ゆうがたフレンズ
「これはなに?」
「ランス、あなたに、一緒にいられる友達ができたら、これをあげるわ」
それは、自分にはずっと縁がないという意味だと、少年時代のランスは思った。
***
「俺は、確実にお前らの気がふれたと思った」
村の奥、村長宅前でなにか“やらかし”てきたであろうセスとシャムを待っていると、村の通りをケラケラ笑いながら、そして息が上がりながらもひゃひゃひゃひゃ、と笑いながら走ってくる2人を出迎える羽目になったランスの感想だった。
慌てて荷物をサルベージして2人に手渡し、ランスもそのハイテンションランナーに巻き込まれながらそうそう追いつけない距離まで逃げた後、用心のため山道を外れて野営をすることにした。
流石に暴れすぎてくたびれたシャムは、
「たーのしかったー……」
などと余韻に浸りつつ、毛布を抱いてゴロゴロしている。ゴロゴロする前に、長い金髪だけはきっちり編みなおしていた。長い方が魔力の溜まりがいいのだそうだ、が、邪魔なので普段から下す気はないらしい。
あっちの方が可愛かったのにな、とセスは残念に思った。まあ、可愛いなんて態度ではなかったが。
「やっぱり、お前らは厄介勢だな」
「今更何を」
「絶対、避けて生きようと思う種類の生き物だよ」
あきらめたように、薄く苦笑いをしながらランスは続ける。
「と、あの城にいる誰かは思うだろうなあ」
「?」
「わざわざ選んで城に呼ぶような連中じゃないってことだ。勿論、俺も含めて。“えらいえらいおうさま”や“りっぱなひとたち”のお眼鏡にかなうような“りっぱなおとな”か? 俺たちが。城にいるのがエルフだか何だかわからないが、集める人材として目論見は外れているような気がする」
「……」
「だからお前たち2人は、ずっとそのまま厄介でいろよ。俺はまあ……努力はする」
「無理はしなくていいわよう」
ゴロゴロしながらシャムが眠そうに言う。
「ちょっと真面目なのがいないと、本当にただの無法者になっちゃうじゃないの、あたしたち」
「それなんだけどな」
じゃらり、とランスが重そうに膨らんだ革袋を焚火の前に置いた。あの家の売上金らしい。
「俺の家にあったんだ、俺がもらってもいいだろう?」
「あー、こいつも無法者の仲間入りかあ」
小さく口角を上げたランスに、にっかりと笑ってセスが答えた。
「あとセス、賭けはお前の負けだ。街に着いたら何か奢れよ」
「賭けって」
「あんなもの見たら笑わずにいられるか。面影の一つも残ってなかったぞ」
そういえば、意外な笑い上戸だったな、ランスは。セスは最初の宿での一夜を思い出していた。
「あんな有様だったから、もう何もねえんじゃないかって思ってた。プレートはあったのか?」
「多分」
懐の中から小箱を取り出し、少し眺めた後で開けてみる。中身は、想像した通りのものだった。
「よく見つけたな。家の中、全然変わってたろ」
「ああ」
これを託した母親のことを思い出す。冒険者のパーティでは大層な実力の魔法使いであったと聞いた。時々不思議な、予言じみたことを口にしたが、説明を求めてもはぐらかすばかりだった。本人にも、よくわかっていなかったのかもしれない。
「3つ、揃っちゃったなあ……あとはあのダークエルフが持ってるっぽい1つ、か。どうやって探すかね」
「探さなくても向こうから来るんじゃない?」
「それはそれでイヤだなあ。先手を打ちたいところだけど。……山を下りて先にボルトーノで待ち構える、かなあ。途中で襲われない限りは」
「ゴブリンも減っちゃっただろうし、他にまともな仲間がいなきゃ、街ではゴブリン使えないしね。魔法が効かないのも見てただろうし」
「逆にこっちのも効かないんじゃないか?」
「その時のためにアタシがいるのよー」
魔法の効かない女が、ケラケラ笑いながらブロードソードをブン回して襲ってくる。悪夢のような光景が頭に浮かんだ。
「あ、俺、悪い想像した」
「何」
「あの村さ、今回の件が語り継がれるうちに、話がゆがんで変なことになるんじゃねえかなあ……」
***
1年に1回、金髪の長いカツラを付けた村人が、人形を背負い、モップを片手に
「悪い子はいないか?」
「嘘つきはいないか?」
と、子供を追い回す祭りが興り、それなりに観光客を集めてしまうようになるのは、もっと、ずっと先のことである。
なまはげ発祥の地。




