神の婚約者
敵組織との戦いから、一週間。
王都は以前よりも騒がしくなっていた。
理由は一つ。
「神崎零が皇女リリアを救った」
その噂。
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「零様!」
「今日も来てくださったのですね」
王城。
リリアはいつものように笑う。
「暇だったからな」
「またそれですか」
最近。
このやり取りが増えた。
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だが。
今日は少し違った。
「零様」
「なんだ」
「お父様がお呼びです」
「王か」
「はい」
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玉座の間。
王。
騎士団長。
大臣。
そして。
リリア。
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「神崎零」
王が口を開く。
「そなたに聞きたい」
「何だ」
「娘をどう思っている」
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突然の質問。
周囲が静まる。
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以前の俺なら。
「大切な人間だ」
それだけだった。
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でも。
今は違う。
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「大切だ」
迷わず答える。
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王が頷く。
「そうか」
「ならば」
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「リリアを妻に迎える気はあるか」
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その瞬間。
部屋中がざわついた。
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「神と皇女の婚姻……」
「歴史が変わる」
「いや、世界の力関係が……」
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俺はリリアを見る。
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リリアは驚いていた。
「零様……」
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少し考える。
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昔の俺なら。
面倒だと思っただろう。
誰かと一緒に生きる。
そんなことを考えたこともなかった。
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でも。
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リリアといる時間は。
嫌ではなかった。
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むしろ。
なくなることが嫌だった。
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「分かった」
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王が目を細める。
「本当にいいのか?」
「ああ」
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「俺は」
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言葉を探す。
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神としてではなく。
初めて。
俺自身として。
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「リリアと一緒にいたい」
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リリアの目が大きく開く。
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「……」
「……」
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数秒後。
リリアの顔が赤くなる。
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「ずるいです」
「何が?」
「そんな真っ直ぐ言われたら……」
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小さな声。
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「断れないじゃないですか」
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周囲が静まる。
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そして。
王が笑った。
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「決まりだな」
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「神崎零」
「我が娘、リリアを頼む」
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零は頷く。
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「任せろ」
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その夜。
世界中に知らせが届いた。
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『神崎零』
『世界最強の存在』
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『皇女リリアとの婚約を発表』
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各国は混乱した。
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「神が王族に入るだと?」
「そんな存在、誰にも止められないぞ」
「世界の均衡が変わる」
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しかし。
本人たちは。
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「零様」
「なんだ?」
「結婚したら、少しは笑ってくださいね」
「努力する」
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「努力?」
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リリアが笑う。
「零様がその言葉を使うなんて」
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零は少し黙った。
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「……俺も変わったらしい」
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世界最強の神。
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その唯一の成長。
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それは。
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誰かを大切にすることだった。




