23.(卵パーティー)
…「ホットケーキは素を混ぜ過ぎだ!火加減も強過ぎだ。
弱火で表裏3分くらいで良いんだよ。卵焼きももはやスクランブルエッグのようにグチャグチャじゃねえか。」
ミリシャに先にホットケーキと卵焼きを持ち帰ったグリーンドラゴンの卵の黄身を使って作ってもらったが、
ホットケーキは柔らかさが全くなく固くなり、卵焼きは焦げ付いてグチャグチャだった。
本当にコイツは戦闘以外のことはからっきし駄目だな、とセイヤは呆れ果てた表情をする。
「いやいや、すまない…。普段は市販の弁当だったり外食だったりで済ますことが多くあまり料理はしないものでな。」
ミリシャは気恥ずかしそうに、そう言訳した。
「もう良い。あとは俺が作るからお前は皿を運んだり、材料を持ってきて揃えてくれ。
よく見て作れるようになっとけ。」
そう零すと、セイヤは手早く調理し、ホットケーキや卵焼きを完成させる。
ホットケーキはふわふわで、卵焼きはしっかりと巻き込まれており、形も良い。
「いや、お前料理が上手いものだな。感心した。」
その出来の良さに、ミリシャは目を見張る。
「外食や市販の既製品は高くつくからな。食費を自炊で浮かすのが
生活費のコスト削減に最も効果が大きく、且つパフォーマンスが良い。
そのために、自炊のスキルはそれなりに上げてある。
全く、普通は男女逆じゃねえか。」
得意気にセイヤは答えながら、ミリシャにテーブルまで料理の皿を持っていくよう指示する。
「じゃあ取り敢えず今回の仕事が成功したことを祝って、乾杯だ!
酒じゃなくて、ミルクで、というのが何とも締まらねえが。」
二人はテーブルに移動して、椅子に座る。
ミリシャは下戸でお酒が飲めなかったため、卵料理に合わせてミルクをコップに注いでいた。
「ああ、乾杯だ…!しかし水臭いな。グリーンドラゴンの卵を空売りしていたんじゃなくて、
カイザー証券の株を空売りしていたとは。一緒に仕事をする仲間の私には言ってくれても良かったじゃないか。」
コツンとミルクの入ったコップを当てて乾杯すると、ミリシャはそう返答した。
「敵を欺くにはまず味方から、って言うだろう。お前がそのことを知ったら、その雰囲気が漏れて
あいつらに感づかれる可能性もあった。用心深い奴らだからな。
それに概要を説明しても、お前じゃ理解できんだろう。」
「はは、確かにな…実は未だによくどういういきさつか完全に理解できていないんだ。」
「だろう? ああ、そういえば忘れないうちに渡しておく。今回のお前の取り分と俸給の肩代わりと卵の警備費用とグリーンドラゴン討伐成功報酬だ。」
セイヤはテーブルの後ろに置いてあった袋を持ってくる。
ジャラジャラと貨幣の摺り合わさる音が鳴る。
「ああ、ありがとう。確かに受け取った。
こんなに、かたじけないな…。」
ミリシャは袋を受け取ると、中身をそっと見て驚いた表情でそう言った。
概算でざっと160万はあろうという金貨と銀貨の総量だった。
「いや、ビジネスの正当な取り分だ。今後も仕事を一緒にすることもあるかもしれない。
ビジネスには信頼関係が大事だからな。」
(なんせ、今回は800万近くもの利益を得ている。その1割と諸費用成功報酬位は惜しくもなんともねえよ。)
「これで、大分借金もほぼ完済できそうだ。生活にゆとりが出るな。」
ミリシャはほくほく顔で嬉しそうにそう呟く。
二人はようやく料理にスプーンを運び口に入れる。
「おお、やはり俺が作ったということもあるが、絶品だな。
普通の卵よりもコクがあって味が濃厚だ。」
セイヤは何度も頷いて、舌鼓を打った。
「本当だな。これほど美味い卵料理はかつて食べたこともない。
栄養価も高そうで、滋養になりそうだ。」
ミリシャも美味しそうに料理を頬張りながら、そう零した。
「今回の件で、投資の奥深さを知ったよ。
そういえば公国が新Lisa(Land Principarity Individual savings account)の制度を始めるらしい。
私も余剰資金を少し当てて始めようと思っているんだがどうかな?」
「止めとけ。人には適材適所がある。お前には投資は向いてねえよ。
また仕事で俺の為に剣を振るったりしているのが向いているし、
何より稼げるだろうよ。」
「ハハ、それもそうだな… そう言えば、お前はこれからどうするんだ?
騎士団の経理官に私から推薦をしても良いが。」
「俺は今回得た儲けを元手に、また新しい儲けの場を探す。暫くは働かなくて済む軍資金も得られたしな。
そして倍々ゲームで億まで増やして、後は公国債券の利息や企業の株主配当で一生働かなくて済む状態を目指す。
労働なんてご免だ!」
「そうか、まあ頑張ってくれ。お前ならきっと達成できる気がするよ。」
そうミリシャは苦笑して返した。




