6話
永時と会った日の夜、月愛はベッドの中でスマートフォンを眺めていた。
画面には、今日までの永時とのメッセージが並んでいる。
何度読み返しても、自然と頬が緩んでしまう。
「……また会いたいな」
小さく呟いて、自分で驚いた。
今までなら、こんなふうに誰かに会いたいと思うことはなかった。
けれど永時には、もっと一緒にいたいと思ってしまう。
翌日の夕方。
月愛がスマートフォンを見ると、永時からメッセージが届いていた。
『今日は何してる?』
『家でゆっくりしてます』
『じゃあ、少しだけ会わない?』
画面を見つめたまま、月愛は迷った。
会いたい。
でも、自分から誘われるのを待っているように思われるのも恥ずかしい。
それでも、素直な気持ちを送った。
『……会いたいです』
送信してから、心臓が速くなる。
すぐに返信が届いた。
『分かった。迎えに行く』
その言葉を見て、月愛は思わず笑った。
待ち合わせ場所に着くと、永時はすぐに月愛を見つけた。
「月愛」
「永時さん」
「今日は会いたいって言ってくれたな」
「……言いましたけど」
月愛が少し照れると、永時は嬉しそうに笑った。
「嬉しかった」
「そんなにですか?」
「うん」
永時は少しだけ月愛との距離を縮めた。
けれど、触れようとはしない。
月愛が自分から近づくのを待っているようだった。
二人は並んで歩きながら、今日あったことを話した。
特別な話ではない。
それでも、月愛には楽しかった。
「永時さんといると、不思議です」
「何が?」
「時間が早く感じます」
「俺も同じだ」
永時は月愛を見つめる。
「もっと一緒にいたいと思う」
その言葉に、月愛の胸が温かくなった。
しばらく歩いていると、夜空に月が見えた。
月愛は足を止める。
今日は満月ではない。
それでも、月を見ると胸の奥が少し痛んだ。
「大丈夫?」
永時がすぐに気づく。
「……はい」
「無理してない?」
「大丈夫です」
永時はそれ以上聞かなかった。
ただ、月愛の隣に静かに立っていた。
その優しさが嬉しかった。
「永時さん」
「ん?」
「また……会いたいです」
今度は迷わず言えた。
永時は優しく微笑む。
「もちろん」
そして、月愛の目を見つめた。
「何度でも会おう」
その言葉を聞いた瞬間、月愛の胸にまた、あの不思議な懐かしさが広がった。
――何度でも。
その言葉には、まだ月愛の知らない意味があった。




