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勇者?俺より強いのか?

 王国中に、俺の噂が広がった。


 S級魔物を消した者。


 王国最高の防壁を強化した者。


 そして。


 自らを神と名乗る者。


 当然。


 面白く思わない者もいた。


---


「神崎零」


 王城の訓練場。


 俺の前に、一人の青年が立っていた。


 金色の髪。


 整った顔。


 腰には聖剣。


 いかにも勇者という姿。


「俺は勇者、アレンだ」


「聞いている」


「なら話は早い」


 アレンは剣を抜く。


「お前の力を確かめる」


「断る」


「なぜだ」


「面倒だから」


 また同じ答え。


 周囲の騎士たちがざわつく。


「勇者様に対して……」


「無礼では?」


 だが。


 俺には関係ない。


---


 アレンは眉をひそめた。


「お前は、自分が特別だと思っているのか?」


「事実だ」


 即答。


「努力した者を馬鹿にしているのか?」


「違う」


 俺は答える。


「努力は必要な者がするものだ」


「俺には必要なかった」


 空気が変わった。


「……」


 周囲の視線が冷たくなる。


 当然だ。


 この世界では。


 努力こそ力を得る方法なのだから。


---


 アレンが剣を構える。


「ならば証明しろ」


「何を?」


「その力が、本物なのか」


「いいだろう」


 俺は構えない。


 武器も持たない。


 魔法陣も出さない。


 ただ立っているだけ。


「ふざけているのか?」


 アレンの声が震える。


「俺は勇者だ」


「数千人の騎士が認めた」


「何年も剣を振り続けた」


「仲間と旅をして、魔物と戦ってきた」


 剣に光が集まる。


「俺の全てを否定するな!」


---


 聖剣が振り下ろされる。


 誰もが目を閉じた。


 勇者の一撃。


 それは王国でも最高峰の攻撃だった。


 しかし。


 俺は。


 指一本で止めた。


---


 カン。


 小さな音。


 それだけ。


「……え?」


 アレンの目が見開かれる。


「嘘だ」


 剣が動かない。


 どれだけ力を込めても。


 どれだけ魔力を流しても。


 俺の指から離れない。


「そんな……」


「俺は何年も……」


「何千回も剣を振って……」


「仲間を守るために……」


 俺を見る。


「それでも届かないのか……?」


---


 俺は少し考えた。


 そして言った。


「届かない」


 アレンの表情が崩れる。


「なぜなら」


 俺は剣を軽く押し返す。


「お前が弱いからではない」


「俺が強すぎるだけだ」


---


 その瞬間。


 聖剣が手から離れた。


 地面に落ちる。


 誰も声を出せない。


---


 しばらくして。


 アレンが呟いた。


「……悔しいな」


「でも」


「少しだけ分かった」


「お前は努力を否定しているんじゃない」


「本当に……別の場所にいるんだな」


---


 俺は黙っていた。


 理解されるとは思っていなかった。


 だが。


 少しだけ。


 この世界で初めて。


 興味を持った。


---


 その夜。


 勇者アレンは仲間たちに言った。


「俺は、あいつを倒す」


「いつか必ず」


「努力で届かないなら」


「努力で届く場所まで、自分を連れていく」


---


 一方。


 俺は宿で考えていた。


「勇者、か」


 初めてだった。


 俺に敵意を向けながら。


 諦めなかった人間は。


---


 世界最強の神。


 そして。


 最強を追いかける勇者。


 二人の物語が始まった。

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