5話
永時と会うようになって、まだそれほど時間は経っていない。
それなのに、月愛にとって永時は少しずつ特別な存在になっていた。
朝、目を覚ますとスマートフォンを確認する。
永時から連絡が来ていると、それだけで嬉しくなる。
何気ない会話を思い出しては、一人で笑ってしまうことも増えた。
「……私、どうしちゃったんだろう」
まだ恋だとは認めたくなかった。
だって、永時とは十五歳も年齢が離れている。
出会ってから、まだ間もない。
それなのに、こんなに気になるなんて。
その日の夜、永時からメッセージが届いた。
『今日はどうだった?』
短い文章だった。
けれど、月愛の顔には自然と笑みが浮かんだ。
『普通の一日でした』
少し考えてから、もう一文を付け足す。
『永時さんは?』
すぐに返信が来た。
『月愛から連絡が来るまで、少し退屈だった』
「……もう」
思わず声が出た。
スマートフォンを胸元に抱える。
こんなことを言われたら、意識してしまう。
『また会いたい』
永時から届いたその言葉に、月愛の指が止まった。
胸が高鳴る。
けれど、嫌ではない。
むしろ――嬉しい。
『私も会いたいです』
送信したあと、月愛は顔を覆った。
「言っちゃった……」
その夜はなかなか眠れなかった。
数日後。
二人はまた会った。
永時は月愛を見ると、優しく笑う。
「今日は少し雰囲気が違うな」
「そうですか?」
「うん。なんだか嬉しそう」
「……永時さんに会えたからかもしれません」
言ってから、月愛自身が驚いた。
永時も少し目を見開く。
「それ、俺が喜んでもいい?」
「……はい」
月愛は恥ずかしくなって、視線を逸らした。
永時はそんな月愛を急かさず、ただ隣を歩いた。
「月愛」
「はい?」
「無理に答えを出さなくていいからな」
「何のことですか?」
「俺をどう思っているのか」
月愛は黙った。
永時は優しい声で続ける。
「ゆっくりでいい」
その言葉に、月愛は少しだけ安心した。
急かされない。
求められない。
ただ、自分の気持ちを待ってくれる。
そのことが嬉しかった。
月愛は隣を歩く永時を見上げる。
そして、心の中で小さく呟いた。
――もっと、この人のことを知りたい。
それが恋の始まりだと、月愛はまだ知らなかった。




