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神が選んだ答え

 暗い空間。


 冷たい石の床。


 巨大な魔法陣。


 その中心に。


 リリアはいた。


「……」


 手足を拘束されているわけではない。


 逃げようと思えば逃げられる。


 だが。


 周囲には大量の魔力。


 簡単には動けないようにされていた。


「皇女様」


 敵の首領が笑う。


「もうすぐだ」


「神崎零は必ず来る」


 リリアは静かに見る。


「あなたたちは」


「零様の力が欲しいのですね」


「当然だ」


 男は笑う。


「世界を変える力だ」


「神の力を手に入れれば、我々は――」


「違います」


 リリアが遮る。


 男が眉をひそめる。


「何?」


「零様は」


「力そのものではありません」


「確かに」


「世界を変えられるほどの力を持っています」


「でも」


「私が好きになったのは」


 少し笑う。


「そんな力を持っているからではありません」


 その瞬間。


 空間が揺れた。


 ドン。


 巨大な扉が吹き飛ぶ。


 敵たちが振り返る。


「……来たか」


 そこにいた。


 神崎零。


 いつもの無表情。


 しかし。


 空気が違う。


「リリア」


「……零様」


 リリアの表情が柔らかくなる。


「迎えに来た」


 敵の首領が笑う。


「一人で来たのか?」


「罠だぞ」


「分かっている」


「ならばなぜ?」


 零は答える。


「お前たちが」


「リリアを連れて行ったからだ」


 それだけ。


 理由は。


 それだけだった。


 敵が一斉に攻撃する。


 無数の魔法。


 禁じられた兵器。


 神を捕らえるためだけに作られた力。


 しかし。


 零は歩く。


 攻撃は届かない。


 炎は消える。


 雷は消える。


 闇は消える。


「嘘だ……」


「我々が何百年も研究した力が……」


 零は止まる。


「一つだけ教えてやる」


「お前たちは」


「俺の力を見ていた」


「でも」


「俺が守りたいものを」


「何も見ていなかった」


 指を鳴らす。


 全ての魔法が消える。


 敵は膝をついた。


「終わりだ」


 その時。


「零様」


 リリアの声。


 零が振り返る。


「何だ?」


「もう大丈夫です」


「だから」


「これ以上、誰かを傷つけないでください」


 零は黙る。


 以前なら。


 理解できなかった。


 敵は敵。


 邪魔なら消す。


 それが一番簡単だった。


 でも。


 リリアは望んでいない。


「……分かった」


 零は手を下ろす。


 敵は驚く。


「なぜだ……」


「なぜ殺さない」


 零は答えた。


「リリアが望まないからだ」


 その言葉に。


 リリアは少し笑った。


「ありがとうございます」


 その瞬間。


 零は思った。


 世界を支配することより。


 全てを壊すことより。


 この少女の笑顔を守ることのほうが。


 ずっと大切だと。


 帰り道。


 リリアが尋ねる。


「零様」


「はい?」


「どうして」


「私を助けに来てくれたのですか?」


 零は少し考える。


 そして。


 初めて。


 迷わず答えた。


「好きだからだ」


 リリアが固まる。


「……」


「……え?」


 零は首を傾げる。


「違うのか?」


「い、いえ……!」


「その……」


 顔を赤くするリリア。


 世界最強の神。


 だが。


 恋愛だけは。


 まだまだ初心者だった。

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