25.(儲け話)
「ヨウ、隣お邪魔するアルよ…」
そうしているうちに、ふとセイヤの隣に黒い丸眼鏡を掛けた、小柄の白髪交じりの男が手を軽く上げながら
腰掛けてきた。チン金融の社長、チン・マオである。
「俺に何の用だ? 借金なら利息とともに耳を揃えてとっくに完済したはずだが。」
俺は警戒しつつ、横目で相手を見遣る。
「いやいや、今回はそんな話じゃないアルよ。良い話をアナタを見込んで持ってきてアゲタので
話だけ聞いてみて欲しいアル。オイ、このオニイサンにキープしていた20年物のワインのボトルを
開けて欲しいアル。」
そうチンはボーイに声を掛けると、カウンター後ろの戸棚から年代物のワインが運ばれ、セイヤのグラスへとなみなみ注がれた。
「それで話というのはネ、今回ワタシ主幹事の一人としてとあるバイオ系の魔獣研究所のIPO(新規公開株式)を
手掛けることになったアル。モンスターを培養して魔石を採取するという事業内容の、
トテモ将来有望で値打ちのある企業ヨ。
あのカイザー証券相手にアレホド活躍したアナタならではのお話アル。どうアルかな?
新規公開株を1000株ほど引き受けて欲しいアルよ。勿論オカネ足りなかったらワタシ融資するよ。
2回目ご利用特典で、破格の利息は一日4パーセントネ。」
そうニヤリと満面の笑みを見せて、チンはセイヤにひっそりと語り掛けた。
…コイツ、俺とカイザー証券のロイドとのあの話をどこから仕入れたんだ。
相変わらず得体のしれないオッサンだと、セイヤは訝しがる。
しかし、もし本当なら悪い話ではない。事業内容的にも将来性のありそうな内容だ。精査する必要はあるが…。
もし何らかの企みがあったとしても、それを逆に利用して一枚噛めば、大儲けできるかもしれない。
カネの匂いはプンプンする話だ。逃す手もない…。
そう思慮を巡らせたセイヤは、グラスへと注がれたワインを一挙にゴクゴクと飲み干すと
「その話、詳しく聞かせ貰おうじゃないか…!」
隣のチン・マオへと力を込めて、ニヤリと笑いながら返答した…。




