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ローテンションクラブの反省会

「ちょっとそこ座りなさい。正座!」

「……はい」


 珍しくランスの反省会場となっている焚火周り。


「な・ん・で、黙ってたの!? 巻き込まれただけだと思ってたら、アンタもガッツリ当事者じゃない!」

「思い返せば、匂わせるようなことは時々言ってたなあ……」


 セスは遠い目をして、空笑いをしている。


「…………ろう」

「はいそこ大きな声で」



「俺に覚えのあるようなものが、そんな重要アイテムだなんてそんな事あると思わないだろう!?」



「出たわよ100%ピュアーなネガティブ発言」

「今だってまだ疑ってるよ! 戻って探してみたらただの鉄片かもしれないだろう!」

「もうここまで来たら、その可能性はないって思わねえかなあ……」


 セスとシャムはため息をつく。



「まあ、ランスがこうなっちゃった理由は大体想像がつくけどね……」

「お前も昔語りする?」

「……遠慮しとく。想像通りだから」


 3人でため息をつく。




「まあいいや。理由はともかく、ランスのいた村には寄るつってたんだし、結局そこでは話してくれる予定だったんだろう? 予定に変更はないからな」

「そうね。明日にはアタシがお墓まで連れてけると思うし」

「どうしてそう思えるよ!」

「だって」

「だってじゃねえだろ! まあ無駄足は踏んだけど、大体この辺の地図ができた。あの大穴も含めてな。あの場所の情報、高く売れるような気がするんだけど売りに行くやつがいねえな……」


 口で商売の出来そうな面子がここにはセスしかいない。ただ、冒険者ギルドにもうかつに近づきたくはない。


「あれが城の発着場だとして、そんな情報売れるのか?」

「売れるさ。守ってるやつ(婆さん)がいたんだから、なにがしかの手がかりは残ってるはずだ。もしかしたら穴の周辺にまだ同じようなのが何人かいる可能性はあるけどな」

「うわあ、ヤダヤダ」


 俺がいなくて、シャムとランスだけで行ってたらどうなってたんだろうな。ひたすらあの賛辞だけ聞かされてたんだろうか。とはいえ肝心の城が来てないからな。


「お城が来てたら、あの婆さんは連れてってもらえたのかしら」

「無理だろうなあ。アンデッドだしなあ」

「忠誠心だけ膨れ上がらせて番犬扱いか。気の毒ではあるな、同情はしねえけど」



 さっきから3人ともため息しか出ない。



「エルフのイメージが更に悪くなりそうねえ……」

「別段悪くはないだろ、ハーフの俺と違って」

「遠巻きにされるのは変わらないんじゃないかしら」

「北の、首都がある辺りではそうでもないみたいだぜ。落ち着いたら行ってみれば?」

「今更都会に出るのもねえ。耳切っちゃったらスッキリするかな」

「やめとけ、エルフの耳切は大罪人の証だって言うし」

「普通に生きたいだけなのよ、アタシは」



 テンションの低いまま、野営は続く。ウトウトしながらも誰も積極的に寝ないので、全員ぼんやりとなにか考えたままだった。


 セスは、カタールのことを考えていた。


 あいつの耳は、切ったあとなんかなかったんだよな。日焼けした奴よりだいぶ浅黒いし、顔になんか妙な入墨もあるけど、目も金色で瞳孔細いけど、必要なこともしゃべんねえけど、やりやすい相棒だったんだよなあ。ついてこいって言ったらどこでも仔犬みたいについてきた。あの見た目にそんな比喩は失礼だけどもさ。

 なんで置いて来ちゃったんだろうなあ。



 置いて来させられたの、かなあ。




***



 朝。3人とも寝不足の目をこすりながら、簡単な朝食を摂る。森に自生している木の実をシャムが懐かしがって食べていたので、もう故郷は近いはずだ。散々迷った跡を地図に書き留めていたので、消去法でここだろう、という場所は特定できていた。


「あの辺に見える集落に寄ってみる? 知り合いがいるんじゃねえの」

「寄らない。知り合いがいるから」

「ヤな思い出でもあるのか?」

「向こうがイヤでしょ。何十年も会ってない昔の知り合いがそのままのカッコで帰ってきたら」


 そうだな、とセスは思う。シャムの親はその辺には相当気を遣い、あまり同じ場所で長期にわたって住むことはなかったそうだ。バンダナや布で耳を隠しても、向日葵色の金髪と空色の瞳は、黒や茶色系の髪や目の色の人種が多いこの地方ではどこに行っても目立つ。

 早めに都会に出て行く手もあったかもしれないが、それはそれで親子が引き離されてしまう可能性は高そうだった。王都でのエルフは魔法使いとして重用されるし、魔法使いのギルドが放っておかないだろう。



 シャムの両親の墓は、小高い山の上の、見通しの良い崖の上にあった。

 ここから見える景色の中で、転々としながら家族で戦士稼業をやっていたんだろうな、とセスは思った。


「できるだけ大きな石を置きたかったんだけどね」

「いや、十分でかいと思うけど」


 大人の男2人がかりで転がせるかどうか、といった大きさの岩が2つ、並んでいた。


「もう少し、墓碑みたいな体裁を整えてあげたいのよ。でも、ここまで職人を連れてくるお金はないし、流石に墓石持ってここまで登れないしねえ」

「こんなとこにそんな立派なモン建てたら、それこそ盗掘されるぜ」

「歳とったら墓守して過ごすのもいいかなあと思って」


 それは一体いつになるのか。何百年とか後なんじゃないのか。


 シャムは、2つの岩の間にある地面を小刀で掘っていた。そして――――



「見つけちゃったわ……」



 陶器の入れ物を開け、油紙で丁寧に包まれたプレートを、シャムはつまみ上げた。



***



 見つけた高揚感より、ああ、やっぱり、といった諦観の方が強かった。

 2つのプレートを並べてみる。細かいところまで見ると模様に違いがありそうだが、大きな意匠は同じものである。何より、心が納得してしまっている。これが間違いではないのだと。


「墓荒らしの嫌疑は晴れたわね……」

「そうだな……」


 既に疑っているわけではなかったが、なにか呟かずにはいられなかった。




 それから、2つの墓に途中で摘んできた花を供え、3人は黙祷した。こんなに頑なな脳筋エルフが出来上がるまで、(いつく)しんだ戦士夫婦に心からの哀悼を捧げ、墓を後にすることにした。

 が、シャムの手にはまだ少しの花が残っている。


「先に行ってて」

「別行動したらはぐれる未来しか見えんぞ」

「……もう一つ、供えるところあるから」


 確かに、2つの岩から少し離れた場所に、少しだけ小ぶりな岩が置かれている。


「ご両親の親御さんか誰かか?」



 そこそこの沈黙の後、シャムが諦めたように言った。




「ダンナ」


「「はい?」」

前回と同じ引き。

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