第九話 時計守のおじさん
声「今降りて行くから待ってろ!」
真っ暗な時計塔の上の方で声が響く。
ルシャはその声の人物が現れるのを待った。
暫くすると真っ暗な時計塔の内側の壁伝いにある螺旋階段を、ランプを持った人物が急いで降りてくる。
そして十分程したらランプを持った男性が現れた。
男性「何か用かね?」
ルシャ「すみません、この時計塔の事を聞きたくて来たんです。管理人さんですよね?」
男性は嬉しそうに笑いながら教えてくれた。
男性「いや、ごめん。管理人とは言わないんだ、この仕事は時計守と言うんだよ。俺は此処の時計守をしているローギフという初老の小父さんだよ。それでどんな事を聞きたいんだい?」
ルシャ「実は私の父も此処で時計守の仕事をしていたらしいんですけど、以前時計塔から落ちて亡くなったと聞いたので、それで何かご存知なんじゃないかと思って…」
ローギフ「ああ、アンタが先代の娘さんか。そうかアンタが…。いやね、俺が先代の代わりに此処に来た時は、アンタの事ばかり近所の連中に聞かされてたんだよ」
ルシャ「私の話?」
ローギフは手に持っているランプで逆光のルシャの顔を照らして見た。
ローギフ「うん。先代が事故で死んだ時、アンタは警察と此処に来て気を失って倒れたらしいね。それからアンタは家の中に引きこもって泣き続ける毎日だったらしいじゃないか」
ルシャ「じゃあ私はどうやって立ち直ったの?」
ローギフはボサボサの頭を片手で掻きながら言う。
ローギフ「それはアンタの傍に居た男が助けたらしいが…」
ルシャ「男?その男の人って誰なんですか?」
ローギフ「それが、俺の知ってる事はそれくらいだよ。昔からこの街に居た訳じゃないから」
ルシャ「じゃあ貴方の知っている事はそれで全部?」
他にも知っている事があるのではと、ルシャはローギフの目を見つめる。
ローギフ「そうだな、いつも一人でこの中の仕事してるからあんまり人と話さないしな」
ルシャ「父の話は何か知りませんか?」
ローギフ「先代は真面目だったとしか聞いてないな」
ルシャ「そうですか。分かりました、お時間取らせてしまい、すみませんでした」
ローギフ「ああ、いいよ。また何かあったら聞きに来な。何でも教えてやるから」
ルシャ「ありがとうございます、失礼します」
ルシャは入り口のドアを閉めて自転車に跨り、自分の店へと向かった。




