第一話 濡れた石畳
明くる日の午後。
ルシャは依頼の予定表を確認していた。
ルシャ「ええっと」
今日の日付けの横に書いてある内容を読んだ。
『午後二時半、ターリス家のオーブンの手入れ』
ルシャは作業に必要な道具一式を布袋に入れると、それを持って店の外に出る。
店の前には石畳が敷かれていた。
その道には冷たい風がたまに吹き抜けていく。
ドアの隣に立て掛けてある、自転車の後ろ側の荷台に茶色いロープで、道具の入った布袋を括り付ける。
遠くにある時計塔の鐘の音が小さく鳴った。
午後二時になった。
ルシャは店の鍵を掛けると、自転車に跨り、そのまま石畳の道をゆっくり走り出した。
自転車を漕いでいると、最初に目につくのは近所のパン屋だ。
此処からルシャの店まで、パンのいい匂いが漂ってくる。
しょっちゅう買いに行くので、店主の若い男とも気の知れた仲だった。
ルシャはこの店のバゲットが好きだった。
今は仕事中なので帰りに寄ることにした。
ある程度の距離を走ると、幾らか人通りが多い所もあった。
街中を突っ切り街の端から端まで自転車を漕ぐ。
目指す方向の端には、物凄く広い公園の入り口がある。
だが目的地はその公園より少し手前の大きめの家だった。
そして少し早めにその場所に着いた。
ルシャは自転車をターリス家の塀に立て掛けて、布袋を持って玄関のドアをノックした。
ルシャ「ごめんください。何でも屋のルシャです!」
すると中から声がして、玄関のドアが開いた。
奥さん「ああ、待ってたわ、来てくれたのね。さ、入って」
ルシャ「失礼します」
そのまま台所へ案内される。
そこには立派なオーブンが備え付けられていた。
奥さん「これなの、最近火の調子がおかしくて…」
ルシャ「ちょっと見てみますね」
ルシャはオーブンを開けて中を見た。
中を見回していたその時、濡れた石畳の光景が目に映った。




