12天将祭り
連続投稿19日目!
8月12日 11時頃 安部家邸宅
「めんどくせー!祭りなんてやらずに訓練しようぜ。レイ」
「いや、流石にダメだろ」
刃の愚痴に俺は、そう諌めるように言った。
養子となって瞬く間に時間が過ぎ、すでに8月となった。
夏場の暑さも最高潮となり、うだるような暑さが続いている。
俺を含めた刃、美桜、エリーナ、メシアの5人は、安部家で代々行われてきた12天将祭りの準備を手伝っていた。
「バカなの?メシアとリーナはともかく、安部家の私とレイ。それと12家であるアンタが祭りをサボれる訳ないでしょ」
「そうよ。手伝ってあげてるんだから文句を言わずにやりなさい」
「刃くん、やらないとお姉さんに怒られますよ〜」
エリーナ達少女3人は、安部家の廊下で祭りで使う小道具を持ちながら、愚痴を言った刃に声援という罵声を送っていた。
「んなの分かってんだよ。けど俺たち決めただろ?5人で世界一のハンターになるって!」
刃は愚痴を完璧に論破されて不貞腐れながらも、5人で決めたある約束を話に出した。
「いくらなんでも、時期が早えー」
「そうよ。バカ」
レイは時期尚早と言い、美桜はそれに同意して呆れながら貶した。
「そう言うのは、一歩ずつ進もうって皆んなと話したじゃない」
「そうですよー刃くん。まずは目の前の祭りからです!」
エリーナは、愚痴に対して真面目に答え、メシアは、庭の外で出ている屋台飯の匂いに惹かれ目を輝かせながら言った。
今日は8月12日、12天将祭りの当日だ。
祭りはすでに始まっており、外では一般人やハンターなど多くの人が祭りを楽しんでいる。
12天将祭りとは、その名の通り安部家に仕えているとされている12の式神・12天将を祭るための催しだ。
祭りの内容は、安部家の知人やハンター、一般客を呼び込み、次代の安部家や12家の次世代の子供達の紹介。
つまる所、日本一のハンタークランとしての威厳や能力を自負するための祭りである。
俺たちも祭りを楽しんでいたのだが、清隆さんに小道具を運ぶのをお願いされ今に至る。
『なんで子供である俺たちが?』と思ったが、警備やら屋台の運営などで人手を動かすのがめんどくさいため、この後、衣装替えをする俺達5人に白羽の矢が立ったという訳だ。
12天将祭りの1番の目玉と言えるのが次世代の紹介だ。
美桜や刃は伝統的な衣装に着替えるし、養子である俺や、名家の出身であるメシアやエリーナも当然、それに合う衣装に着替える。
「あの衣装、動きにくいから嫌なのよねー」
「似合ってるからいいじゃない」
「そうです!あの姿の美桜ちゃんとてもキレイでした!」
「そうなのか。俺、衣装見てないから楽しみだな」
「特訓してー!」
5人は仲慎ましく話ており、少しすると目的の場所へと着いた。
そこは、安部家の部屋の中でも一段と広い和室だった。
和室の広さは、50人ほど人が入る事が可能な程広く、その奥には、部屋の中で一層目立つ祭壇。
この場所こそ、12天将祭りで安部家を含む13の家の長が普段集まり、会合を行う部屋である。
だがその広い部屋は、色々な物で一杯になっており、多くの人がせっせと準備をしていた。
祭り自体は、10時ごろに始まるのだが13の家の長が集まり本題の催しが行われるのは16時頃。
それまで、祭りの警護と並行しながら準備をしているという訳だ。
「お父様に言われていた物、持ってきたよー」
俺たち5人が部屋に着くと、清隆さんに頼まれた事を美桜が伝える。
美桜の声によって、部屋の中にいた人達が全員作業を中断してお辞儀をする。
しかし、美桜に薄い髪色に金色の眼をした美女が近づいていくと他の人達は作業をやり始めた。
「ありがとうございます。お嬢様」
その人物は、強さと美しさを両方内包したかのような人物だった。
美しいラインの体躯や姿勢から麗しい女性と見えるが気配は正しく成熟した虎。
そんな存在感を感させる女性は”白虎院家 現当主 白虎院 月姫”である。
「月姫さんは、まだ衣装に着替えていないんですか?」
「ええ、私はああいう衣装は苦手なのでギリギリまで普段着で過ごしております」
「確かに、いつも月姫さんは、派手な衣装だったものね」
祭りなのにも関わらず普段と変わらない服装を見て、メシアとエリーナが月姫さんに話しかけた。
「特訓してー!」
「お前、それしか言わねーのか・・」
「安心しろ二人共。祭りが終わったら訓練に付き合ってやる」
「よっしゃー!!」
『なんか俺、いつの間にか入れたれてね?』
俺たちが持っていた荷物は、話している間に他の人が来て、受け取ってくれていた。
「荷物は受け取りましたので衣装に着替えましょうか。刃と美桜様はこっちへ、他の3人はクロエ。」
「はい。月姫様」
月姫さんが名前を呼ぶと黒い髪をした侍女が足音なく忍び寄るように来た。
「エリーナ様とメシア様、レイの衣装が置かれている部屋まで案内してくれ」
「かしこまりました。では、御三方はこちらへ」
「じゃあ、着替えた後にまた会いましょう」
「あれ着るの嫌なんだよなー」
「ええ。美桜の衣装楽しみにしてるわ」
「私たちの衣装も楽しみですね。レイさん」
「ああ、そうだな。じゃあ行こうか」
そう言って俺たちは後で会う約束をして、美桜と刃は月姫さんへ俺を含めた3人はクロエさんに着いていった。
「そういえば、どうしてレイさんは美桜ちゃん達と一緒に着替えないんですか?」
4人で廊下を歩いていく中、メシアが俺に話しかけてきた。
「俺は清隆さんの息子になって美桜の姉弟になったけど、安部家の継承権は無いんだよ。だから、扱いとしては分家っていう事になる訳」
「なるほど〜」
「養子って、めんどくさいわね」
「まぁ、清隆さんとか月姫さんが良くしてくれてるから満足だけどな」
そのまま廊下を3人で雑談しながら歩いていく。
かれこれ数分ほど歩いており、”そんなに遠いのか?”と思いながらも安部家は広いため気にせずクロエさんに着いていく。
「マスターお話が・・・」
『ん?何だ?』
しかし、アルファは俺の考えとは違っていた。
「部屋を出てから段々と人が少なくなっており、先ほどからは全く人を見かけていません」
『!?』
俺はアルファの話を聞いて、驚き歩くのをやめてしまう。
「どうしたんですか?レイさん」
「レイ。ぼーっとしてないで行くわよ」
「・・・・」
エリーナとメシアが話し掛けるが俺は考えるのに夢中で反応しなかった。
『どういう事だ。アルファ』
「わかりません。しかし祭りの状態で人が全く居ないというのはおかしいです」
『だろうな。12天将祭りは一般客も参加する夏祭りだ。当然、警護なども厳しくなる。ここまで人がガラガラになるのはおかしい。それに、メシアとエリーナを守る人達の気配も感じない』
「レイ、レイってば!」
「おお、エリーナ」
「大丈夫ですか?」
アルファと話すのに夢中になっていると、2人から呼ばれて思考を中断する。
「ああ、大丈夫だ」
「マスター、一度人が多い所へ戻るべきかと」
『わかった』
俺はアルファの考えに同意した。
「なぁ、一旦ちょっと戻らないか?」
「何でよ?」
「そうですよレイさん。もう少しで着くのに」
「もう少しの辛抱ですので。レイ様」
他の3人は、唐突な俺の考えに疑問を抱く。
「じ、実は、月姫さんにどうしても伝えたい事があったんだ。・・だからちょっと戻ろうぜ!」
3人とは違いアルファの考えや自分の勘の危険信号を感じて、メシアとエリーナの手を引っ張り来た廊下を戻ろうとする。
「これだから、ガキは嫌いなのよ」
クロエさんがいる方向から今まで聞いた事のない声を聞いて3人がそちらを向く。
「「「!?」」」
3人は、クロエさんを振り返り顔を見て同時に驚いた。
理由は、目の前の女性が立ったまま表情が虚だったからだ。
「それで、どうやって気付いたのかな〜坊や」
驚いていると2度目の衝撃を感じた。先ほどと同じ声が聞こえたからだ。しかし、クロエさんは虚な表情なままで喋っておらず、クロエさんというよりクロエさんの周りの空間から声が聞こえたように感じた。
「あんた、何者だ!」
俺は2度目の声を聞いて、言葉を発したのがクロエさんでは無いと断定する。
「レイさん!」
「どういう事!?」
メシアとエリーナは未だ現状が把握できておらず、エリーナは俺の前にメシアは後ろにいた。
すると目の前に黒い塊のようなものが空中に浮かび上がる。
その塊は、少しずつ大きくなりある程度の大きさになるとモヤのようになりそこから人が現れた・・・。
特徴は、白と黒が混ざった髪と、小さい顔にそれと同じくらいの多きさのグレイトな胸を持つ女性。
しかし、その存在は人間のような肌色の肌をしていたが、蝙蝠のような羽と頭に黒いツノが生えている。
人間とは思えない美しさを持つ正しく悪魔と言える姿をしていた。




