19話 自信持てよ
大学の土地研サークルに誘われてしまったが、旅行は気晴らしになるだろうと思い入ることにした。
梅雨が明け、不気味なほど鮮やかな緑と、銀色の駅舎を振り返った後、照り返しの強い駅前広場に、若い男女のかたまりがあるのが見えた。
僕はこんなところに行ってしまっていいのだろうか。スカイブルーも激しい色だ。
「蓮間徒 悠 です。経済一年です。よろしくお願いします。」
バスに乗り込むと、隣に薄いピンクのスカートと七分丈の服を着た女性が座った。
「狭いからごめんね。」
バスの緑のデジタル時計は12:31で、悠はこの時、「もう1時か。」と思った。
10分後に腕時計を見て気づいたが、31分の次は繰り上がりな気がしてしまうほどに頭がぼやけている。
こんなんじゃだめだな。もう自分に人と関わる価値なんてないんだ。
フィールドワークを終えるともう夕方になっていた。時計は見たくなかった。
バスでまた同じ窓辺の席に座ったが、昼に隣だった女性は賑やかな塊に存在していた。
橙色に にゃにゃく(dyeing)してきたビルヂングより上のスクリーンと、逆光になった薄暗い広告から溢れる自信をただひたすら揺られながら見ていた。
食事の時間まで旅館の一室で一人パンフレットを見つめていたが、どんどん呆け始めていることを神が許さなかったために、ドクターマーチンをはいた男など、一緒に寝泊まりすることになっている男たちが部屋に戻ってきた。
マーチンは少し踏ん張って靴を脱いだ。
皆出身校や、なぜここにいるのかなど話し合っていることから一年であることは分かった。
悠もそういったことをマーチンに尋ねられ、答えた。
会話も熱中していくとそれぞれに口数に差がではじめて、それがわかると悠はフェードアウトした。
トイレに行くと、マーチンが一人でやってきて悠の一つ空けて隣に立った。
「自信持てよ、イケメン。」
そうつぶやくと、きしきしの蛇口をひねり、適当に水を付け掃いハンカチで拭った。そのハンカチが大事そうに見えたから、プレゼントなのかもしれない。
よく考えると、マーチンは3年生の集団にいた人だったことに思い当たった。
手洗いから出ると、時計を見る気になった悠はそのまま夕食の広場に行くことにした。




