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転生したら違う世界だった件 魔女とダンジョンの運命の星(アルカナム・スター)  作者: 正体不明
安部家編

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18/27

安部家の日常 メシア・ダルク

連続投稿18日目!

安倍家に養子となり、前の自分では考えられないほど幸せな時間が過ぎていった。

三十を過ぎて思うように動けなくなった体と違う、矮小ながらも健康で生命力あふれる肉体。

アルファの仮想世界で得た技術と転生によって手に入れたスキルによる能力は、日本一のハンター”一族”安倍家において神童と称されるほど。


「だけど、不安が無いって訳でも無いんだよな」

夏の太陽が燦々と煌めく中、レイは心の中にあるほんの小さな不安を感じながら空を見て呟いた。


『アテネスが言っていた事の矛盾。ジョブとダンジョン、7人の魔女。分からない事だらけだ・・・』

レイは、この世界に来てから感じていた不安を脳裏に回想として思い出していた。


女神”アテネス・シャイニング”が言っていた前の世界と似ている並行世界に転生させるという話の矛盾。

そして、その世界が全く別の世界という訳でもなく、自身の存在があって、その上で世界などの歴史としてもほぼ同じ。違いがあるとすれば、架空の物語などで出てくるジョブや魔法、スキルなどが実在しており、それが当たり前の世界として発展していると言う事。


『アルファ、本当にお前何も知らないのか?』

俺は、女神からもらったスキルであるアルファに心の声で聞いた。

「申し訳ございません。マスターに有益なお話は把握しておりません。それに私は女神”アテネス・シャイニング”と会った事もありませんから」

丸い球体の形をした機械であるアルファは、人間に近い声ながらも、俺だけしか聞く事が出来ない声を無機質な機械的な声で言った。


「それが驚きだよな〜。まさか何も知らないとは・・」

アルファは女神とあった事が無いと言うのは、この世界に来て一番の予想外と言ってもいいだろう。

女神から自分が生まれて、俺をサポートするという使命は俺との初対面の時にすでにあったそうだが、アルファ自身もこの世界と俺がいた世界は同じだとう言う事しか知らなかった。


「となると可能性としてあるのは、”手違いか”、”何かしらの異常事態”って言う事になるのか」

自身の思考に夢中になる中、唐突に背後から可愛らしい声が聞こえた。

「手違い?、異常事態?、、レイさんは何の話をしているんですか?」

「うぉ!びっくりしたー!」

俺は、その少女に気づかず思わず”ビクッ”と反応して振り返った。


「って、メシアじゃねーか」

「レイさん、あーそびーましょー」

声の元である少女の名前を呼ぶと、金髪に青い眼をした可愛らしい少女は、ひまわりのような明るい笑顔でそう言った。


『てか、アルファ気づいてたろ。言えや!』

「別に言わなくてもよろしいかと思いました。申し訳ございません」

普段よりもさらに無機質で棒読みの言葉に”わざとだな”と思いながらも今は、少女の相手を優先にした。


少女の名前は、メシア・ダルク。

”慈悲”と”守護”、”癒し”と”光”の4つを象徴とする光典(こうてん)教会の4人の聖女の一人である。


光典教会はこの世界において最も多い信者を要する国際的な宗教である。

この世界には、俺がいた世界と同様に多くの宗教が存在していたらしい。

だがダンジョンが現れ世界は混乱の渦となり、ほとんどの宗教が壊滅的なまでに減ってしまった。


各地にできた異界へと繋がるゲートから生まれるモンスターや突如ジョブに覚醒した者達により暴動。

各国は、公的秩序を維持できずに混迷を極めた。

そして、それを収めたのが現在ハンターを統括する一大組織、ハンター協会の前身である。


その前身の組織には、4人のジョブに覚醒した少女が居たという。彼女らは、一介のジョブとは一線を画すほどの正しく奇跡と呼べる力で暴動を鎮圧し、国境を超えて秩序を蘇らせていった。


そしてついに、それらの行動によって世界に秩序が戻り、組織は二分する事となった。

ジョブに覚醒した者達で徒党を組み、犯罪者やモンスターに対応しようとする”ハンター協会”へ

もう一方は、救われた者達が4人の聖女の教えを忘れず、あの頃の過酷さや残酷さを忘れぬよう聖女の教えを布教しつなげる”光典教会”へと分かれていく。


そうして、聖女4人も協力し世界最大の宗教となるも、ある日とてつもない悲劇が起きてしまった。

それは、世界を救う事に多大な貢献をした4人の聖女が()()()()()()()()()()()()()()()


国際的な宗教になったばかりだった事や、まだ国が完全に治安を取り戻せて居なかったという背景もあったそうだが

その事件は、国境を超えて波紋を呼び、ダンジョンが出来て以来の世紀の大事件として歴史になっているほど。


だが、その波紋はすぐに収束する事となった。

理由は、4人の聖女が殺された後、間も無くして新しく4人の聖女が現れたからだ。

教団は聖女の安全面から聖女として外で活動する際は、隠蔽効果の服やアイテムを身につけさせ、素性が解らないよう徹底的に4人の聖女の安全を守ることに注力した。

その後も年を重ねるごとに新しい聖女が現れ、聖女として教団の責務を全うしてきた。


場面は現実へと戻りレイは、金髪の美しい少女に話しかける。

「メシア、なんでここにいるんだよ。美桜やエリーナ達と稽古してたんじゃ無いのか?」

「私は見学でしたので、途中で抜けてきました」

少女は無邪気な笑顔でそう言った。


ではなぜ、その聖女が今、安倍家にいて、その上、機密と言える素性を俺が知っているのか?

それは、単純に家同士の繋がりだ。

安倍家とペンドラゴン家、ダルク家は、親がハンター同士の友人であるため、メシアもエリーナと同様に安全がある程度確保されている安倍家に遊びに来ている。


そして、素性を知っている理由は聖女の認定方法にある。

聖女の認定方法は、ジョブが聖女である事のみである日突然、聖女のジョブに覚醒する。


その覚醒は教会の方で、おおよそ信託のような感じで知らされるらしく、覚醒して間も無くして教団が聖女を探しにくる。


聖女を見つけると教会は、その家族に契約書という形の約定をするらしい。

大まかな内容として基本的に好きに生活してもらい、その上で聖女としての勉強や活動をして貰うとの事。

そのため、聖女としての活動も偶に教会に勉強会をしに行くだけで、ガチガチに拘束される訳ではない。


契約として聖女の人権を尊重するために、機密である素性も家族や教団がある程度信じられる相手ならば、説明しても良い事になっている。だから安倍家の養子である俺にもメシアの素性を知る事が出来ている。



「だから、レイさん遊びましょ!」

「いや、俺、今日稽古休みで一人で過ごそうと思ってたんだけど・・・」

「一人で過ごすのなんていつでも出来るじゃないですか!私と過ごせる時間は、いつでもじゃないんですよ!」

「いや、けど夏祭りが終わってからも滞在するから3週間くらいあるじゃん」

「たったの3週間しかないじゃないですか!」


正直、今日は一人で色々と考え事をしたかったのだが、目の前の少女はそれを許してくれない。


「妙に懐かれてしまいましたね」

それを見ていたアルファは、少し困っている主にそう言った。


『しかし謎だ。なんでこんなに懐かれたんだっけ?』

少年は聖女ではない、ただのメシア・ダルクとの出会いを思い出す。


▶︎▶︎▶︎▶︎


メシアと最初に会ったのは、安倍家の養子になって1ヶ月経った5月の事だった。


「レイ、この子メシア・ダルクって言うの。私の友達よ」

「俺は、安倍零レイ。よろしく」

「・・・・・」

ある日安倍家の廊下で美桜にメシアを紹介されて俺も自分の名前を言った。

しかしメシアは、美桜の背中にしがみついて黙ったままだった。


「メシア。レイなら大丈夫だから挨拶して。ってちょっとぉ!」

それを見かねた美桜はどうにかしようと自身の背で黙っているメシアを前に出させようするが、途端にメシアは廊下を下を向いて走って逃げていった。メシアとの最初の出会いは、そんな感じで終わった。


「あ、おはよう」

「(コク)」

その後も何度か遭遇して挨拶をするがメシアは目を合わせず頷きだけして通り過ぎていく。

6月ごろになるとエリーナが安倍家に遊びに来て、稽古でボコボコにした。だが何故かそれで仲良くなってしまい、メシアよりも遅く知り合ったエリーナの方が仲良くなっていた。その時もまだメシアには避けられていた。


「なぁ、美桜。俺なんかメシアちゃんに何かしたかな?」

ここまで避けられると自分が悪いのではないかと思い美桜に相談をした。

「気にしなくていいわ。メシアってちょっとシャイなだけだから」

だが、美桜はそれだけ言って真面目に取り合おうとしない。”じゃあ特段気にしなくてもいいか”と俺は思った。


だが時より刃とメシアが仲良さそうにしている事には納得いかなかった。

あのクソガキより俺の方が人相悪いのか?とアルファに聞いてみると『マスターは真顔が多いですから。シャイな人には怖い印象を与えるかもしれません」と言われ、鏡を見て笑顔の練習をしてみたが、とてつもなく気持ち悪かったのを覚えている。


そうして数日経って訓練を終えたあと、涼みに夜風をあたろうとベランダに出てみると庭で何かしているメシアを見かけた。庭にはメシア一人しかおらず、一人で笑っており、俺の方から見ると誰かに見られないように隠れているようにも見えた。

『なぁ、アルファ。メシアちゃんって何かしてるのか?』

「おそらくですが、妖精や精霊と遊んでいるのかと思います」

「精霊と妖精・・・」

気になりアルファに聞いてみると予想外の返答が返ってきた。


妖精や精霊は異界へと繋がるゲートから出現し、この世界に流れてきたモンスターと言える。

モンスターは相性や調教・テイムの技量で仲良くなれる事があるらしい。


その中でも精霊や妖精は特に珍しく、魔力がとても濃いゲートの中ならともかく、魔力がそこまで濃くない現実世界で見る事は難しい。もし見る事ができるのならそれは、誰かに召喚されたか、妖精や精霊を感じる見る能力を持っているかだ。メシアは後者だった。


「マスターも見たいと言う事でした見る事が可能ですがどういたしましょうか?」

「そんな事できるのか?」

「はい、スキル”神が与えし肉体”の適応により精霊や妖精を認識できるように出来ます」

「そんな使い方もできるのか。じゃあ、頼む」

「かしこまりました」


そうすると、視界が少し揺れるように感じた。揺れが治るとメシアの周りに数匹の動物型の精霊や羽がついた童話の中の姿形の妖精が見えた。金髪のキレイな少女と合わさり、とても幻想的な光景だった事を覚えている。


「こんな夜でお遊びとは、少し感心しないな」

「!?・・・ご、ごめんなさい」

「初めて喋ってくれたね」

俺が声をかけるとメシアは驚き、視線を合わせようとせず両手をもじもじさせていた。


「しかし、とても珍しい能力を持ってるんだね。精霊や妖精を見る能力とは・・」

「え!?、もしかして見えるんですか?」

「まぁね」

メシアはその時とても驚いており、その瞳には少しの興奮も宿っていた。


「もしかして精霊や妖精を見れる人って少ないの?」

「は、はい。同い年で見える人は初めて見ました。そういった適性がある美桜ちゃんでも何かいるとしてか分からないので・・・」

メシアの驚きようから気になり言葉をかけてみると返事をしてくれた。その時、初めて会話が成立したため心の中でガッツポーズしたのが記憶に残っている。


「うぉっ!」

メシアと話していると犬の姿をした精霊と羽が生えた妖精が俺の方へ飛び込んできた。

「あ!タロウ、バター。初対面の人に飛びかかっちゃダメ!ごめんなさい。見える人が珍しくて気になったんだと思います」

俺は飛びかかった精霊と妖精に押し倒される形で尻餅をつき、それを見ていたメシアが申し訳なさそうに精霊と妖精を俺から剥がしていった。

『てか、今思えば名前のセンスねーな』


「いつも妖精や精霊たちと遊んでるのか?」

「はい。私、妖精や精霊が見えるから変な子と思われてしまってて、美桜ちゃんやリーナちゃん、刃くんはそう言うの気にしないでくれてて・・・」

俺がそう聞くとメシアは寂しそうに、しかし少し嬉しそうにも言った。


「だから、レイさんにも変な子と思われるのが怖くて・・・」

「名前、覚えててくれたんだ」

「はい、、」

メシアはその時、申し訳なさそうに顔を下に向けて言った。

その光景が過去の嫌な自分と重なる。卑屈になり自分の考えている事すら喋れない自分に。

その姿を見て、俺は言わなくてもいい事をうっかりと口にしてしまっていた。



「俺は別にそういうの気にしなくていいと思うけどな〜」

「?・・何でですか?」

メシアは、俺の言葉気がなったのか初めて目を合わせる。

「どんな人であれ、どんなもの同士であれ、他者の事を真の意味で理解なんて出来ないと俺は思う。自分が理解していると思っていることは、ただ自分がそう感じていただけで、それが相手の考えている事と合っていることなんて少ない」


まるで過去の自分を語っているようで前いた世界の記憶が蘇る。


「だから、行動するしかないと思うんだ。その過程で起きた嫌な事も良いことも、成功も失敗も、自分を形作るもので、そうやって人は己を知っていくんだと思う」


本当に心からそう思う。今の自分は、過去の自分がやってきた事で出来た存在であるから今の自分がある。

だからこそ、前の世界に後悔はあっても惨めでもその結末を受け入れようとした。


「そ、その過程が辛く険しいものであってもですか?」

言葉に詰まりつつも少女は真剣に自身の考えを述べた。

「ああ、だって人が欲しいと手を伸ばすものは、その険しい道の先にあるんだから」

少女の質問にレイは、嫌『◾️◾️』は、少女にも自分にもそう言うかのように呟いた。


「確かにそうですね」

メシアは、今度こそちゃんと俺の目を見て会話の返事をする。

その表情は、少しだけ納得した顔のように思えた。


「俺も妖精や精霊と遊びたいんだけど、良いかな?」

「はい、もちろん!」


何故仲良くなったかはレイは理解していなかったがアルファは理解をしていた。

『マスターは、人の本質にしか興味がないのでしょう。だからこそ、人は自分を見てくれる人に好意を抱く』

アルファは、そう言って二人が仲良く喋っている光景を眺めていた。


回想は終わりまた現実へと戻る。

「そう言えば、聞きたかったんだけど聖女って代替わりするんだよな?メシアって何代目なの?」

俺は、メシアに少し疑問に思っていた事を聞いた。

「・・・レイさんは知らないんですね・・・」

俺の質問にメシアは、独り言を呟くかのように小声で呟く。

レイは聞き取れなかったがアルファは、その小さな声を聞き取っていた。

「え?なんか言った?」

「いえ、何でもないです!私は()()()の聖女ですね!」

「あ、そうなのか。まぁ、何代目とか知ってもあんまり意味ないな」

レイは、興味が無さそうに言う。


だが、このやり取りが後に思わぬ事件へと繋がる。

この場において、それはメシアしか知らず、アルファしかその矛盾に気づいていなかった。


またこれも、安部家で何の支障も無かった楽しく平和だった日常。



▶︎▶︎▶︎


日本・歌舞伎町・Bar  夕闇の酒場


暗い部屋におしゃれな照明の演出が効いた洋楽が流れるバーに、バーの店主と、黒と白の混ざった髪をツインテールにして黒のドレスを着た、小顔である顔よりも大きく綺麗な形の胸の若い女性が居た。


「マスター、ホワイト・レディを頂戴」

「かしこまりました・・」

女性は妖艶の笑みでカクテルを注文するとマスターはそれを作り始める。

「ホワイト・レディでございます」

「ありがとう」

女性は、ジンベースでキリッとした柑橘の酸味が効いた真っ白のカクテルを受け取り、口をつけて少しだけ飲む。


「美味しい・・」

「ありがとうございます」


二人が心地よい静寂の空間を楽しんでいる中、『カラン、カラン』入り口のベルが鳴る音がした。


「リリスちゃん。遅れてごめんね」

入り口から入ってきたのは、赤い髪に赤い目、赤い革ジャンに青のジーンズを履いた男だった。

「別にいいわ。あんたが時間通りに来るなんて期待してないから」

リリスと呼ばれた女性は呆れた目でそう答えた。


「マスター、いつものをお願い」

「あいよ」

マスターは、先ほどの女性とは違う常連客との会話のように返事をした。


「それで、依頼の方は何なの?」

「早くない?もうすこ・・」

「良いから早くして。あんたとあんま話したくないの」

男が軽薄そうに言う中、リリスという女性は不機嫌そうして話を進めた。


「ある少女を誘拐してきて欲しい」

「・・・」

男は茶色い封筒を机の上に置き、女性はそれを開いて確認する。


「!?あんた正気?イリーナ・ペンドラゴンを安倍家の夏祭りの時に誘拐しろですって?」

その内容は、荒唐無稽のものだった。世界でもトップクラスのセキュリティーを誇る安倍家で、その上、最近誘拐されたと噂のあるアーサー・ペンドラゴンの娘を攫う。間違いなくほとんどの者が達成できない依頼である。


「報酬はそれ相応のものを払うよ。欲しい情報やアイテムとか何でも」

「・・・・」

リリスという女性は悩んでいた。彼女にはどうしても欲しいものがある。そしてそれは、目の前の男やそれに属する組織ならば手に入れらる可能性がとてつもなく高いからだ。


「けど、流石に厳しすぎるわ」

「大丈夫。安部家は、侵入の方の対策に念を入れているタイプの結界が貼られてる。そして、それは未だ破られたことがないから警戒もしていない。他の誰かが無理でもリリスちゃんなら可能だよ」

「・・・・わかった受けるわ」

女性は熟考して依頼を受けることにした。


「へいお待ち。ハイパーデラックススーパーパフェ」

依頼が受理された直後に、ものすごいでかいグラスにパンパンに詰められたパフェが男の前に出される。

「リリスちゃんも食べる?」

「帰る」

男の言葉を無視して女性はドアの方へ行きカランカランとベルを鳴らしてバーから出ていった。


「釣れないなー」

男はそう言ってパフェを一人で食べ始める。



夏祭りまであと3日










金髪女の子いいよね!

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