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RCC シェパード ディグニティ  作者: セロリア
15/27

知られない悲しさ

〈ピピピピピ〉 目覚まし時計が鳴り、初咲は起きた。



初咲「さあ・・決勝かあ・・・・強いんだろうなあ・・おいちゃん結構焦ってたもんねえへへへ」



着替えていたらスタッフが呼びに来た。



初咲「はい~もう行きます~」



スタッフ「はい、分かりました」 去った。



初咲「さあって・・〈コキン、ゴキゴキ〉行きますかあ」 〈ガチャ・・バタン〉








司会「さあ・・両者リングに今上がりましたあ・・どうですかウルフさ~ん?」



ウルフ「まあ・・お互い本気になる試合になるだろうな」



司会「でしょうねえ・・ザボエルさんには大人の威厳を見せて欲しいモノですね~」



ウルフ「子供にも意地があるモンさ・・大人に負けたくないという意地がな」



司会「経験と、才能との戦いです、さああ、両者中央に寄ったああ」



ザボエルは身長170cmと低いが、肩幅が広い。体重は120kgはあるだろう。


手が長い。リーチは足技並だろう。



頭は角刈り。


髭無し。



上半身裸。下半身、パッドの短パン。



司会「さあ・・今・・審判がああ・・」



審判「良いですね?・・では・・始め!」



司会「幕を切ったああ・・さあ始まりましたあ!」





ザボエルと初咲はお互いに構えもせず、スタスタと歩み寄る。



ザボエル「・・」〈ヒュ〉 前へ動いた。



初咲「・・」〈トヒュ〉少しバックスッテプ。 



ザボエル「!・・」 少し下がった。




お互い動かない。




司会「おおっとお?、初咲選手、珍しく攻めない、やはり、決勝は甘くないかあ?」



ウルフ「いや、よく下がったと褒めるべきだ」



司会「といいますと?」



ウルフ「今のは制空権の間合いに入らなかったんだ、お互いの完璧な間合いの読み合いが今起こっている、ザボエルは読まれたと確信した、だからこそ、意識のレベルを上げる為、一旦距離をおいたのだ」



司会「なる程~・・お互い微動だにしませ~ん」




初咲「・・」〈ユラ・・〉前に体重を少~しかける。


 

ザボエル「・・」〈ピピク〉 しっかり反応。



初咲「・・(こいつ・・出来る・・今までの相手とは格が違う、間合い測りは互角かも)」



ザボエル「(誰に習ったんだコイツ・・教えた奴がコイツの背中に見える・・あんた化物だぜ?)」



観客達『ざわざわざわ』



司会「おおっと~これはいけません、お互いに動かない~、しかし、ご理解頂けてる皆さんは余計な茶々はいれませ~ん、これは、まさしく、陰の駆け引きが行われております」



初咲「(・・レベル最上級か?も?う~む・・最上級の2歩手前・・くらいで行ってみっかな?)」



ザボエル「(威力は半減させ、速さで絡め手、破壊する)」〈ヒュ〉 ザボエルが前へ動いた。



初咲「(んじゃあた~〈ヒュ〉しも!)」 初咲も前へ。



お互い間合いにー・・《ビシ》蹴り技で入り、膝裏同士ぶつかった。



一般的には蹴りはモーションが大きく、実践、特に超近距離格闘では使い道がないと言われている。



だが、達人ともなれば、居合と同じ様に、膝の角度によって、目の錯覚をおこさせ、いつ、蹴られたのか全く分からないようにする事が出来る。


それは、距離が近ければ、近いほど、蹴りは意識から外れる為、超近距離で蹴り技を出せれば、ほぼ100%当てる事が可能である。


しかし、殆どの人間はそれが出来ない、何故なら、股関節の可動域が限界がある事、モーションが大きく、如何に放った足が相手に見えてなくても、相手の拳の方が早いからである。


しかし、この2人はー。



初咲「シ、シシ・・シ!」超至近距離で拳と足技を織り交ぜ、攻防。


ザボエル「シシシシシ」 足技を絡め、初咲の態勢を崩そうとするが・・。



ザボエル「(下手をすればコッチが崩される!体重は俺が重い筈なのに、なんて足指してんだ!?)」



初咲「(凄い!凄い!これも、これも、これも、これも?お~止めるか~じゃあ・・レベルアップ♪)」



意識を壊す事に向け始める初咲。



ザボエル「(む!明らかに脛の角度が変わった!あの鉄の足で頭、アバラ、肩、背中を壊しに来てる)」



初咲「(こっからはね~・・ガード出来るんならど~ぞ♪ほいほいほいほほほ~い!)」



回転を上げ、凶器を振り回す。



ザボエル「(舐めるな!コッチは日本刀相手に練習してんだよ、それにー)」



初咲「(そりゃ!〈ボグ〉 初咲の顎狙いの右前蹴りを左前へ動き踏み込み、躱し、ザボエルの腹狙いの右拳は初咲の左手で止められたが、同時に右足で、初咲の左側頭部を蹴った。



初咲「えあは!?」 〈ビキビキ〉 首が捻れる。



ザボエル「・・」〈トン〉みぞおちに初咲の左手ごと右拳を添い当てる。



初咲「(あ・・やば)」 左手ごと打ち抜かれる、そう思った。




ザボエル「(フン!)」〈ゴボオオ〉 初咲の体は飛ぶ事なく、その場に、前のめりに〈ドッシャアア〉沈んだ。



体を限りなく細く、捻る技術。これにより、超至近距離であっても、威力を殺す事なく、伝え切る事が可能となる。



最高の技術をその身に味わう初咲。




初咲「・・」 うつ伏せのまま動かない。




審判「・・ひ!」 真横に移動し、初咲の表情を見て、何やら驚く。 



ウルフ「・・?」



司会「・・?何でしょうか?」



ザボエル「おい、審判何してー」 〈ババ・・トン〉 初咲がバク宙で起きた。



初咲「・・」 フラフラしながら・・上のライトを見ている。




ザボエルを始め、会場の皆が一瞬見守る。




初咲「あっはっはっははハハハハハハ」 口から血を出し、手を広げ笑う。




ウルフ「ハ!いかん!駄目だ!ヤバイ!」




司会「?どうしたんですか?」




ウルフ「発作だ!過去のトラウマの!」




司会「ええ?どういう事ですか?」




ウルフ「あいつはー」





ザボエル「こいつ!」 初咲に向かい、右拳を振り下ろー。





ウルフ「初咲よせえええ!!」





初咲「きひ♪」 降ろした目は、歪み、濁って、口は開かれ、笑い、悪魔。



ザボエル「(そんな顔はなあ・・見慣れてん〈ギュルル〉え?〈ボギャギャグリョリョ〉 〈ブシュウウウ・・プラーン、ボタボタボタ〉



振り下ろした右腕が、初咲の左足と左手で挟まれ、体ごと回転、一瞬で捻られ、捻られ、皮膚で繋がった状態となった。捻られた箇所の筋肉は絞られた雑巾のように細く、行き場を失った血が吹き出している。




ウルフ「ザボエル逃げろおおおお」 銃を構える。




ザボエル「は?」 初咲は既に空中に飛んでいてー。




初咲「グル!」〈ボ〉 右サッカー蹴り。



ザボエル「く!」〈ビュオ〉 斜めに屈み躱し、右後ろ回しを繰り出し撃ち落とそうとー。



初咲「ールル!」〈ガシ!〉右顔にヒットしたと同時に両手と顔で挟まれた。



ザボエル「(な!?)〈ゾゾゾオオオ〉」全身に悪寒が走る。



初咲はそのまま〈ガガ〉 右足をロックし、空中足十字。



そのまま互い仰向け状態で〈ドダーン〉 着地。と同時に〈ゴシャ〉右足首のくるぶしを左拳で破壊。



ザボエル「!!」〈ドゴ!〉 左足で初咲の腹を蹴る。



初咲「おおええ」 ゲロしながら笑い、背中を見せ、起き、〈トーン〉バク転し、ザボエルの頭に踵踏みをー。



ザボエル「(!!)」〈ババ〉左に体回転し、〈ドドーン〉踵踏みを躱すが、すぐ追いかけてくる初咲。



ウルフ「(今だ)」〈プシュ、プシュ、プシュ、プシュ〉 麻酔針が初咲に3発ヒット。




初咲「ルルアア!!」 ザボエルの腹へ、〈ヒュ〉左右手刀。




ザボエル「(くう!これを躱した後はない!くっそ!)」〈ズズ〉 左足で体をエビ運動し、〈ヒュ〉躱す。



ザボエル「(こっからどうする?どうする?)」




初咲「ルルー・・」




ザボエル「(間に合わー・・え?)」



〈トサア〉 初咲は倒れた。





ウルフ「(ふう・・)」




ザボエル「・・痛ってええええ痛くなってきたあああ、痛ってえええええああああああああ頼む俺にも俺にもおおあああ」



ウルフ「・・」 〈プシュ、プシュ〉 ザボエルに2発ヒット。




ザボエル「ああああああ・・あ・・あう・・」 気絶。





両者タンカで運ばれていく。




会場『ざわざわざわ・・』




司会「え~・・これは~・・どうなるんでしょうか?審判?」



審判にマイクが渡される。



審判「え~ザボエル選手の腕は二度と使えないと思います、問題はそこではなく、ウルフさんが止めなかったら確実にザボエル選手は殺されていたでしょう、よって、初咲選手の失格負けとし、ザボエル選手の勝利とします」



会場『ざわざわざわ』




審判「決勝戦、勝者は~西~ザボエル~ビザンギャフ~おめでとうございます!本人はいませんが」




会場『はははは・・パチパチパチ・・』 元気がない会場。




司会「い、いやあ・・壮絶でしたねえ~」




ウルフ「そうだな・・」



司会「麻酔銃は予め準備していたんですか?」




ウルフ「ああ」




司会「発作の事はじゃあ」




ウルフ「ああ・・知ってた」




司会「そうだったんですか」




ウルフ「じゃあ・・俺はそろそろ・・」




司会「あ、はい・・では、実況してくださいましたのは、ウルフさんでした~ありがとうございました」




ウルフ「ああ、もう二度としないからな」




司会「ええ?どうして?」




ウルフ「お前とは間が合わん」











医務室。




初咲「・・(私・・やっちゃたんだ・・じっちゃ・・ごめん・・ごめんね・・)う・・うう・・」



〈コンコン〉



初咲「・・はい?」




ウルフ「俺だ・・その・・大丈夫か?」 扉越しに話す。



初咲「あたしはいいけど・・相手は?どうなった?」




ウルフ「珍しく生きてる、・・お前は・・反則負けだ」



初咲「ああ~・・やっぱり~ははは~・・やっぱ・・~~~~~~」 腕で目を押さえる。



ウルフ「手加減域を拡張出来ない限界があるモノだ、仕方ないさ」



初咲「~~~~も・・ん・・・」




ウルフ「ああ・・そうだな・・」




初咲「~~~~ど・・し・・て・・」




ウルフ「ああ・・そうだな」




初咲「わ・・たし・・勝・・たもん・・勝ったもん・・ど・・し・・」




ウルフ「お前は負けたんだ、・・負けたんだよ初咲、・・自分にな」




初咲「~~~~うううわああああああん、ううううわああああああん、ううう~~んぐ・・ひっぐ・・」




ウルフ「・・これからの道をどうするかはお前が決めるんだ、この機関の強者達と戦いたいっていうお前の願いは叶った、・・次はコッチとの約束だ」



初咲「・・」




ウルフ「お前の体は天からの送りモノだ、普通より丈夫なその骨、筋、軟骨、その可動域、全てが戦いの為に与えられたようなモンだ・・だが・・才能通りに生きる事が幸せとは俺は思わん、お前は既に・・人殺しだが」



初咲「・・」




ウルフ「だがな・・人殺しをしていない人間等いない、この世界で起きてる事はどこまでいっても同じなんだ・・本当だ・・ 近 い か 、 遠 い か の 違 い なんだ」



初咲「・・」




ウルフ「日本で安く売られている服や、パソコン、携帯、シャンプー、リンス、酒、その全てが、海外の貧困者達の血で出来ている」




初咲「・・」




ウルフ「世界平和なんて無理だとは・・思いたくはない・・だが・・現実は・・くそ・・言いたくないが・・現実は・・ 今 を 平 和 に す る 事 で 精 一 杯 なんだ」




初咲「・・」




ウルフ「この後お前には2つの選択が与えられる、1つは・・俺達の機関に正式に入り、血みどろの殺し合いに染まり続ける事、もう1つは・・普通に日本で暮らす事、負けたら帰ってくるなっていうあいつの言葉は嘘だと思うぞ?帰ってもいいと俺は思う」




初咲「・・」




ウルフ「この大会が終わったらって約束だったろ?」





初咲「・・うん・・」




ウルフ「日本で普通に暮らすか・・悪者退治か、帰国するか・・選べ・・1週間やろう、だから・・それまでに・・考えておけ」




初咲「・・おいちゃんは・・あたしに残って欲しい?」




ウルフ「・・」  去った。




初咲「・・ずるいなあ・・あたし・・うう・・ううう・・」
















翌朝。




学園。




芝生グラウンド。



見物者、超多数。



OO組メンバー天才。




???「初めまして、島津涼華と申す、ソチが妾の相手か?」 下駄の軽和服。足元まで。



初咲「・・うん」 テンションが低い。



島津「妾の使う術は様々じゃ、適当じゃ・・ソチはシラット?だったかの?」




初咲「はあ・・どうでも良いよ・・」




島津「何とな?」




初咲「ささっと始めよ、多分もう・・遊べないと思うけど」




島津「遊ぶ?遊戯のつもりかえ?ふふふ・・おかしな子~」




審判「さあ・・良いですね?・・では・・承りました・・」



島津「・・」



初咲「・・」



審判「・・始め!」




初咲「・・」 スタスタと歩き、向かう。




島津「ふふふ」 合気構え、待つ。




初咲「・・」袖を普通に掴み、〈グイ〉引っ張る。




島津「ふふ」〈クイ〉手首決め、〈グググウウ〉腕を軸に体を地面に押さえる。




初咲「・・」 逃げられない。 地面に押さえつけられた。




審判「・・?」




島津「ど~です?終わります?」




初咲「・・はあ・・やっぱ・・こんなモンか」〈グググ〉押さえられた手首、肘、肩関節ごと、上がる。




島津「・・へ~・・丈夫ですのね~んん~?」 折ろうとするが、折れない。




初咲「・・」 〈グググ・・バッ〉完全に立ち上がり、また掴もうと手を伸ばー。 



島津はその右手を掴み、〈クイ〉空気小手返し。



〈フワッ〉と初咲の体を浮かし、頭が地面に着くと同時に、首に〈ゴシャ〉踏みつけ。



島津「(これで気絶ー)」



初咲「・・」 むくっと起き、普通に立つ。



島津「はあ!?あなたどういう体して!?」




初咲「確かに・・あんた強いね・・間合いとか、タイミングも隙がなくて良いと思う」




島津「は?・・あら・・どうも・・」




初咲「でも・・そんなんじゃ・・」




島津「え?」




初咲「そんなんじゃ・・ね?」〈バ〉 動き、左足で右側頭部を蹴ろうとー〈ヒュ〉それはフェイントで、膝を反転、左側頭部を狙う。



島津「はん、この程度」〈ヒュ〉下がって避けー。



初咲「・・」〈ザザ〉 軸右足の踵を移動、体の軸が変化、狙いが左側頭から、顔面へ追撃。



島津「(な!?)〈ゴ!〉ぶっへ!」 〈ドサ〉仰向けに倒れる。




初咲「・・早く立ちなよ・・お姫様・・」




島津「な・・何ですって~」 立ち上がった。




初咲「・・これ・・見える?」〈ヒュヒュヒュ〉 右蹴り技連続。



島津「見えます~〈ガ〉わよ!」〈ビュオ〉初咲の右足を掴み、後ろにバック。



島津「えいやああ!」〈ゴシャ〉踏みつけ、折ったー?



初咲「・・」 普通の顔。



島津「(前後に180度以上開脚、踏みつけまでやったのに・・どうして?)」




初咲「もういい・・」




島津「は?何がもういいんですの?」




初咲「もう・・飽きた」 〈トン・・ヒュオ〉前後開脚から後ろ足を指立ち、そのまま前宙、踵落とし。




島津「!!このー〈ウン!!〉ひう!?」 目の前を踵落としが通り過ぎた。




島津「(何が起きたの?)」 見るとさっきと同じ様な態勢の初咲。



違うのは足がさっきと前後逆。



島津「(コイツ・・何か・・変)」 


明らかに普段の戦闘の内容とは異質。


全くタイミング、予測、威力が分からない。



島津「あなた・・何なの?何なの?何なの?はあ?何なの?」 少しずつ後ずさり。




観客達『ざわざわざわざわ「どうしました~?」「涼華様~?」「相手を見下ろす涼華様素敵~」』




初咲「あんた達ってさ・・」




島津「え?は?」




初咲「可哀想なくらい・・弱いんだね」




島津「・・ひっ」〈ゾゾゾオオオオ〉 


怒らなければいけない事は分かっていた。



しかし、本能レベルで察する。



世界が違う。



格闘としての、映画や、アクション、技のレパートリー。



そのどれもが陳腐なモノだという事。



本当の技術というモノは、そういうモノとは根本が違うという事。



相手を壊す、殺す、その技術は喧嘩とは違い、一瞬にして決着が着くモノであり、そういうモノだと理解はしていた、つもりだったー。



島津「(でも・・これは・・この感覚はー)」



映画の喧嘩や、道場で習うモノはダンスなのだ。



お互いが殴り合い、最期は両成敗か、どちらも生きたまま終われるように改造された、おままごとなのだ。



それは逆に言えば、感謝出来るという事。



人殺しにならずに、相手と分かり合える機会が作れるという事。



純粋な格闘技術とは、相手に尊厳も、自由も、隙間も、空間も、時間も、思考も一切奪い去り、与えず、無駄な労力を一切使わずに、楽に楽に楽に殺してしまう技術なのだ。



島津は自分が習ってきた技術が。



習得してきた技術が如何に遊びか感じていた。



{島津「遊び?遊戯のつもりかえ?」}



島津「(遊びだったのは・・妾の方だったー?)」




初咲「・・」 普通に立った。



島津「・・あの・・」




初咲「喧嘩ならあんたの勝ちだね」




島津「え?」



初咲「喧嘩はあたし弱いんだ」



島津「・・」




初咲「こんな強い技術持ってたって・・誰とも喧嘩出来ない・・うう・・うううグス」




島津「・・」




初咲「あたし・・強いでしょ?・・強いのに・・強いのにいい・・誰も・・誰にも認められないよおお」




島津「・・・・」 涙が溢れる。




観客達『ざわざわ「やった!」「涼華様の勝ちね」「あ~あかわいそうに」「泣いちゃったよ」ははは』






初咲「誰にも・・・・強いって・・強いって何?ううう・・ううわあああん、うううわああん」




島津「・・審判」 涙が止まらない。




審判「はい」




島津「私の負けです」




審判「・・良いんですか?」




島津「ええ・・」 初咲を抱きしめる。




初咲「うわあああああああん、うえええ、ゲホゲホああああああん」





島津「私、底から美しいって思った人・・貴方が始めてですわ」



時間。



練習し、摩耗した時間。



島津は幼い頃から叩き込まれて来た。


それを皆に披露し、認めて貰うことが快感であり、喜びであった。



だからこそ想像出来た。



研ぎ澄まされた刃を誰にも知られない悲しさを。

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