エピローグ おかえり
地球。
夕方。
住宅街。
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「……」
零は、一軒の家の前で立ち止まっていた。
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表札。
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**神崎**
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何年ぶりだろう。
異世界では二十年以上過ごした。
でも。
地球では、ほんの数か月しか経っていない。
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リリアがそっと聞く。
「零様」
「緊張していますか?」
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「ああ」
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世界を救った時より。
神と戦った時より。
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今のほうが緊張していた。
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インターホンを押す。
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ピンポーン。
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しばらくして。
玄関が開く。
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「はい……」
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母だった。
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「……え?」
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袋を落とす。
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「れ……」
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声が震える。
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「零……?」
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零は静かに頭を下げた。
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「ただいま」
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母は数秒動かなかった。
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そして。
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「零っ!」
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思い切り抱きしめた。
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「生きてたの!?」
「だって!」
「あなたは!」
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涙が止まらない。
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その声を聞き。
父も飛び出してくる。
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「どうした!」
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そして。
固まった。
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「……零?」
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信じられない。
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交通事故で亡くなったはずの息子。
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その本人が。
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目の前に立っていた。
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「説明すると長い」
零が苦笑する。
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「本当に長い」
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父はしばらく見つめて。
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突然。
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「バカ野郎!」
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頭を軽く叩いた。
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「心配したんだぞ!」
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零は少し笑った。
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「……悪かった」
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異世界では。
誰にも怒られなかった。
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でも。
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この一言が。
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なぜか一番嬉しかった。
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そこへ。
レイアが父の服を引っ張る。
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「お父様」
「この人たちがおじいちゃんとおばあちゃん?」
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父と母。
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「……」
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「…………」
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完全停止。
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零が紹介する。
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「俺の妻、リリア」
「娘のレイア」
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母が小さく呟く。
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「え?」
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「え?」
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「えぇぇぇぇぇ!?」
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家中に響いた。
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翌日。
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零は学生時代の友人とも再会した。
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「……零?」
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「お前」
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「死んだって……」
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友人は目を丸くする。
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「ニュースにもなっただろ!」
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零は困ったように頭をかく。
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「色々あってな」
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「色々で済む話か!」
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友人は笑いながら涙ぐむ。
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「バカ……」
「生きてるならそれでいい」
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零は頷いた。
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その時。
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リリアとレイアが手を振る。
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「零様ー!」
「お父様ー!」
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友人が目を丸くする。
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「……紹介してくれ」
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零は少し照れながら言う。
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「妻と娘だ」
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友人。
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「…………」
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「は?」
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「お前」
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「数か月で何があった?」
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零は真顔で答える。
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「異世界に転生した」
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友人。
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「…………」
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「嘘つけ」
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「本当だ」
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「信じられるか!」
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リリアとレイアは顔を見合わせて笑う。
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零も。
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少しだけ笑った。
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昔は。
世界を手に入れても笑えなかった。
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でも。
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今は違う。
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家族がいて。
帰る場所が二つあって。
大切な人たちが笑っている。
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それだけで。
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十分だった。
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空には。
異世界と同じ星空。
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零は静かに呟く。
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「生まれ変わって……」
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「よかった」




