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異世界トレード見聞録  作者: kanon
第一章 -見聞録その1-
21/26

21.(真相)

…一週間後…

「おかしい、もうあれから1週間も経つというのにグリーンドラゴンの卵の存在が

 知らしめられている気配は一向に無い。一体どうしたことだというのだ。」


ロイドは執務室で、茶色の顎髭を撫でながら落ち着きなく室内を歩き回った。



ロイドは自分の目で直接改めて確かめようと思い付き、部下数人を引き連れて

セルヌの町外れの森へと向かう。


部下に確認をしながら、奥へと進み卵があった筈の木の茂みへと近付いていく。


そうすると、そこには木にもたれかかって両腕を組んだセイヤの姿があった。



「やあ、久し振りだな。そろそろ来る頃だろうと思ってたぜ。」

セイヤは不敵な笑顔でロイドに向かい直ると、そう声を掛けた。




「な、、キサマそんなところに居たのか。

 

しかし残念だったな。お前が卵をどこに隠そうが、グリーンドラゴンの株価が高値の間に

 殆どの社の持ち株は売り払わせてもらったよ。何を企んでるのかは知らんが、もう

 卵の存在を公にされようが関係無い。」


「ああ、知っている。今朝の公国経済新聞で、魔石の株主異動報告書の記事を

 見させてもらった。大株主のカイザー証券がグリーンドラゴンの魔石を大量に市場に売却している

 報告書をな。」




「俺が本当にグリーンドラゴンの魔石を空売りしているとでも思ったか?


 随分見くびられたようだな! 希少性の高いグリーンドラゴンの魔石の空売りは

 証拠金や貸し株料も高い。勿論買い戻せなくなるリスクもべらぼうだ。一歩間違えれば破産だ。


 「買いは家まで、売りは命まで。」って格言もある。

 同じ空売りするならよりリスクの低い方だ。つまり…お前の会社の株の空売りだ!


 大企業で発行株数も流通量も多いカイザー証券のな…」

セイヤは上体を木から起こして、ロイドの方に向き直るとそう勝ち誇ったように述べた。



「な、なに?!・・・どういうことだ。何故我が社の株を。」


ロイドは咄嗟のことに理解できないといった狼狽した表情でセイヤに問い掛ける。



「鈍い奴だな。まだ分からないのか。理由も無いのに大口保有しているグリーンドラゴンの魔石を

 短期に大量に売り捌くということは、市場からは資金繰りに切羽詰まった状態だと見られる。

 

つまり経営難を危ぶまれて、アンタの会社の株価は相当下落するだろうぜ。」




「ば、馬鹿な…。理由はちゃんとあるだろう。

グリーンドラゴンの卵が大量に存在しており、それが市場に流れる恐れがあった。

 

そうなると暴落する可能性があるから、含み損を未然に防ぐためにその前に保有している大量の魔石を処分した。


 それを市場に説明すればいい。」


「ははっ、グリーンドラゴンの例のこの木の茂みにあった大量の卵は俺が

 岩を使って全て割って、殻ごとすべて近くの川に流させてもらった。


 何も証拠は残っていない。グリーンドラゴンの卵が大量にあった、なんて話はアンタの妄想だと言われたら


 それまでだ。」



「ぐ、ぐッ… しかし可笑しいぞ。


 専門の調査会社に依頼し、お前の行動は逐一監視していた。


 お前、本気でグリーンドラゴンの魔石の高騰に一喜一憂したり、右往左往したり、チン金融でカネを借りたり


 空売りの現物差し入れの為に、焦ってグリーンドラゴンを討伐しに実際に出向いたりしていたじゃないか。」




「敵を欺くにはまず味方からだと言うだろう。


 俺ほどになると自分の心すら思い込みとアファーメーションで欺くことが出来る。


本気で思い込むようにトレーニングしたからな。付けられていたことにはとっくに最初から気付いていた。


 だから逆用したのさ。本気で俺がグリーンドラゴンの魔石を空売りしているよう思わしめる為にな!!


 俺の迫真の演技にまんまと引っ掛かってくれて嬉しい限りだ。俺は名俳優にだってなれるだろう。



 チンから借りた500万は、差し入れの為じゃなくカイザー証券の株を更に空売りするための追加資金さ!


 あの時はグリーンドラゴンの魔石も最高値で決算時の含み益期待でお前んのとこの株価も随分上がっていたからな。





 グリーンドラゴンの魔石は現物で差し入れしたんじゃなく、そのまま売り払った。


 公国の法令で500万以上の値のモンスターの魔石は乱獲防止や生態系保護の為、

 事務手数料や環境保護税だのの名目で9割近く売値から差し引かれちまう。だから


 100万近くにしか手元には残らなかったが、チン金融から借りたカネの利息や貸し株料支払いに有効活用

 させてもらった。


後は卵を処分した後、すぐさまお前らに気取られないよう隣町のセルジュに向かい、町外れの

 ホテルにずっと泊まって潜伏していたという訳だ…」



セイヤはそう滔滔と、長々と誇らしげに胸を張り腕を組んで語った。


ロイドは呆然としたまま聞き終わると、がくっとうなだれたように手を地面について

悔しそうな表情を浮かべる。


「クソッ…この屈辱は絶対に忘れんぞ。いつか2倍、3倍にして返してやる。

 覚えていろ…」


恨めしそうにそう低く重い声で、言い放った。




「楽しみにしているぜ…。その時は再び儲けのネタにして、資金の大いなる足しにしてやるよ。」


セイヤはそう笑いながら言いつつ、その場をゆっくりと後にして去っていった。





…果たしてその後公国経済新聞にて、グリーンドラゴンの魔石大量売却による

カイザー証券の資金繰り不安の記事が報じられていた。


単価1500前後あった株価はダダ下がりし続け、1200前後まで下がっていった。


セイヤは証拠金約700万を差し入れた状態で、27000株分を平均単価1500で空売りしていた。


売り建て金額合計は4050万、レバレッジは約6倍である。

セイヤは1200で買い戻しを行い、(1500―1200=300)×27000=約800万の利益を確定させた。






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