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地味で堅物なメイドですが、キラキラ侯爵令嬢に変身した私に坊ちゃんが恋をしました【完結】  作者: 降矢 菖蒲
3章:最強の女剣士になって坊ちゃんをお守りしようと思います
15/21

15.どうやら坊ちゃんに正体がバレてしまったようです

聖堂内が騒然となる中、私は宙で一回転して――修道士様に(ふん)した刺客を蹴り飛ばした。


「ぐあっ!? ぐおっ!!?」


間髪入れずに刺客の腹を殴り、ヴァレリオ様をエンツォに預ける。

そして――。


「ぐぁああああ!!?」


風の魔法で刺客を吹き飛ばした。

刺客は――柱にぶつかって動かなくなった。

よし。まずは一人目。


振り返ると、また視界の端に鋭い光を捉えた。

信者に扮した男性三人が、それぞれご当主様、ドメニコ様、アレッシオ様に襲い掛かっている。


私は刺客の姿を、一人一人しっかりと捉えて――素早く剣を振った。


「ごふっ!!?」

「があぁああっ!!!?」

「……っ……!!!!!!!」


三人の刺客をそれぞれ柱、壁、扉に叩きつけた。

いずれも無力化出来たようだ。


「お父様、ロッコ……!」


ご当主様、ドメニコ様、アレッシオ様の避難も無事完了したようだ。

主柱を背に据えて、左右をリッカルド様とロッコ様が固めている。


ヴァレリオ様の護衛には、エンツォがついていた。

エンツォはヴァレリオ様に肩を貸しつつ、ショートソードで周囲を鋭く牽制しながら進み――見事リッカルド様達と合流を果たした。


あれならもう、並大抵の襲撃ではビクともしない。

ご一族の方々に危険が及ぶことはないだろう。


「良かった……」


ほっとしたら、今更ながらに足が震えてきた。

必死過ぎて、怖がる余裕すらなかったんだろう。


苦笑しつつ、パンッと自分の膝を叩いて切り替える。

しっかりしないと。今の私はメイドじゃない。

サヴィオラ家の親衛隊員ルクレツィアなんだから。


「……?」


ふと視線を感じて目をやると――ヴァレリオ様がこちらを見ていた。

酷く驚いて、戸惑っているみたい。


そう言えば、前にもこんなことが……。


『何か?』

『いいえ! その……失礼致しました。クロエ様があまりにもお美しくて、つい』


そうだ。クロエでお会いした時にも、似たような顔をされたことがあった。


やっぱり坊ちゃんは何かに気付いている?

それは何? 一体何に戸惑っていらっしゃるの?


心臓がバクバクと嫌な音を立てる。

目を逸らすことも出来ずにいると、ヴァレリオ様の唇が静かに動いた。


――「フィオーラ」と。


どうして?

どうしてお分かりになるのですか?


私は影。彼女達は光。

何もかもが違う。別世界の人間なのに。


「「「うわあぁぁああああ!!!!」」」

「「「きゃあぁああああ!!!!!」」」


パニックを起こした信者の方々が、我先にと出口に向かって走り出していく。

私が今立っているのは身廊だ。このままだと呑み込まれてしまう。

退避しなきゃ。側廊のアーチのあたりでいいかな――。


「ルル!! 後ろ!!!」


エンツォが叫んだ。

振り返ると、目の前にダガーが迫って来ていて。


「っ!!!!」


避け切れなかった。

左肩に激痛が走る。


「死ね!!!!!」

「ぐっ!!」


男がまた突きを浴びせてきた。

私はよろめきながら、何とか躱して――死に物狂いで剣を振る。


「ぐはぁっ!!?」


刺客の体が、側廊の柱に打ち付けられた。

それを見届けてから、もう一度剣を振るって、今度は自分の体を飛ばす。

向かう先は側廊だ。受け身、取れるといいけど。


「しゃーーーーーっ!!!!!」


ドシッと何かにぶつかった。いや、受け止められた?


「大丈夫か!? ルルよ!!??」

「お父、様……」


どうやら、リッカルド様が受け止めてくださったようだ。

ありがたい。でも――。


「護衛は、刺客は……」

「案ずるな!!! あれを見ろ!!!」


指し示された方を見ると、外で待機していた親衛隊の皆様が、刺客の捕縛やご一族の護衛をこなしてくださっていた。


「良かった……」

「よく頑張ったな、ルル。だが、最後のはいただけなかったな」

「はい。猛省しております」


リッカルド様はうんうんと頷きながら、頭を撫でてくれる。


とても大きな手。それこそ、私の顔を丸ごと覆ってしまうぐらいの。

けれど、恐怖は感じなかった。むしろ、安らぐ。

その手つきが、あまりにも優しくて、愛情に満ち満ちていたから。


「うつ伏せにするぞ」


リッカルド様はそう言って、私の体を大理石の床に横たえた。

しばらくして、ビリッビリッと少し乱暴な音が立ち始める。


ナイフで布の鎧を破いているんだ。

これは処置をするのに必要なこと。

それに……何も全部破くわけじゃない。患部の周辺だけだ。


分かってる。分かってるのに、つい身構えてしまう。

だって、こんな……男性に肌を晒すのなんて、これが初めてで……。


「ルクレツィア!!!」


っ!! 坊ちゃん……。


見ればヴァレリオ様が、エンツォに肩を借りる形で向かって来ていた。


来ないでください。


胸の中で必死に訴える。

だけど、痛んでいるであろう足を邪魔だと言わんばかりに引き摺り、必死に前へ前へと進むお姿を見ていたら――胸がいっぱいになってしまって。


「僕にやらせてくれ」

「……御意」

「っ! ありがとう」


リッカルド様は、僅かも異を唱えることなく了承した。

ヴァレリオ様の思いを汲んでくださったのだろう。


笑顔で感謝するヴァレリオ様の横で、エンツォがぎょっと目を見開く。


「えぇ゛っ!? いいんすか、隊長!?」

「坊ちゃんの師匠(マエストロ)は、守ることに重きを置いておいででな。護衛対象、仲間、自身を守る剣術と共に、救術についても、大変熱心にご指導なさっているのだ」

「あ、それガチだったんすね」

()()()()()()。一緒にするな、このバカたれが」

「ははは~っ、すみませんしたッ!!」

「それじゃあ、まずは患部の圧迫止血から入ろう」

「よろしくお願い致します」


リッカルド様からの了承を得るなり、ヴァレリオ様は私の背中に(またが)った。


「痛いと思うけど……頑張ろうね」

「……はい。……あっ……!」


しゅるっと何かを解く音がした直後――私の肩に激痛が走った。




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