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RCC シェパード ディグニティ  作者: セロリア
19/27

運命とは

学生寮。


夜18時。



部屋から聞こえてくる会話。



初咲「ねえ、これ本当にやんの?」



島津「ふふふ・・あっはっはっは!」


初咲「折角新しいドレス買ったのにい」


島津「うふふ、良いんですのよ、これで、ギャップですわ、ギャップ!」


初咲「ギャップう?」


島津「あの殿方を落とすんでしょう?」


初咲「落とすって・・でも・・」


島津「まず自己紹介の場であの殿方に、私はアナタに興味がありますってアピールします」


初咲「この格好で?」


島津「そう!この格好で!」


初咲「でも・・この格好だと・・その・・嫌われちゃうかも・・」


島津「あら?どうして?」


初咲「え?だって・・エロくないじゃん」


島津「ああいう真面目そうなタイプはむしろこういう風な真面目な女性が好きな筈・・ですわ!」


初咲「筈って・・」


島津「とにかく!私達は処女っていう事は向こうも知っていますし、男遊びしていない事だけは保証されていますから、ギャップがありすぎても問題ない・・ですわ多分」


初咲「多分って」


島津「何か不満かしら?」


初咲「・・不満っていうか・・最初っから行かないと・・取られちゃうかなって」


島津「あら?ふふ・・あっはっはっはっは!」


初咲「ええ?何?」


島津「貴女あのクラスの雰囲気見てませんの?あんな男に誰も興味なさげでしたわよ?」


初咲「ええ?そなの?・・・・でも・・」


島津「ふふ・・まだ何か?」


初咲「男の人が他の子に惚れちゃうんじゃ・・」


島津「まあ、まあ、その為のギャップですわ!私が保証します!絶対上手く行きます!」


初咲「・・ホント?」


島津「・・」 頷く。


初咲「・・えへへ・・分かった・・信じるよ島っち」


島津「ふふ・・あっはっはっはっは!だめ~やっぱりその島っちってだめ~あっはっはっはツボにくっく~あっはっはっはっは」


初咲「え~?だめ~?〈しゅ~ん〉」


島津「あ~っはっはっはっはっはやめて~ぶっふ~ひっひ、そのしゅ~んセットやめて~あ~っはっはっはっはっはっは」


初咲「この顔?〈しゅ~ん〉」 顔を近づける。


島津「ホントやめて~ひっひ~あっはっはっはっはっは」






翌朝。


飛行機ファーストクラスに乗り込む一行。



バリ島。


現在、7月。


カラッとした空気。


高級ホテルロビーがざわつく。


美人一行もさる事ながら、その取り巻きが厳重すぎる程の大規模なボディーガード達。


無理もない、今日此処には世界最高峰の男達、その娘達が来ているのだから。


たった6人の娘達を求め、集まった候補達は335人。


まだ小学生の男から、高齢の年寄りまで。


この娘達の機嫌を取る為に、男達は様々な手段、サプライズ、プレゼントを用意し、娘達を待遇する。


大規模なプレゼント、サプライズは禁止。


気持ちを如何に上手く、伝え、落とせるかがポイントになる。


見向きもされない男達にもこの場所に来る、意味はある。


知り合い、友人、紹介、仕事のアイディア交換等、社交的意味も兼ねているのである。


ホテルの会場は2階の大規模ホール。


高層階だと、もしもの時に、逃げ道がない為だ。


初咲達は3階の、個別控え室にいた。



初咲「着替え間に合うかなあ・・」


初先は赤い縁の眼鏡をかけ、長パンツOLの格好だ。


〈コンコン〉


初咲「はい?」


島津「お入りしても?」


初咲「うんいいよ」


島津「ふふ、失礼」〈ガチャ〉


初咲「う、うわああああ・・」



島津は舞妓の格好だ。


豪華な、髪飾り、何重にも重ね着した振袖、白くした肌に、薄い唇にもっと細く赤い口紅、伝統のアイシャドウ。


初咲「き、綺麗・・」


島津「ふふ・・有難う」


初咲「それ・・何かで見た事ある!うわあ・・ホント綺麗~」島津の周りを歩き回る。


島津「でも・・貴方の方が綺麗だと思いますわ、私、洋風のドレスはイマイチなんですの、やっぱり足が長い人ではないと」


初咲「そうなの?」


島津「そろそろ時間ですわ、行きましょう」


初咲「う、うん」


島津「大丈夫ですわ、さ!」 初咲の肩を後ろから掴み、押す。


初咲「ま、まだ心の準備が」


島津「ふふふ・・観念なさいな」


初咲「ううう」〈キイ・・バタン〉」



ステージの上に立たされる娘達。


重そうな幕の向こうではざわざわと男達の話し声が聞こえる。


それぞれ青のドレス、黒と赤が混じったドレス、黄色のドレス、振袖、緑のドレス、OLと並ぶ。


それぞれ足、胸が見えない程度の長い、露出が少ないドレスだ。


司会「さあ!皆さん!女性らの準備が終わったようです!」


皆『ざわざわざわ』


司会「それではお披露目です!どうぞ!」


〈ウイイイイイイイイ〉 幕が上がっていく。



男達『「何だ?」「一人・・」「あれは・・」「初咲さんだ」「おお、そうだ」「初咲さん何であんな」「いいじゃないか」「そうです、格好なんて関係ありませんぞ」「初々しいではないですか」』


初咲「(別の意味で目立ってる~)」〈チラ〉島津を見る。


島津は親指を立てている。


初咲「(~~~~~)」 顔真っ赤にし、拳を握り、目を瞑り、下を向く。


司会「あ~~~ごほん!さ、さあ!皆さん!今各コーナー毎に皆さんのお好みの女性用テーブルにいらっしゃると思いますが、今からこのスクリーンに彼女達が気に入った人達が映し出されます、覚悟は良いですかあ?残念ながら映れなかった人は、社交を楽しんでください、それでは~始め!」


どんどん数字が映っていく。


終わった。


司会「それでは、一旦お開きとなります、ご自由に社交をお楽しみくださいませ、女性に話しかけられない限りは口は聞いてはなりませんので、悪しからず、では、次は選ばれた人達だけ、1時間後に、5階のホールにお集まりください、それでは解散」


初咲のモニターには3人しかいなかった。


1人目は、お気に入りの個人投資家、2人目は、優しそうな年上の医者の男性、3人目は荒々しく、ガタイも良い世界的テニスプレイヤー。


娘達にはそれぞれの番号は見えない。


だから他の娘と被っているかどうかも分からない。


今から1時間、男達は戦争をする。


財力、暴力、情報力をもって、ライバル達を蹴落とすのだ、つまり・・やる気を挫く。


???「オタクの株を5千万株買っても良いですよ?」


???「さあ・・あの金塊は惜しいでしょう?」


???「いくらでも釣り上げますよ?」


???「あの付近に確かアレがありましたよねえ?」


???「オタクが海の上でやってる事を知らないとでも?」


???「あの地下室で何をやってるか知らんとでも?」


???「あんたがやってる株操作で大暴落が起きた事は知ってるんだぞ」


???「アンタ達グループがマフィアとつるんでる事なんざ皆知ってる」


もうあまり・・聞かない事にしよう・・。



初咲達はそれらの会話を聞きながら、良い人物を絞り込む。


先程の第一候補達よりも良い人物を見落とさぬように。


まともな神様みたいな金持ちは存在しない。


それは教育の上でよく周りから聞かされてきているのだ。


世界は正義では動かない、経済で動くのだから。


綺麗事を言っていても、経済戦争に負ければ、それはお終いを意味し、負け犬を意味するのだから。


そして弱い者程、闇に関わる機会がないという事も、娘達は教え込まれている。


強ければ、強い男程、闇に近づくものだからだ。


それを良しとするか、しないのかは娘達次第である。


初咲は一番のお気に入りの個人投資家の元へ歩いていく。


男は初咲に気づかず、料理を食べながら、別の男と話している。



初咲「(ま、・・ま・・松本さん)」 ボソっと言うが聞こえない。周りの音楽、話声に呑まれてしまった。


松本と話していた男が気づき、指を差す。


松本が気づき、驚き、慌てて立ち上がる。


自分が第一候補として選ばれた事はモニターで知ってはいたが、憧れの大企業家と出会い、話に夢中になっていたのだった。


初咲「・・・・」


松本「・・・・」


初咲「・・・・」


松本「?・・・(話しかけてくれないと喋れないんですが?)


初咲「・・・・」


松本「(お~い!?)」



周り『「ぷぷ」「ぶふ」「くっく」「どうしたんでしょう?」「照れてるのでは?」「初々しいですなあ」」「いや全く」「可愛いですな」』


初咲「・・・・」 下を向き、震えている。


初咲「(今までこんな事なかったのに・・私どうしちゃったの?私・・恥ずかしい・・)」 顔を真っ赤にして泣いていた。


松本「・・」そっと近寄り・・〈なでなで〉頭を撫でた。


初咲「え?」 見上げる。


松本「〈ニコ〉」 優しく微笑む。髪が長いから分からなかったが、よく見るとイケメンの部類。


初咲「・・グス・・ふふ・・やだ・・ごめんなさい・・こんな格好で」


松本「え?何で?大丈夫だよ、綺麗だよ?、ほら涙を拭って」 ハンカチ。 


初咲「有難うございます、えへへ」


松本「あ、やっと笑った、へへ」



初咲「えへへ・・」


松本「はは・・どうぞ・・」椅子を引く。


周りの男達は気を効かせ、黙って離れる。


初咲「あ、有難うございます」


松本「じゃあ・・食事しながら話しましょうか?」


初咲「あ、はい」


他の男達は初咲に興味を持ち続けている者は少なくなっていた。


3人しかいなかった事、真っ先に一番お気に入りの元へ向かった行動力、これらを含め、隙がなく、意志が固い女性だと思ったからだった。


しかし、まだ諦めきれない男性達も居た。


松本「へえ、じゃあ憧れの日本に来たのはつい最近なんだ、それにしては日本語上手いね?」


初咲「うん、小さい頃から祖父ちゃんが教えてくれたの」 歳が離れているにも関わらず、タメ語。


松本「日本語は難しいかったでしょ?」


初咲「うん、でも、もう慣れちゃった」


松本「そっか、でもびっくりしたよ、スーツってははは、就活じゃないんだから」


初咲「やっぱり変だよね・・ごめんね?恥かかしちゃって」


松本「ん~ん、逆だよ」


初咲「え?」


松本「何て言うか・・その・・地味な格好でも・・その・・綺麗だよ・・やっぱり」 赤い。


初咲「〈ボボ、カアアアアア〉」 耳まで真っ赤っか。



暫く沈黙。



松本、初咲『・・あの!』 同時で気まずい。



松本、初咲『あ・・』 下を向く。意を決し、



松本、初咲『あの!』 また同時。





松本「・・ぷ」



初咲「あはは」



松本、初咲『あっはっはっはっは』






遠くから島津がにやにや見ている。


男性「聞いてくれてますか?」


島津「勿論ですわ沢木さん」 向き直る。


沢木「はあ・・よっぽどあの娘が気になるんですね・・ふふ・・良い雰囲気で良かったですね〈ニコ〉」


島津「!!・・ええ・・本当に〈ニコ〉」



他の男にも回るのが通例なのだが・・初咲はそんな事はせず、時間いっぱい松本の傍を離れなかった。


他の男達は面白くないが、仕方がなかった、決定権は全て女性側なのだから。


時間が過ぎた後、大人しく2階会場に残り、社交会を楽しむ男達。


2階から去り際に島津が話しかけてきた。


島津「今からはライバルですわよ、迎えには行きません、しっかりなさいね?」


初咲「うん!分かった!負けないもん」


島津「ふふふ、じゃあ」






3階個別控え室。


お色直しタイム。



急いでドレスに着替える。



今度は娘達が選んだ男達が娘達を口説くタイム。



男達は6人誰にでも口説いて良い。


この仕組みにより、優秀な男達の選出が効率的に出来るのだ。



だから、自分が選んだ男性達から誰にも相手にされない可能性も無きにあらず。


そんな事は嫌だと、誰しもが気合を入れ、化粧をする。


全て1人でだ。


化粧の腕も勝負に入っているのだから。



どうやら終わったようだ。


初咲「よし!大丈夫、大丈夫、プロに教えて貰ったんだもん!大丈夫!よし!」


何度も鏡を見て確認している。


そろそろ時間だ。


初咲「じっちゃ、おいちゃん!行ってくるね!」


部屋を出た。




少し迷い、遅れそうになった。


長い通路の向こうから、三菱家の後継ぎのボクシング男が歩いてきた。


三菱「お?」


初咲「あ・・・・ども・・」 興味がないと雰囲気を出し、すれ違うー。


三菱「・・」〈ガ〉 腕を掴む。


初咲「!え?な!何ー」


三菱「好きだ」


初咲「は!?」


三菱「結婚してくれ!俺と!」


初咲「ちょ・ちょ・ちょ・・」


三菱「正直に言う、今の君を他の男に見せたくない」


初咲「え?ええ?いや・・あの・・離して?」


三菱「一目惚れだ、俺と一緒になってくれ」〈ス〉 片膝を付く。


初咲「ええ・・っと~~嫌・・です」


三菱「・・そっか」



沈黙。



三菱「〈ニコ〉じゃあ・・俺は此処には用はないな、止めてしまい、申し訳なかった」 立ち上がり、一礼し、階段を降りていった。



初咲「・・〈ドッドッッドッド〉」 心臓が波打つ。



スタッフ「「此処にいらしたんですか、お急ぎください」



初咲「は、はい」



スタッフ2「三菱家の人は?」


スタッフ「ええ?居ない?さっきまで会場に・・」


スタッフ2「それが見当たらなくて」


スタッフ「ああ、もう!貴方は初咲さんをご案内して、いいわね?」  


スタッフ2「は、はい分かりました!どうぞこちら・・で・・」 



スタッフ2「・・・・」





初咲「?あの?」





スタッフ2「・・は!?し、失礼しました、どうぞ、どうぞ!こっちです、つい見とれてしまって・・」



初咲「え・・あ、あは、ど、ども」



スタッフ2「お綺麗ですよ・・どうぞ」〈ガチャ、キイーーー〉



皆は既に、隅や、中央等、バラバラに配置されたテーブルに座り、男達と談笑していた。がーー。


扉が開いた瞬間、皆の刻がーーー。





















白いアオザイ姿だった。



真っ白な軽いシルク布地に、濃い青糸を分からないよう通してあり、更に青白さ感を生み出している。


大きすぎない、青い蓮の花の髪飾り。


金髪に映え、精錬さ、聖純潔感を引き立たせ、瞳の色を目立たせる。


化粧は薄く。。


口紅は薄い細い赤。



ピッタリ感で体のラインを出し、足が長い為、嫌気がない。


シンプルな格好だ。


白いアオザイ。


一言で言えば、確かにシンプル過ぎるドレスだった。


しかしー。



皆が息を呑むのは何故なのだろうかー。



そこに、嫉妬や、妬み、疎み等はあったのだろうかー。







皆は着飾っていた。



着飾って、体のラインを出さず、腰だけを細くし、豪華なドレスを着こなしていた。



ソメシアもギャップ狙いならーー。



そう、何となく、豪華な格好で来る、そう思っていた節が心の何処かであったのではないか?



しかし、結果は。



豪華ではなかった。



シルクなど、普通の布感覚だった。



豪華ではない。



華麗でもない。


しかしー。





このー。





この歩いてくる姿に見とれるのはなぜだろうか?





純真なー。






時が過ぎれば失われてしまう モ ノ 。





その貴重な  狭  間  の時期、時間を写真のように、見せつけられた気がした。





その 『可憐』 さを表現するとしたらー。





今会場にいる、全ての人間が、まさに、これだと答えるに違いない。


 



男性陣の心は。








もう決まってしまったのかもしれない。





この場にいる 全 て の 人 間 がそう思った。




初咲「すいません、遅くなりました」 松本に近づく。



照れ、髪を人差指でかき、一瞬上目づかいし、また伏せる。



松本「・・・・」 茫然自失。



初咲「?・・あの?・・松本さん?」



松本より、経験豊富な男達が動いた。



藤原「君・・いや・・ソミシアさん!私にも君を口説くチャンスをくれないか!?頼むよ!」 手を握り、詰め寄る。


初咲「え?あのいや」



皆『「俺も」「私も」「私も」「私も」~~~~~~』 詰め寄る、詰め寄る。



初咲「松本さんが断ったらね!」



松本「・・・・」 茫然自失。



スタッフ2「おっほん!」 松本の後ろから咳払い。



松本「はう!?は!?ああ!?・・・・あの・・えっとあれ?」 おどおど。



初咲「あの・・松本さん・・」 男達の囲いから出て、歩み寄る。



松本「ひゃい?」



藤原「っふ・・駄目だなありゃ、情けない」



皆もそう思っていた。



特に、男性達側は。



こんな男に負けるはずない。



誰もがそう思っていた。



早く振れよ、お前なんかが傍に置いて良い人ではないとー。



無言の圧力が男達からひしひしと伝わってくる。



初咲「あの・・私・・どうでしょうか?」



松本「え?あ?いや、あのえっと」 おどおど。



初咲「私・・好みじゃないですか?いやですか?」



松本「あの・・あの・・えとあの・・その・・」



藤原、皆『(いいぞ!もっと醜態を見せろ!)』



松本「僕とけ・・」



初咲「え?」



松本「けけ・・」



藤原、皆『「おい!?」「てめ!?」「マジ!?」「コイツ!?」「マジか!?」』



松本「けこんしてくださびゅひょ」



藤原、皆、スッタフ一同『(噛んだあああああああああしかも、順序早えええええええ)』



初咲「え?嫌です」



藤原、皆、スタッフ一同『(おおお!?ですよねえーーー)』



松本「あ・・・・そそ・・ですか・・そですか・・はは」 ショックで目が開かれ、落ち込む。



男皆『(いよっしゃああああああああああああ)』


スタッフ一同『(あ~あ・・噛むから~・・あ~あ)』


初咲「結婚を前提に、付き合うならいいですよ」


皆『ええええええええええええええええ!?』 思わず皆大声。



松本「え?」 顔を上げる。



初咲「だってまだ・・よく知りませんし・・まずは、デートとかしたいです!えへへへ」


その笑顔が止めになった。



松本「は・・・・はああ」 〈ドサア〉気絶。



初咲「ええ!?ちょ!?松本さん!?え?大丈夫ですか?ねえ?お~い?ねえ?」 薄れゆく意識の中、必死に自分の顔を超至近距離で覗き込む初咲。



良い匂いが鼻を突き、薄い瑞々しい紅唇が  大 丈 夫 ?  と動いた場面で意識が消えた。



女性経験は無かった。



しかし、それは、ときめく女性が居なかったからだった。



投資とは。



リスク管理である。



性病、人間関係、女性のしつこさの経験談、それらを総合的に判断した結果、そんなリスクを犯してまでの、この女性なら、この様なリスクを犯しても、手に入れたい、抱きしめたい、そんなー。



そんな女性は居ない、そう思っていた。




自分には縁がないのだと、そう言い聞かせる日々。




雨の日も、風の日も、クリスマスも、お正月も、バレンタインも、お金持ちとバレない様に生きてきた。





そんな女性は現れない。






きっと現れない。










そんな時、一通の手紙が届いた。




有名な学園からだった。



最初は疑ったが、明らかに、偽造のしようがない文面で、自分の事が詳細に書かれていた。



その道のプロが調べ上げたデータだった。



学園のトップ達とのお見合いの話だった。



どうして自分なんかが?



何かの間違いでは?



問い合せた。



結果は間違いではなかった。



浮き足立った。



かなりの年下だ。



いいのか?と問う。



法律的にはまだアウトだが、貴方の年を考えますと、他の女性に向かれてはたまりませんのでとの答え。



何故、そこまで自分なのか?と問う。



貴方様の成績が異常だからです、普通ではありません、当学園では、優秀な遺伝子を日本、世界の為に、残さなくてはならない使命を負っているので、それにー。



それに?




貴方様は純情ですので。




との答え。






それ以上は何も質問しなかった。




自分など、選ばられる訳がないのだ、社交のつもりで行ってみようと、普段買わない高級スーツ、高級時計、高級、高級、高級で身を固めた。




一回も行ったことがない美容室に行った。




前髪を切る事を強く勧められたが、怖かった、景色が変わるのが怖かった、目を直で見られるのが怖かった。



ドキドキしながら、数々の富豪達と一緒に飛行機に乗った。




資産の話を聞かれ、正直に話した。



馬鹿にされてる感じは何となく伝わった。




それでも。




それでもー。






生きていて良かったと。





こんなに心から思える日が来るなんてー。





小さな部屋。



白を基調とした、バリ島ならではの天井があった。



左を見る。



初咲がアオザイ姿でベッドに上半身うつ伏せに寝ている。



ずっと、見張ってくれたのだろう。



初咲「う?う~~・・あ・・起きた?」



松本「うん・・有難う」



初咲「急に倒れるんだもん、ビックリした~」



松本「ん・・ごめん」



初咲「・・」



松本「・・」



初咲「返事は?」



松本「え?」



初咲「結婚を前提に!・・・・お付き合いしませんか?」 下を向く。



松本「・・」



初咲「・・」



松本「よ・・」



初咲「?」



松本「よ・ろ・・しく・・ゴホッゴッホゴホ・・おねが・・し・・ズビ・・ズビ・・ふ~~~ん、ふ~~~ん」



初咲「ええ?何で?何で泣くの?もう・・しょうがないなあ」〈ギシ〉ベットに上がる。



松本「ズビ、グス・・ゴホゴホ」 



初咲「・・」 そっと肩を寄せ、頭を撫でる。



松本「・・」



初咲「・・」〈コツン〉おでこをくっつける。



初咲「泣き虫さん・・これから宜しくね」




今までの一人の思い出が・・・・走馬灯のように・・・流れたー。





松本「・・はい」







満月。





沖合い、鯨の群れが盛大にー。



《クオオオオオン、クオオオオオオン、ザッパアアアアアアアアアアアアアン》


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