魔物?一秒も必要なかった。
異世界に来てから、三日が経った。
俺は森の中にいた。
理由はない。
ただ歩いていたら、森だった。
食料?
必要ない。
水?
必要ない。
寝床?
必要ない。
なぜなら。
俺は神だから。
「……暇だな」
力がありすぎるというのも問題らしい。
魔法を試そうとしても。
「火よ、出ろ」
小さな火を出そうとしただけなのに。
森一帯が燃え尽きた。
「……失敗か」
今度は水。
「水よ、出ろ」
すると。
空から大量の水が降り注ぎ、近くの川が消えた。
「難しいな」
俺はため息をついた。
力を制御する。
それだけが、この世界で唯一の課題だった。
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その時。
「助けてぇぇぇ!!」
遠くから声が聞こえた。
村人らしい。
俺は声の方向へ歩いた。
そこには、小さな村があった。
そして。
巨大な魔物。
十メートルを超える黒い獣。
村の人々は震えていた。
「誰か……冒険者を……!」
「もう無理だ……」
「この村は終わりだ……」
絶望。
恐怖。
諦め。
そんな空気だった。
俺は魔物を見る。
「これが、この世界の強敵か」
少し期待した。
だが。
鑑定。
【魔物:黒炎獣】
【危険度:S級】
【討伐推奨人数:50人】
【能力:炎、爪、再生】
「……」
弱い。
想像より、かなり弱い。
俺が一歩近づく。
「逃げろ!」
村人の一人が叫んだ。
「君も殺されるぞ!」
俺は首を傾げる。
「殺される?」
「そうだ! あの魔物はS級だ!」
「S級?」
なるほど。
この世界では強いらしい。
なら少しだけ合わせるか。
俺は手を上げた。
「消えろ」
ただ、それだけ。
魔法陣すら出さない。
詠唱もしない。
努力もしない。
次の瞬間。
黒炎獣は消滅した。
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静寂。
村人たちは固まった。
「……え?」
「今、何を……?」
「魔法?」
俺は答える。
「魔法ではない」
「では……?」
「ただ消しただけだ」
村人の顔が引きつる。
「……」
「……」
「……」
誰も言葉を失っていた。
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数分後。
「ありがとうございます!」
「あなたは英雄です!」
「この村の救世主です!」
村人たちは俺を囲んだ。
感謝。
尊敬。
称賛。
普通なら嬉しいのだろう。
でも。
「別に」
俺は興味がなかった。
「困っていたから消しただけだ」
そして歩き出す。
「待ってください!」
「お名前を!」
振り返る。
「名前?」
少し考える。
そして答えた。
「神崎零」
「覚えておくがいい」
「この世界で、俺に勝てる存在はいない」
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その夜。
冒険者ギルドでは、大騒ぎになっていた。
「S級魔物が消滅した?」
「ああ」
「誰が倒した?」
報告書を見る。
そこには。
『神崎零』
たった一人の名前。
「……冗談だろ」
「S級を一人で?」
「ありえない」
「何かの間違いだ」
誰も信じなかった。
しかし。
ギルドマスターだけは違った。
「……いや」
「これは本物だ」
「なぜなら」
震える手で紙を見る。
「魔物の消滅地点に残っていた魔力反応が……」
「神のものだった」
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こうして。
世界はまだ知らない。
自分たちの常識を壊す存在が現れたことを。




