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第13話:Sランクボスの氷龍と、快適荷台の遠隔砲撃

標高二千メートルを超えた『氷狼の霊峰』の山頂付近。

吹雪の壁を突き破った先に現れたのは、巨大な氷の結晶で覆われた、幻想的かつ不気味な大氷窟だった。


その最奥の祭壇で、青白い巨体を休めていた大悪魔が、不快そうにその重い瞼を開く。


――Sランクボス『氷霜の竜王(フロスト・ドラゴン)』。


全身がダイヤモンドよりも硬い永久氷結の鱗で覆われ、その吐息ひとつで広範囲の空間を絶対零度へと変える、まさに災害級の魔物だ。

かつて挑戦した数々のAランク・Sランク探索者パーティーを、死の氷漬けにして葬り去ってきたダンジョンの主である。


その氷龍の巨大な瞳が捉えたのは、侵入者の猛者……ではなく。


ピカピカに磨き上げられ、静かにアイドリング音を響かせる【白い軽トラック】だった。


「ふう、ココアごちそうさま、葵。やっぱり温かいものはいいな」


「いえいえ! 島崎さん、見てください。奥にすごく大きなドラゴンがいますよ!」


車内では、28度に設定されたぽかぽかの暖気の中、島崎と葵がマグカップをダッシュボードに置いたところだった。

上着を脱いでリラックスした状態の二人は、目の前で山のように立ちはだかる氷龍を見上げても、一切の動揺を見せない。


グルオオオオオオオオンッ!!


己の領域を侵された竜王が怒りに打ち震え、大気を震わせる咆哮を上げた。

開かれた巨大な顎から、あらゆる命を凍てつかせる白銀のブレス――『絶対零度(アブソリュート・ゼロ)』が、猛烈な濁流となって軽トラを目がけて放たれる!


「なっ……空間ごと凍りついてますよ!?」


「焦るな葵。今回のアップグレードで取りつけた新装備の試運転にちょうどいい」


島崎は慌てることなく、ルーフ近くの追加パネルのスイッチをポチッと押し込んだ。


『――システム起動:Roof_Carrier_Module』

『――属性相殺コード展開:Thermal_Output = 10,000°C』

『――自動照準(オートエイム):Lock_On_Target』


軽トラの屋根に取りつけられた一見ただのオシャレなルーフボックスが、重厚な音を立てて展開。

中から現れたのは、青い魔力光を放つ二連装の【遠隔魔導ルーフキャノン】だった。


ドガァァァァンッ!!


キャノン砲から解き放たれた真紅の超高熱超振動レーザーが、氷龍の放った絶対零度ブレスと真っ向から激突。

一瞬でブレスを蒸発させ、そのまま氷龍の胸元を容赦なく撃ち抜いた。


「グアァァァッ!?」


自慢のブレスを呆気なくかき消され、胸の硬化鱗を砕かれた竜王が悲鳴を上げて体勢を崩す。


「よし、氷結防御コードの解凍・弱体化完了だ。葵、仕上げに行ってこい」


「はいっ、島崎さん! 行ってきます!」


軽トラの荷台の自動ドアが開き、葵がしなやかに飛び出した。

暖かな車内から飛び出した葵の身に、極寒の外気が襲いかかる……はずだったが、彼女の身体は軽トラのバリアフィールドから付与された暖かな魔力膜で包まれていた。


「――『寒冷適応・閃光突き』!」


青い光の残像を残し、葵の一閃が弱体化した竜王の首元を真一文字に一破する。


ズバァァァァンッ!!


永久氷結の巨躯が、まるで薄い氷の細工のように美しく粉々に砕け散り、光の粒子となって氷窟全体に舞い散った。

Sランクダンジョンの最凶ボスが、戦闘開始からわずか三十秒で討伐された瞬間だった。


「ふう……お見事。素晴らしいキレだったぞ、葵」


「島崎さんのキャノン砲のサポートのおかげですよ! 全自動で弱点を撃ち抜いてくれるなんて、本当にすごいです!」


葵が軽トラの荷台に跳び乗り、嬉しそうに島崎に笑顔を向ける。


そして、竜王が消え去った祭壇の奥には、氷の台座に鎮座する眩いばかりの【古代の超レア宝箱】が残されていた。


「これは……『古代魔導文明の遺物』か?」


島崎が宝箱を開けると、中から溢れ出出たのは眩い黄金の光と、握りこぶしほどの大きさがある蒼く輝く結晶――『古代魔導永久機関エンジン核』だった。


「す、すごいです島崎さん! これ、教科書でしか見たことがない伝説の秘宝ですよ!?」


「ほう……永久機関、か。……これがあれば、燃料補給すら不要になるな。さらに『空中浮遊(フライト)コード』の組み込みも可能になるかもしれん」


島崎の目が、エンジニアとしての探究心でギラリと光った。


「空中浮風……!? 島崎さん、それってつまり……」


「ああ。この軽トラが、空を飛ぶようになるということだ」


「きゃーっ! 空飛ぶ軽トラですか!? すごすぎます!」


葵が跳び上がって喜び、無邪気に島崎の首に抱きついた。

柔らかい感触と良い香りが胸元に飛び込んできて、島崎は思わずドギマギしながら苦笑いを浮かべた。


「おいおい、葵、車が揺れる……」


「ふふ、だって嬉しくって! 島崎さんと一緒なら、世界中どこへでも行けちゃいますね!」


超レア宝箱の素材をたっぷり荷台に積み込み、二人は再び快適な暖房が効いた軽トラへと乗り込んだ。


極寒のSランクダンジョンを跡形もなく攻略し、さらなる「空飛ぶ神進化」の鍵を手に入れた一台の軽トラは、意気揚々と麓のキャンプ地へと引き返していくのだった――。

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