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最終話 ただいま

 最後の戦いから、一年。


 世界は完全な平和を取り戻していた。


---


 神を狙う者はいない。


 戦争もない。


 魔王もいない。


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 王城の地下。


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 零は巨大な魔法陣を見つめていた。


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「完成した」


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 リリアが驚く。


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「本当ですか?」


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「ああ」


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「何千回も計算した」


「世界の法則を書き換え」


「空間を繋ぎ」


「時間を合わせ」


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「ようやく完成だ」


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 レイアが目を輝かせる。


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「お父様!」


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「これって!」


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「地球へ帰る門だ」


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 リリアは魔法陣を見つめる。


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「でも……」


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「一つだけ条件がある」


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 零が頷く。


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「この門は」


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「俺の家族しか通れない」


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「他の誰も」


「魔物も」


「軍隊も」


「神ですら通れない」


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「家族だけの帰り道だ」


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 リリアは微笑んだ。


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「零様らしいですね」


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「そうか?」


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「あの世界も」


「この世界も」


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「どちらも大切だから」


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 零は静かに笑う。


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「だから繋いだ」


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 レイアは待ちきれずに飛び跳ねる。


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「早く行きましょう!」


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 零は笑いながらレイアの頭を撫でた。


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「慌てるな」


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 三人は手を繋ぐ。


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 そして。


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 門をくぐった。


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 眩しい光。


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 次の瞬間。


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「……」


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 零は空を見上げる。


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 青空。


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 電線。


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 信号機。


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 走る車。


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 懐かしい景色。


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「ここが」


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「お父様の世界?」


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 レイアは目を輝かせる。


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「すごい!」


「魔導車じゃない!」


「鉄で走ってる!」


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 リリアも周囲を見回す。


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「不思議な世界ですね」


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「魔法がなくても」


「こんなに発展しているなんて」


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 零は少し笑う。


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「俺が生まれた世界だ」


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 歩き出す三人。


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 そこへ。


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「すみませーん!」


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 高校生くらいの男子が近付いてくる。


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「道に迷ったんですけど……」


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 零は普通に答える。


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「あっちだ」


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「ありがとうございます!」


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 男子は去っていく。


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 リリアが小さく笑う。


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「零様」


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「何だ?」


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「誰も」


「あなたが神様だなんて思っていませんね」


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「それでいい」


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 零は空を見上げる。


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「ここでは」


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「俺はただの父親だ」


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 レイアが手を引っ張る。


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「お父様!」


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「アイス食べたいです!」


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「……分かった」


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「やったー!」


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 リリアも笑う。


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「私も食べてみたいです」


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「三つ買うか」


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 三人は笑いながら歩いていく。


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 異世界では。


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 神。


 英雄。


 救世主。


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 そう呼ばれた男。


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 でも。


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 この世界では。


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 ただ一人の夫で。


 ただ一人の父親。


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 それだけで。


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 十分幸せだった。


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 零は小さく呟く。


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「……ただいま」


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 空を見上げる。


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 そして。


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 今度は。


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 隣にいる二人へ向かって笑った。


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「帰ろう」


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「家へ」

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