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FAMILIAR SIGHT ~三下シーフ、翔んでみせろ~  作者: のうき
■迷いの森(人災)と、神の僕(しもべ)■
21/33

警告どおり 計画どおり

副題をまた変えてしまいました。もうさすがに変えるつもりはないですすみません。

「セス、傷から光が見える。“印”みたいに見える」



 ほぼ単語しか喋らないカタールが、珍しく2文節以上でしゃべってた。あの傷がついた時だ。




「そうか、これは“印”なんだ……」

「どうしたの?」

「お前も傷を治して来いよ」

「あ、ああ」


 セスは、白い円柱の光をじっと見つめた。



***



「あの隠し部屋って、いったん誰かが通った後に入り口がまた閉じちゃうんですよねえ。あんな思わせぶりな部屋作っといて、中にあるのがアレですよ。余程悪趣味な魔術師が作ったんですね! 微妙に隠れてるのに見つけられちゃう加減が更にムカつきますよねー」


 森の中の道に出て、モレノは陽気にしゃべり続けている。傷も治ったし、相方も一応命は無事だ。地図も作ってやったから、遅くとも明日には感動の再会ができるだろう。


「ところで……よかったんですか? 本当に治さなくて」



 セスの顔を見ながら言う。その顔には、3本の傷がそのまま残っていた。




「この国にね、これと同じ顔の奴がもう1人いるんだわ。もしそいつに会ったとき見分けにくいだろ?」

「そうなんですかー。まあでも僕は客商売ですしね。相方も治してもらうつもりですよ!」




 あんたと相方はもういいんだよ、多分“用済み”だ。




 あの遺跡は、プレートを集めるための“手足”を作ってたんじゃないか、とセスは思う。

 プレートがシャムの手に渡った時、俺もすでに用済みだったのかもしれない。けど、そうはいくか。

 簡単に部外者にされてたまるか。


 問題は“相方”が持ってたプレートだ。思うに、あれはあのダークエルフの手にあると思う。あっちが本命だったのに、近くでもう一つ見つかって焦ったのではないだろうか。用意万端なら、こっちも()られてた可能性が高い。


 もっと、情報が欲しい。




***




「こちら、頼まれてた調査結果と、こっちは、えーと、ついでですけどギルドの連絡です」


 手を揉みながら、明らかに下っ端風情の男が革表紙のファイルを2つ、女に渡す。どちらも数枚の羊皮紙の束が挟み込まれている。

 女はバザーで鑑定をしていた女、ノルトだ。


「苦労したンすよォ、資料の方。次期マスターの頼みでもなきゃ、とてもとてもそんなもの――」

「ありがとう、帰っていいわ」

 恩着せがましい男の言葉をノルトは遮り、ファイルを受け取って背を向けた。


「あのぅ……」

「まだ何か?」


 虫でも見るようなノルトの視線を合わせないように、男が恐る恐る口を開く。


「無駄とは思いますが、一応言われてるんで伝えときますね。そろそろボルトーノに帰ってきてください、って……」

「ええ、帰ることにしたわ」

「そうですよねやっぱ無理っスよね……ってええっ!? マママママジっスかあ? 本当に帰るんっスかあ!?」


 ノルトはギルドの命令を聞かない。帰りたくなければマスターが呼ぼうとも帰らない。が、帰って来た時にはギルドにとって有用な情報や、貴重な遺物を土産にしてくるので誰にも口を出させない。

 どうしても帰らせたければ、“我らが子守番様”を向かわせる必要がある、が、今回奇跡的に帰還命令に従う形になった。


「今すぐじゃないけど。そうね、あと2、3日後かしら」


 そう言い残してドアを閉められた。男はヘナヘナと腰を落としたが、もしかして相当な幸運に恵まれたのではないかと口元が緩んでいた。





 宿の寝室に戻ったノルトだが、すぐに異変に気付いた。ベッドで寝ていたはずのカタールがいない。ベッドに触り、まだ温もりがあるのを確かめる。ほんの数分の間だったし、この部屋には窓がない。

 部屋の四方を見渡し、クローゼットの方に目を止める。ノルトは元々細い目をさらに細めて、じっとその空間を凝視すると、わずかな揺らめきが見えた。

 何かを呟きながら、何もない空間を右手で薙ぎ払う。すると、空間が薄い布のように切り裂かれ、その下から褐色の肌が現れた。


「あのねえ、そんな状態で魔法なんか使ってると死ぬわよ? ――とはいえもう2、3日動けないかと思ってたのに。さすが、って言うべきかしらね?」


 カタールは何も言わず、ただノルトを睨みつけている。



「追いつけないわよ」

 急に話を変えたノルトに、カタールが息を飲んだ。

「もう()()()ら山越えに入っちゃっただろうし、その体じゃ追えないでしょ」


 ノルトの使う魔法はカタールの体に合わないらしく、完治はしていない。もしかしたら、わざと完治させていないのかもしれない。


「距離がありすぎると“印”も見えなくなっちゃうんでしょ?」


 “印”という言葉に反応したのか、カタールが大きく目を開いて、今日初めて口をきいた。


「見えるのか」

「ええ、だいぶ見えてきた」


 顔を寄せてそう囁いたノルトから、慌てて身を離す。ケガに触るわよ、と思ったがふと、珍しくノルトが悪戯っぽい口元でこう言った。


「ああそうだ、あなたも一緒にボルトーノに連れて行くからね」

「いやだ」

「あなたが追ってる男がそこを目指してても?」

「!」


「街道で馬車を飛ばせば、山越えでゴタついてる連中より多分早く着けるわ」

「本当か!? 本当に…!」


 確約はしないけどね、と思いつつ、ノルトはまずギルドからの連絡ファイルに目を通した。中の1枚を手に取り、あら、と呟く。

 ま、最悪ギルドで張り込んでれば会えるんじゃないかしらねえ。生きてれば、の話だけど。



 ファイルの1枚には、セスの似顔絵が描かれていた。

「まだ温かい、遠くへは行っていないはずだ」の間にどれくらい逃げられるか、昔探偵ナイトスクープで見たことがあります。

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