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やや緊張しながら階段を上ると一気に視界が開き、目の前に豪奢な装飾がなされたホールの入り口が現れました。
小さい頃に2,3回ほどお父様にくっついて登城したことがあったようですが、あまりにも小さい頃ですので全く覚えていません。お父様やお兄様たちに話は聞いていましたが、やはり話に聞くのと実際に感じるのとは違いますね。
物珍し気にきょろきょろしないように首をゆっくりと回しながら周りの観察をします。
あら?あれはなにかしら。あ!あちらに置かれている花瓶のお花とてもきれいです。あちらに飾られている絵の色合いがとても素敵です。はあ、素晴らしいものばかり。流石王宮ですわ。
「おいリリアン、装飾品ばかり見ないできちんと挨拶しなきゃだめだぞ。」
「あ、ごめんなさい。あんまり素敵な物ばかりで夢見心地になってしまいました。それにしても素晴らしいです。ぜひ近くで見てみたいです。」
うっとりしているままリンゼイ兄様の方を見ると、しょうがないな、と、苦笑を浮かべています。
その時なんだか会場がざわっとしましたが何かあったのでしょうか。
「なんだか騒がしいですわね。リンゼ・・・リンディー。何かあったのでしょうか?」
「さあ?大方素敵な紳士と淑女でも現れたんじゃね?」
危ないです。リンゼイ兄様って言いそうになりました。間違ってしまった瞬間に意地悪そうに笑う目を見てしまいました。これは間違えたら痛い目に合うパターンですね。気を付けなければ。
それに、素敵な紳士と淑女をぜひ見たいですわ。佇まいや仕草など勉強して吸収して帰りたいです。
「なんか変な方向にスイッチ入ったな。じゃあ、壁際にいるのをやめて少し真ん中の方に行けばいいよ。人酔いしない程度に挨拶するぞ。」
「はい。」
ひょいっと胸の前に出されたリンゼイ兄様の手に自分の手を重ねます。そのままリンゼイ兄様と寄り添って挨拶まわりに出かけます。なんだか私とリンゼイ兄様だけ挨拶がいつまでも終わらないのはなぜでしょう。
『リリー。なんだか周りの人間はリリー達に興味があるみたいダ。』
『ああ、リンゼイ兄様が素敵ですし、仕方ありませんね。』
『ん? コンナノが人間から見ると素敵なのか? 人間はわからん。』
ちょっとひどい言い方をしていますが、シルフィ様の長いお耳が赤くてピコピコうごいています。ちょっと素直じゃないですが相当リンゼイ兄様を気に入ってらっしゃるんですね。
自分の好きな人たちがお互いを好きになってくれるなんて、とてもうれしいことだわ、と、リンゼイ兄様の肩の上に乗っているシルフィ様に向かって笑いかけていると、とまたもやひそひそ声が聞こえます。
なんとなく落ち着かない雰囲気になってきたのでどうしたらよいかとリンゼイ兄様を見上げてみると・・・びっくりです。
「お久しぶりです、伯爵。この間は大変お世話になりました。おかげでとても助かりました。」
「いやいや、孫娘に助けてやるようにせがまれてな。もちろん私は私で君のことを買ってるからな、おねだりがなくてもてをかしたぞ。ところでどうだ?うちの孫娘はかわいいだろ? 婿に来ないか?」
「御冗談が過ぎますよ、伯爵。それにミリー嬢はまだ6歳ですよ、こんな男に嫁がせるなんてもったいないです。それに私には大事なお姫様がいますので。」
「いやー、はっはっは。年の差なんてどうにでもなるだろう。それに決まった相手もいないらしいじゃないか。しかし、・・・そうか、大事な姫か。若さというものはいいものじゃのう。」
「ご歓談中、失礼します。」
「ああ、これはこれは・・・。それではじいは引っ込みますかな。」
「ミリー嬢に、奥様によろしくお伝えくださいませ。」
「ああ、儂は本気だからな。また今度口説きに行くぞ。」
いつもの面白い、いい加減な感じの兄様ではなくて、なんだかちゃんと貴族の子息になっています。しかもだいぶん年下ですが求婚までされていますよ。
リンゼイ兄様を客観的に見てみると、落ち着いた色合いの赤髪で精悍な顔立ち。仕事柄鍛えているので強いですし、引き締まってバランスのいい体格はとてもきれいです。顔は、おそらく整っている方で、私と同じ釣り目ですがいたずらっ子のように生き生き、キラキラしています。女性の扱いもうまいですし、もしかしなくてもモテる要素がたくさんあるのではないでしょうか。ここらへんで一回女性に向けてニッコリ笑いかけたらすぐに婚約者ができてしまいそうです。
「リンディーはいいですね。もてもての予感がしますもの。」
「ええー。いや、俺はただ一人の人にモテてーの。万人にモテても俺の愛は薄くできないの。それに俺の手は二本しかねえし、抱えられるのにも限度があるんだよ。」
リンゼイ兄様! 私と違ってちゃんと考えていたのですね。今までいい加減、とか、チャラ騎士とか思っていてごめんなさい。
「おい、リリアン。ちとひどくね?まあ、わかってくれればいいんだ。」
そう言ったリンゼイ兄様は周りにいる、たくさんの人の前で私の手を取って言いました。
「だから、俺の愛はリリアンにだけ。お前にだけ注ぎたいんだ。」




