第4話:ホームセンターのレプリカ剣とワークウェアで、初陣無双
翌朝。二人は近所の河川敷近くに突如出現した『Fランク:多摩川ダンジョン』の前にいた。
周囲には駆け出しの若い探索者たちが神妙な面持ちで集まっている。
そんな中、55歳のおじさんと、スタイル抜群の30代美女という二人の組み合わせは、どう見ても浮いていた。
「島崎さん……本当にこの服と刀で大丈夫なんですか?」
葵が少し恥ずかしそうに自分の身体を見下ろす。
彼女が身にまとっているのは、昨日島崎がホームセンターとアウトドアショップで買い揃えた『レディース用ワークジャケット』と『伸縮性ライダースパンツ』。
そして腰には、ミリタリーショップで購入した二万円の練習用模造刀(カーボン鋼製)が差してあった。
もちろん、ただの市販品ではない。
島崎が昨夜、徹夜で『システム錬金術』のリファクタリングを施した特注品だ。
Plaintext
Class: Aoi_Special_Suit {
Defence: 9999;
Weight: 0.1kg;
Function: Auto_Fit(), Temperature_Control(), Kinetic_Absorb();
}
「心配するな。その服は『衝撃完全吸収(Kinetic Absorb)』のコードが入っている。大型トラックに跳ね飛ばされても痛くも痒くもない。……それと『Auto_Fit』の関数も組んであるからな」
「きゃっ!?」
島崎が指を鳴らすと、葵のウェアがキュッと音を立てて彼女の身体のラインに完璧にフィットした。
豊満な胸のカーブから、引き締まったウエスト、しなやかな太もものラインが鮮明に浮かび上がる。
「う、うわ……! ピッタリ吸い付くみたいで……すごく動きやすいですけど、ちょっと胸元が強調されすぎて恥ずかしいです……っ」
顔を赤くしながら胸元を手で隠す葵。
吸い付くような生地越しに見える大人のしなやかなプロポーションに、島崎も思わずドクンと胸が高鳴るのを隠して、コホンと咳払いをした。
「む、見た目以上に防御性能は絶対だ。それと、その模造刀を引き抜いてみろ」
葵がコクリと頷き、柄に手をかけて一気に刀を抜いた。
ジャキン――ッ!
鈍い銀色だったはずの刀身が、青白い粒子を纏い、まるでレーザー光線のように透き通った美しさを放つ。
「重量は『ほぼゼロ』にしてある。切れ味は俺のサバイバルナイフと同等……いや、お前用にリーチを伸ばした分、破壊力は上だ」
「すごいです……まるで重さを感じません。羽を持っているみたい……!」
「よし、テスト戦闘開始だ。入るぞ」
二人は暗く湿ったダンジョンの洞窟内へと足を踏み入れた。
――ガァァァッ!!
入ってすぐの広場で、Fランクダンジョンの主産物である『ゴブリン』の群れが五体、棍棒を振り上げて襲いかかってきた。
「島崎さんは下がっていてください! 私がやります!」
葵が前に出る。
長年の護身術と剣道の経験に、島崎のチート装備が組み合わさった瞬間だった。
踏み込み一歩。
葵の姿が、残像を残して視界から消えた。
「ハッ――!」
閃光のような一閃。
重さを感じない刀が、空気抵抗すら置き去りにして空間を切り裂く。
シュンッ、シュンッ、シュンッ――!
「ガ……!?」
ゴブリンたちが何が起きたかも理解できないまま、五体同時に胴体から真っ二つに泣き別れ、青い光の粒子となって消滅した。
かかった時間は、わずか一秒。
「……嘘……私、今、刀をひと振りしただけで……?」
葵自身が、自分の手元を見て呆然としている。
「完璧だな。バグも遅延もない。お前の素早い踏み込みと、質量ゼロの刀の相性は抜群だ」
島崎が後ろから近づき、満足げに頷く。
「島崎さん……っ!」
興奮に頬を紅潮させた葵がパッと振り返り、勢い余って島崎の胸に飛び込んできた。
「うおっ!?」
身体に吸い付くチートウェア越しに、葵の豊満で柔らかい胸の感触と、激しい鼓動、そして運動直後のほてった甘い体温がダイレクトに島崎の全身に伝わる。
「やりました! 私、戦えます! 島崎さんの作ったこの装備があれば、私、どこまででも行けます……!」
上気した瞳で島崎を見上げる葵。二人の距離は、吐息が触れ合うほどに近かった。
「あ……す、すみません、また抱きついちゃって……」
「い、いや……無事で何よりだ。よし、このままFランクダンジョンを最深部まで即死クリア(スピード攻略)するぞ」
「はいっ!」
こうして、二人のチート性能を確かめるための「テスト攻略」は、周囲の探索者たちが絶句するほどの圧倒的無双劇へと変貌していくのだった。




