神崎零、ちょっと本気出す
闘技場。
世界最高峰の戦力が集まっていた。
剣聖。
大魔導士。
竜騎士。
暗殺者。
歴代でも最強と呼ばれる者たち。
---
観客席は静まり返っている。
---
「本当にやるのか……」
「相手は神だぞ」
「でも」
「世界最強たちが全員で挑むんだ」
「もしかしたら……」
---
誰もが期待していた。
---
しかし。
リリアだけは違った。
---
「……」
---
彼女は知っていた。
---
零は。
本気を出していない。
---
---
「行くぞ!」
---
全員が動く。
---
剣聖の斬撃。
大魔導士の極大魔法。
竜騎士の竜撃。
暗殺者の影。
---
世界を滅ぼせるほどの力。
---
それが。
一人へ向かう。
---
だが。
---
零は動かなかった。
---
「……」
---
ただ。
立っているだけ。
---
そして。
---
「止まれ」
---
その一言。
---
全てが止まった。
---
剣。
魔法。
影。
時間。
---
全て。
---
「……」
---
誰も理解できない。
---
「何をした?」
---
大魔導士が震える。
---
「魔法か?」
---
「違う」
---
零は答える。
---
「ただ」
---
「止まってもらっただけだ」
---
---
沈黙。
---
そして。
剣聖が叫ぶ。
---
「待て!」
「それは反則だ!」
---
零が首を傾げる。
---
「なぜ?」
---
「そんな能力、聞いていない!」
---
「初めて見せたからな」
---
全員。
固まる。
---
「……」
---
「……初めて?」
---
---
その瞬間。
観客席がざわめく。
---
「まさか」
「今まで全部……」
---
騎士団長が呟く。
---
「手加減だったのか」
---
---
リリアは少し困ったように笑う。
---
「零様」
---
「はい?」
---
「少しは普通に戦う努力をしてください」
---
「努力?」
---
零が止まる。
---
その言葉。
---
昔なら必要ないと思っていた。
---
でも。
---
「……善処する」
---
リリアは笑った。
---
「そこは頑張ると言ってください」
---
---
そして。
---
零は初めて。
---
ほんの少しだけ。
---
力を解放した。
---
---
空が変わる。
---
魔力の圧だけで。
雲が消える。
---
大地が震える。
---
世界中の魔法使いが。
一斉に空を見る。
---
「何だ……この力は」
---
「神?」
---
「違う」
---
誰かが呟く。
---
「神という言葉ですら足りない」
---
---
零は静かに言う。
---
「これで」
---
「少しだけ本気だ」
---
---
次の瞬間。
---
全員の武器が消えた。
---
魔法も消えた。
---
戦意すら消えた。
---
ただ。
---
誰も傷ついていない。
---
---
完全な敗北。
---
---
世界最強たちは理解した。
---
自分たちは。
---
最初から。
---
勝負の場所にすら立っていなかった。
---
---
剣聖が膝をつく。
---
「……参った」
---
「認めよう」
---
「お前とリリア皇女の未来を」
---
---
零は頷く。
---
「ありがとう」
---
---
その言葉に。
全員が驚いた。
---
神が。
礼を言った。
---
---
そして。
リリアが近づく。
---
「お疲れ様でした」
---
「ああ」
---
「でも」
---
「一つだけ」
---
「はい?」
---
リリアが首を傾げる。
---
零は少し照れながら言った。
---
「……結婚式」
---
「楽しみにしている」
---
---
リリアの顔が赤くなる。
---
「はい」
---
「私もです」




