表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
27/33

なんですかこれは

「こ・れ・は……」


 一足先に様子見で先行しているセス。聞いていたランスの“ご実家”は、村の入り口からは離れたところにあった。というか、村の中、ではなく半分森に埋もれた場所だ。非常にわかりやすい村八分な位置にあるわけだが、その家は前説の様相とはかなり変わっていた。


「落書きもあったし、放火されかかったこともあるから焦げた跡もある。建ってるのがやっと、みたいな惨状だった」


 いやいやいやいや。


 レンガは組み直されて屋根は赤く、壁も新しく白く塗られ、絵本に出てくる妖精の家のような、ポエトリーでメルヒェンな家がそこにあった。白く塗られた立て看板には、青いペンキで“エルフの奇跡の家”とか書いてある。森に埋もれかけた外見にはマッチしているのだろうが、あまりの現実感のなさにセスは頭がクラクラしてきた。旅装束をした数人が、家の前に並んでいる。

 

 妙な空気に(あた)りそうだったので一旦スルーして、村の中に入る。幸い、身元を厳しくとがめられることもなく、道中に採取してきた薬草や樹木の皮、木の実などを見せ、採取を依頼されてきた冒険者を装う。


 村は大きな規模ではないが、目抜き通りらしい大きめの道の左右には、新しい店が目につく。どれも意匠にエルフの姿をあしらっており、セスはまた頭痛がしてきた。

 比較的昔から営んでいそうな店に入り、とにかくエルフのキャラ感がしない服を調達する。例の“神の(しもべ)”のせいで着替えがほとんどやられてしまったのだ。店主に金を払いながら、事情を知らない旅人風に話しかけてみる。



「ああ、“エルフの奇跡の家”な。あそこにはエルフの女が住んでいて、魔法で色々なことを解決してくれるんだ。おかげでこんな小さな村にも訪れる人が増えて、エルフ様様だよ!」


「ずいぶん新しい家だったけど、エルフが最近住み始めたのかい」

「あ、いや、ずっとここにいたよ。さ、最近人のために奇跡を広めたいって言うんで、みんなで家を建て直したんだ、なあ!」

 店主は汗をかきながら、おかみらしい女に同意を求める。

「そうだね」

 若干、不機嫌な感じでおかみは頷く。


 わかりやすい。

 詐欺の教本1ページ目に書いてあるくらいにわかりやすい。


 そもそもが数年前までハーフエルフを迫害してきた村だ。その男が住んでいた家を魔改造して、エルフを推して商売してるってどんな神経だ?


「奇跡って、どんなことができるのかな。俺もあやかってみたいな」

「今は幸運のお守りに力を与えてくださってるよ」

「今は?」

「昔は怪我や病気を治したりしてたけどね。今はそんな小さなことはなさらないんだ」


 ここにも引っかかりを感じた。

 言葉の前半と後半の主語が違くねえか?

 村人の怪我や病気を治していたのは、他のヤツじゃねえか?



***



「どうだったの?」

「ランスが今の実家見たら、大笑いするか吐くかどっちかだ。俺は吐く方に賭ける。ほら、有難い食い(モン)買ってきてやったぜ」


 村で買ってきたパンには、耳のとがった子供の絵が焼き付けられていた。


「村で売ってる持ち帰りの食べ物、大体そんなん」

「うっわあ、食欲そそるわあ……」


 今まで見た一番イヤそうな顔で、絵が見えないように裏返して食べ始めるシャム。ランスは頭を抱えたまま地面まで突っ伏しそうだ。

 多分、聞いた後ではランスがメシ食えなくなる。ので、ボソボソと陰気に食事を終えた後、セスは村で見たもののことを話して聞かせた。


「昔、村で怪我や病気を治してたエルフ様って、ランスのことだろ」

「まあ……俺だったこともあるけど、大抵はお袋だ。エルフじゃないけどな」

「魔法使いだったの? あ、そうか、その杖」

「お袋の杖だった。若いころは冒険者だったけど、足を悪くしてな」

「治せないくらい?」

「失くしたら、さすがにな」


 子供(ランス)ができたから定住したのか、定住してから子供(ランス)ができたのか、ともかく親子でここにそれなりの長期間住んでいたようだ。普段はいないもの以下の扱いをしながら、都合のいいときだけ頼ってくる村人と微妙な距離を置きながら。


「ランスの魔法は、お袋さん直伝か?」

「他に習う人間はいなかったからな」

「思うんだけどさ、お前のお袋さんって相当優秀だったんじゃないか? ランスがちょいちょい使う魔法も種類が多い。普通何かに特化するもんだって聞いてるけど、お前は攻撃も補助も、回復までこなすだろ」

「そういうものじゃないのか?」

「俺は専門じゃないけど、そういうもんじゃないと思う」


 だから村の連中はあの家を使ってるのか、とランスは呟いた。家にも何か魔法が残っているのかもしれない。




「ねえ、ランスはまたこの村に戻ってくる予定はある?」

「今回のことがなければ、もう戻るつもりはなかった」

「お母さんのお墓、村の連中が知ってる場所にある?」

「いや、だいぶ森の深いところで埋めた。俺以外は知らないんじゃないかな」

「じゃあ、後でお墓を荒らされたりする心配もない、かな」



「なら、やっちゃっていいわよねえ?」



 何をする気だ。

 シャムは空色の目を細めて、にんまりと笑っている。



「“エルフの奇跡”を見せてやろうじゃない、ねえ?」

多分まんじゅうとかも売ってます

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ