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世界最強の親バカ

 王都。


 今日も平和だった。


---


 ……ただし。


 一部を除いて。


---


「お父様!」


---


「見てください!」


---


 庭園。


 小さな少女が手を伸ばす。


---


 レイア。


 神の血を継ぐ少女。


---


 その手のひらには。


 小さな光。


---


 魔法。


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「初めて自分で作れました!」


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 周囲の魔法使いたちが固まる。


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「……」


---


「今の魔法」


「何属性ですか?」


---


「全属性です」


---


「……」


---


 沈黙。


---


 普通なら。


 歴史的な出来事。


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 だが。


---


 零は。


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「すごいな」


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 それだけだった。


---


 いや。


---


 正確には。


---


「すごいな!!」


---


 いつもの無表情からは想像できないほど。


 少しだけ声が大きかった。


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 リリアが笑う。


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「零様」


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「何だ?」


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「今、とても嬉しそうでしたよ」


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「そうか?」


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「はい」


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 零はレイアを見る。


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「当然だ」


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「俺の娘だからな」


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---


 その言葉を聞いた騎士たちは。


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 心の中で思った。


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(出た……)


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(親バカ神……)


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---


 数日後。


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 事件が起きた。


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「お父様!」


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 レイアが泣きそうな顔で走ってくる。


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 零の表情が変わる。


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「どうした」


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「魔法の練習をしていたら……」


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「失敗しました」


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「……」


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 零は庭を見る。


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 そこには。


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 少し焦げた木。


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 そして。


 小さな穴。


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 騎士たちが慌てる。


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「大変です!」


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「城の庭が……!」


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 しかし。


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 零は。


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「問題ない」


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 指を鳴らす。


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 一瞬。


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 庭は元通り。


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「レイア」


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「はい……」


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「失敗したのか?」


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「はい……」


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 レイアは俯く。


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 すると。


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 零は。


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 頭を撫でた。


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「なら、次は成功する」


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「え?」


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「失敗は悪いことじゃない」


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 リリアが驚く。


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 昔の零なら。


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 失敗という概念すら理解しなかった。


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「でも」


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 レイアが言う。


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「お父様なら失敗しないですよね?」


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 零は止まる。


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「……」


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 少し考える。


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「昔はな」


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「え?」


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「今は」


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 レイアを見る。


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「お前のことで、よく分からないことが増えた」


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 リリアが笑う。


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「それは困りましたね」


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「何が?」


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「世界最強の神が」


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「娘さんには勝てないということです」


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 その日の夜。


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 王都では新たな噂が流れた。


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『神崎零には弱点がある』


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『ついに攻略法が見つかったのか!?』


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 人々は騒いだ。


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 しかし。


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 その答えは。


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『皇女リリア』


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……ではなかった。


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『娘のレイア』


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だった。


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 世界最強。


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 無敵。


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 不敗。


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 そんな存在を。


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 たった一言で動かせる者がいる。


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「お父様!」


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「どうした?」


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「一緒に遊んでください!」


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「……分かった」


---


---


 神崎零。


---


 最大の敵。


---


 それは。


---


 可愛い娘だった。

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