#100 登場
目に映るは一面の白銀、大理石のような輝きを見せる柱が朝日を受けてさらに眩しく光を放つ。この間ここに来た時よりも日がまだ上っていないせいか、差し込む光の量も少し多く感じる。
「ひひへほ、ほほっへはえはへいへひへふんへふは?」
「手入れ?ああ、掃除のこと?この城に使っている石材は火の光を浴びると微量な魔力を帯びるんだって。毎日自動で綺麗になるらしいよ」
ものを食べながら喋ると意味が通じるか若干不安だったが見事なまでに一言一句レベルで通じてた。さてはこの人も他人にしたりされたりして慣れているな、と思いながらルリアさんから貰ったロールパンを口に含む。
「ほえー……んっ、あの、この飲み物なんですか」
それは先ほどロールパンと同時に渡された、片手に持てるサイズのボトルに入った水色の液体。ドリンクバーに置いてあるようなストローまで刺さっている。
「それはサプライジュースってやつでね、野菜とか果物とかを濃縮して混ぜて飲みやすくしたものに魔力を含んで育てた香草を入れて作られた栄養補給ドリンク。結構高いんだよ」
「あの、はい……野菜と果実と香草なんですよね?じゃあなんで透明な水色……?」
「……着色料じゃない?」
「うわぁ」
とても納得できて、それでいて一番聞きたくない回答が。青色の着色料なんて食欲を削ぐアイテムを飲み物に普通使うだろうか、いや口に含む物の時点で使わないと思う。
「普通の野菜ジュースじゃダメだったのか……?」
「何かと合わせてより良いものを作ろうとする人たちがいるんだよ。いつの時代もね」
何事においてもすべては足し算から始まる。結果を調べて新たなものを足したり、あるいは引いたりすることもある。その結果がどんなものを生み出そうとも、探求心と知識欲が生物をそうさせるのだ。
でもこれがちゃんと飲めることが証明されているから王城なんかにあるんだな、と技術に感心しながら見上げるほどの螺旋階段を上る。相変わらず長くてうんざりするのだが、この世界にエレベーターを所望するのはいささか傲慢が過ぎるだろう。
「……ところで、今日って会議なんですよね?」
「そうだよ?財政状況報告と管理、居住区域や農耕地域の拡大政策の計画、その他もろもろ。見に来る人のほとんどは後半の『居椅取り』目当てだろうけどね」
「それですよ、多分それ。レイラに聞きましたけどそれって直接戦うやつですよね!?なんで俺がそんなのに出なきゃならないんですか!」
「位の高さは地位の高さでもあるから上に行きたい奴が案外いるんだよねー……まあ大丈夫、死にそうになったら私が止めるから!私が審判だし」
これは素直に喜んでいいのかどうか。少なくとも命に保証がありそうなのは救いとも言える。けども、それ以外に問題がありすぎる。
「まあ、ルール説明みたいなのが始まる前にあるから詳しい解説はその時に。アルバなら大丈夫でしょ」
「ルイラさんって人に頼りすぎって言われたことあります?」
「しょっちゅうアルバに言われるよ?」
「いや、しょっちゅう言われるんだったら改善しましょうよ」
そんな雑談をしていると螺旋階段が終わりを迎える。最上階の横に長い通路、前回ルリアさんの部屋に行った時とは逆方向に歩きだす。
「この城は最上階の屋外テラスに会議スペースみたいなのがあってね、それを使うんだ」
「めちゃくちゃ狙われそうな場所ですね、重要な人たちがそんなとこに集まっていいのか……」
「設計した人も何考えて設計したかわかんないけど……ロマンじゃない?」
「ロマンですか」
そして突き当りの一番奥にある両開きの大きな木のドアをもはや当たり前のごとく足で蹴り飛ばした。この人にはドアを手で開ける習慣がないのか、という疑問すらどうでもよくなってくるくらいにはもう見慣れてしまったようだ。
「お待たせ諸君!統合協議始めるよ!」
ドアの先にあったのは、白く眩しく光る大きな長机に対面するように座らされた人々。いくつか見覚えのある人たちが座っているのと、最奥だがルイラが座っているのにとても安心感を覚える。
「オイ第一席、そのガキは何だ」
全員の顔を一通り眺める最中に目が合った、青色の長い髪をした柄の悪そうな男性がルリアさんに話を振る。
「誰って、彼が第二席だけど」
「えっ、俺二番なんですか!?」
「あれっ、聞いてない?」
「聞いてないも何も誰に聞くんですか!俺がこのイベント知ったの三十分前ですからね!?」
「……オイ、オレンジ頭のガキ」
俺は決して悪くねえ、と必死の講義をルリアさんにするがあまり気にはしていなさそうな様子。どうしてくれようこのリーダー、と思っていた矢先、先ほどの男性に今度は俺が声を掛けられる。
「えっ、俺?はい」
「お前は強いのか弱いのかどっちだ」
「確実に弱い方ですね」
「よし、今すぐ帰って寝ろ」
「よっしゃ、ルリアさん俺帰って寝ていいですか?」
「ダメだよ?」
「じゃあ俺どうすりゃいいんですか……」
世の中は理不尽なことだらけなんだなぁ、とこの身をもって心から実感する。歓迎されていないのは最初から分かっていたようなものだがここまでとは。いや、本心を晒すならば本当に帰って飯食って風呂入って寝たい。体を動かしたくないし頭も使いたくない。これぞ俺の基本生活、パーフェクトマイライフだ。
……どうやら、事はそれほどうまく運ばれてくれないみたいだが。
「まあまあ、席次に不満があるんだったら後で奪えばいいじゃない。それよりも開始ちょっと遅れてるんだから早く始めるよ!」
流されるまま空いている席に押し込まれる。向き合うタイプの長机に一つだけ横からの椅子で全部で十三席。
「災難だったな少年、あの我儘姫に付き合わされるのも疲れるだろう」
「あ、アルバさん。お久しぶりです…………なんかちょっとやつれてません?」
「ただの睡眠不足だ、気にしないでくれ」
「いや原因はっきりしちゃってるじゃないですか……あ、アルバさんって……」
「席次か?第三席だが」
なるほど、と頷いた後にもう一度言葉を口にしながら首をかしげる。第三席、この人が?いや、それよりもなんで俺の方が上なんだ?
「功績順ならば妥当だな。軍隊式よりも主将撃破の方が成果としての質は高いだろう」
「……複雑だなあ……」
お互いに苦い顔をするのを気にせず、ルリアが机の近くにあった四角い箱の上部にある丸いスイッチを入れると、謎の効果音とともに下の方で歓声が沸き上がる。その箱を持って声高々に叫ぶ。
『さぁて国民諸君、己の運命を委ねる時が来た!自らの意見を、集団の願いを、論理と武力で望みを叶えるリアルファイト系会議、国内全統合位席争奪協議会統合協議、ここに開幕ッ!!!!!』
【いまさら解説:ヒサメ②】
なんで主人公を先にしてなかったんだ。Ver 1から一気に戦闘スタイルが変わったキャラ。
いきなり腕がすごいことになったけど初期設定の攻撃手段としてかなり昔から考えていたものです。
あと、内なる人格みたいな感じでヴリトラの話が出ました。割と重要なのになぜに今更。
彼は黒龍の一匹、プライドは高いけど神にあっさり負けて角だけになったために自信を無くしてました。ヒサメの話に割と聞く耳を持っているのはそういう理由です。
9月は祝日が多くていいなぁ~~~~~~~って、なりません?




