安部家の日常 エリーナ・ペンドラゴン
連続投稿16日目!
安倍家に養子となり早4ヶ月が立とうとしている。
入学した小学校は、養子と共に自主退学となり、美桜や刃と同じ学校へ転校した。
安倍家で過ごすうちに季節は夏となり。
ジメジメとした暑さ、蝉の鳴き声や風鈴の音を聞いて、自分が本当に転生したのだと理解する。
「零〜!」
太陽の光の眩しさを感じながら、日課の剣の訓練を終えて休憩をしていると、後ろから鼓膜を突き破るほどの声が屋敷中に広がる。
「ウルセェな、そんな大きいな声出さなくても、聞こえてるっての」
後ろから聞こえた声に、返事をしながら体もそちらへ向ける。体を向けた先にいたのは、金色の髪に赤が所々混ざった髪と、綺麗な緑色の目をした少女がいた。顔立ちは幼いながらも端正な顔立ちをしており、面影にアーサーさんとイリナさんを感じる。
「剣で勝負しましょ!」
「エリーナ、この前勝負したばっかだろ?あと今、休憩してるからやだ」
面影を感じるのも当然だろう。
何故ならば、この少女は二人の娘であるエリーナ・ペンドラゴンなのだから。
そして何より、俺が誘拐事件で助けようとした子供でもあり、関わりたくないと思っていた少女だ。
では何故、安倍家にいる俺がエリーナと喋っており、剣の訓練までしていたかのか?
それは、安倍家とペンドラゴン家の両家は仲が良く、頻繁に家に遊び兼、訓練として泊まりに来るからだ。
しかし、何故か俺が養子に入ってから頻度が増えたらしい。
「え〜!何で〜!」
そう言って、エリーナはその場でジタバタと地団駄をする。
養子で安倍家で剣の訓練をしている俺は当然の如く、エリーナと遭遇し剣の訓練をする。
問題だったのは、剣の訓練でエリーナに勝ってしまった事だ。
エリーナは剣をとって10ヶ月ほどで、同い年では美桜と刃を除いてほぼ負けなしになった。
しかし、何度やっても刃や美桜と稽古で勝つ事ができず、剣を学ぶのを嫌っていた。
おまけに感覚派であるため指示する教官の言っている事をあまり理解できず、余計嫌っていた。
「相手ならアーサーさんとか美桜や刃にやって貰ったらいいだろう」
「お父様は仕事で忙しいし、美桜や刃は負けるから嫌!」
なぜ、そんなエリーナが剣の技量が上達したのか?
理由は、父であるアーサーさんが教えたためだ。
アーサーさんも感覚派のようでエリーナはその技術をスポンジのように吸収してすぐに強くなった。
「ルナさんとか、担当の先生の言ってること全然分かんないもん!だから、二人も分かりやすいレイに先生になって貰いなさいって言われたの!だから、勝負で剣を教えて!」
そう問題なのは、俺がエリーナの先生になってしまった事だ。
初めて安部家でエリーナに会った時、エリーナにとって俺は初対面だったし誘拐事件についても知らなかった。
ペンドラゴン家の人達がちゃんと約束を守ってくれたのだろう。
しかしエリーナが会って早々『あなた、弱そうね。勝負してあげる』と言われ、カチンと来て剣でも口でもコテンパンにした。だがおかしな事にエリーナは、分かりやすい!楽しい!となり剣を学び始めた。
しかし、相変わらず他の人が教えるのは無理なために、一番マシな俺が指導する事となった。
まぁ、俺も指導できているのはアルファのおかげなんだが。
「あ〜、分かった。一回だけな」
「やった〜!」
俺が剣の勝負を承諾するとジャンプするほど喜び、俺の周りをぐるぐると走り回った。
その行動に呆れながらも俺は微笑んでいた。
おそらく、子供と接しているような感じなのだろう。
まぁ、前の世界の年齢を踏まえたらそうなのだが。
安倍家 練習場 庭
俺とエリーナは、庭へ出て剣を打ち合う。
エリーナが攻撃を仕掛けてきて俺がそれを防ぐ。
エリーナに隙が出来たなら俺が攻めて、エリーナが苦戦しながらも防御する。
撃ち合いが続き、防御が段々と崩れてきてやばいと感じるとエリーナは苦し紛れの一撃を放つ。
しかし、俺は万全の状態で待機しているため、それを躱してエリーナの脳天に一撃を喰らわす。
その一撃を喰らったエリーナは、『ヴッ』と声を上げて頭を押さえる。
それがいつものエリーナと俺の撃ち合いの結果だった。
「何で勝てないの〜」
「動きが直感的なんだよ。素直すぎてフェイントに引っかかりすぎだ。自分の気持ちだけじゃなく、相手の事もある程度考えろって何度も言っただろ。まぁ、、前よりは良くなっているからまぁまぁだな」
エリーナが痛そうに喚き、俺がダメな点を教える。これもいつもの流れである。
「もう一本!」
「嫌だ、休憩だ!」
「ケチー」
エリーナが元気にもう一本とせがむがレイは、絶対に休憩するという断固な意思を顔に宿して、それを却下する。
その顔を見てエリーナも嫌々ながら納得する。
そして二人は、元いた廊下の方へ行き、そこに座って麦茶を飲みながら休憩をする。
「ねぇ、何でレイは、そこまで強くなろうとしているの?」
二人並んで麦茶を飲んでいると、隣からエリーナが急にそんな事を聞いてきた。
「別に強くなりたいのに特段な理由なんて必要ないだろ。刃だって美桜だって、それこそエリーナだってそうだろ?」
俺は、何でそんなおかしな事を聞くのだろうと思いながらそう答えた。
「確かにそうだけど、レイはあたし達と違ってなんか別の理由があるような感じがするんだよね。う〜ん」
エリーナをそう言って、唸りながら真剣に考える。
「そう!まるで何か見えない何かを追いかけてるみたいに」
閃いたかのようにエリーナはそう答えた。
「ある意味、的を得ていますね」
アルファもエリーナの意見に同意する。
「そうだな。俺は見えないゴールを追いかけてるんだろうな」
レイの表情は悲しそうで、、。
それを側で見ていたエリーナは何か励まそうと思った。
「大丈夫だよ!見えなくても私が一緒に探してあげるから!」
エリーナはニカっと、今もさんさんと輝く太陽な笑顔で答えた。
レイはそれを見て、まるで太陽に暖かく照らされたように感じ、暗い感情が明るくなっていた。
しかし、すぐにスッと無表情になりエリーナの脳天にチョップをする。
「ウッ、どうして〜?」
急なレイからのチョップに涙目になりながらエリーナは言った。
「人のプライペートな部分で直感を使うなら、戦闘でもちったぁ使いやがれ」
レイは涙目のエリーナに呆れた目でそう言った。
「そう言えば、何でレイはリーナって呼んでくれないの?」
頭を手に置いたままエリーナは首を傾げながらレイに言った。
エリーナは親しい間柄の人物にはリーナと呼ばれている。
「え?何かやだから」
「何それー!、呼んでよー!」
「いーやーだ!」
エリーナの駄々にレイは全く靡かない。
「じゃあ、私の剣の腕がまぁまぁじゃなくなったら、リーナって呼んでくれる?」
「まーそれなら別に・・・」
「約束ね!」
そう言って、エリーナはまた太陽のように笑った。
だが、その約束は思わぬ形ですれ違う事になる。
しかし、それはもう少し先のお話。
今、この空間は二人の少年と少女が笑いながら楽しんでいる。
そんな日常の空間であった。
こうして今日も一日、安倍家で平和な日常を過ごす。
エリーナ・ペンドラゴンとの再開!こういった日常回も好き!




