることがあろうとも、人として扱ってはならない」の項目が消されていたのだとか。
「初めての電撃作戦は成功だね!さて呑もうか!」
「えっ」
現在は3週目の夜6時。日が昇るまで5~6時間はある。
時間計算をしてなんとなく空を見上げ、そして溜め息。
「……今夜は寝れるのかな……」




