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支度部屋を出て続き部屋にいるはずのリンゼイ兄様がいらっしゃいません。
シルフィ様の方を向いても問いかけてみても、シルフィ様もリンゼイ兄様の居場所は知らないようで、横に首を振っていらっしゃいます。
『しょうがないナ。チョットここで待ってろ。探してくる。』
『わかりました。ここで待っております。』
シルフィ様がそっと部屋から出て行ったのを見送ります。手持無沙汰になった私は先ほどからきれいにしていただいている侍女さん達から聞いた話を反芻していました。
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「ハーミット副隊長、いえ、カレン様は私達、侍女の味方になってくれているんです。」
「時々、私たちだけでは解決できないことを相談させていただくと、大体のことは力になってくれるのです。」
「もちろん、全てきれいに解決なんて言うことはできませんが、必ずいい方向へ導いていただけるのです。」
「私たち侍女たちには独自のネットワークがあります。お仕えする方が気分良く過ごしていただけるように、問題などが起こらない様にするために『報告、連絡、対策』をするネットワークです。」
「そこで起きた問題を解決するのに手伝っていただくこともございます。これまで何人もの侍女を助けていただきました。」
大変なことを聞いてしまいましたが、私が聞いてもいい話なのでしょうか。
「私がこのことを利用して悪事を働くとは思いませんの?」
すると侍女さん達は顔を見合わせてにっこりと笑いあいました。
「やっぱり。カレン様の言うとおりの方ですわ。」
「本当に悪用する方はそのようなことをお聞きになりません。それにこのことは城勤めのものならば開示されている情報ですもの。悪用なさるのならそれなりの覚悟が必要ですわ。」
そうでしたか。雰囲気からして何か巻き込まれてしまうのかと思いましたわ。ほら、物語本などですとここから陰謀に巻き込まれていくのですわ。
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そのような話を先ほど侍女さん達としたせいかしら。ハーミット様とお話しするのがちょっと気が楽になりました。リンゼイ兄様もまだいらっしゃいませんし、シルフィ様も探しに行ったまま戻りません。
まだ時間があるようならば少し先ほどの侍女さん達とお話を、と思いましたが、ほかのご令嬢のお世話に入ってしまったようです。
目の前の問題が少しですがすっきりとしたおかげか、緊張していた体の力が少し抜けました。知らず知らずのうちに力が入っていたせいか、体が少し重いです。ちょっと体を動かしたい気分になりましたが、ここは王宮の支度部屋です。運動なんてするわけにもいかず・・・。
そうだわ!支度部屋から夜会の会場まで、廊下に飾ってあった素晴らしい芸術品を見ながら夜会の会場に戻るのはどうかしら?
どうせリンゼイ兄様は会場にいるわけですし、シルフィ様も会場にいらっしゃるはずです。二人に近づくのなら問題はないはずです。名案ですわ!
いい気分で支度部屋を退室して、先ほど通った廊下を会場の方に進んでいきます。もちろんとても素敵な芸術品をじっくりと観察することは忘れません。
あまりにもじっくり観察しすぎて真後ろに人が来た事に気付きませんでした。
ドンッ
「ああっ、これは失礼いたしました。」
急いでぶつかった方に謝罪をします。
「わたくし、こちらの作品を見ていて貴方様に気付きませんでした。大変失礼いたしました。」
「・・・。お前がリリアン=フリューゲルスか?」
しわがれた低い声が私の名を言いました。これはひょっとして高位の方にぶつかってしまったのでしょうか。ちょっとピンチかもしれません。何とか謝罪の礼をしたまま頭を下げます。
「はい。名乗らずに申し訳ありませんでした。わたくし、フリューゲルス家第三子リリアンでございます。ぶつかってしまい・・・。」
「よい。これ以上の謝罪は無用だ。」
ああ、よかったです。どうやら許していただけたようです。
許していただけてほっとしたのと、失礼が無いようにと顔を真っすぐに上げてぶつかった相手の顔を見ます。そしてお礼の気持ちを込めてにっこりと全力でお礼を言います。
「ありがとうございます。」
顔を上げて見上げた顔はまるで獅子みたいな髪色と髪型の方でした。どこかで見たことあるな、なんて思ったのもつかの間。獅子さんは顎を少し横に振ると、くるりと踵を返して歩き出しました。
「失礼いたします。」
いつの間にか真横に騎士様が立っていらっしゃいました。一言私に声を掛けると、ひょいっと持ち上げられてしまいました。
「な、なに?」
「お静かに願いたい。決して悪いようには致しませんので。」
抗議の声を上げようとしましたが、冷静に低く出された声には殺気がこもっているようで何も言えなくなってしまいました。
「・・・。」
そのまま王宮のどこかにある部屋に連れていかれてしまいました。




