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転生したら違う世界だった件 魔女とダンジョンの運命の星(アルカナム・スター)  作者: 正体不明
安部家編

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15/26

くだらない喧嘩

毎日投稿15日目!

互いの罵詈雑言の応酬で、二人の怒りの沸点はすでに到達している。

後は、何かしらのキッカケが起きれば即座に殴り合いになるだろう。


「おい、今謝るなら年上として許してやってもいい」

「ハッ!甘えな!謝る訳ねぇだろ。雑魚が!」

「ちょっと、貴方達・・」

少女の静止も効果なく、少年二人は互いに矛を収める気が無かった。


「クソガキが!」

「やってやるよ!」

側から見れば二人は怒りでまともな判断が出来ていないように見えるが、少年二人は意外にも冷静だった。

互いにかなりの手だれだと判断しており、そして二人とも話し合いで解決など出来ない事を理解していた。


それ故に、二人同時に踏み込んで殴りが合いが始まる・・・・という筈だった。


「何をしている(ジン)

二人とも踏み込み振り上げた拳を振り落とそうとする瞬間、冷たく、畏怖を感じる声と気配が庭の方から感じた。

月姫(ルナ)さん!?」

美桜がそう言って庭の方を見る。

そこには、薄い水色の髪と金色の眼をした、童顔だが凛々しい顔立ちの女性が立っていた。

俺とクソガキは、その人から感じる気配の圧から振り上げた拳を下げていた。


「邪魔すんなよ姉貴」

「邪魔とは何だ邪魔とは。そもそも客人を、、しかも安倍家の養子となった者と殴り合いをしようとするのなら12家門の白虎院の当主として止めないわけにはいかない」


姉であるルナは、弟の言い分を冷静に理由を踏まえて論破する。


目の前で話している二人は姉弟なのだろう。

黒髪のジンという少年の呼び方からしてそうだろうと俺は確信した。

しかし、それ以上に俺は驚いていた。

目の前にいるこの女性の圧倒的なまでの存在感に・・・。

これは、初めてアーサーさんに会った時と同じ、、底が見えない。

実力が読めないほどの圧倒的な実力者。


「マスター、相手は危害を与えるつもりはありません」

『そうか』

俺の動揺を察知し、そうアルファが教えてくれた。


「そう警戒しないでくれ。流石に安倍の名を持つ者に手を出すつもりはない」

女性は、アルファが言った通り危害を与えるつもりが無かったらしい。


「ですけど、子供の喧嘩ですよ?それなのに貴方ほどの人が間に入る必要がないと思いますけど?」

「ほ〜、私に言い返す事が出来るとは」

目の前の女性が俺をじっと見つめる

「マスターを分析しているのだと思います」

「お客人のいう通りだ。だがしかし、それは普通の喧嘩ならの話だ。刃は王冠級のジョブの覚醒者。その刃と同じ力量を持つ少年が互いに殴り合う喧嘩を、ただの子供の喧嘩とは、さぞやの修羅場を超えてきたと見える」


『当然、俺の力量も把握されてるか。アーサーさんと同じで勘がいいな。やりにくい相手だ』

そう心の中で思考しながら、女性との会話を続ける。


「けど、どうします?互いに引けない理由がある以上、ぶつかるしか解決のしようがないと思いますが?」

「そうだぜ姉貴、男には引けねぇ戦いがあるんだ!」

「黙れ刃、ガキのくせに何が男だ。男は身長を馬鹿にされたくらいで喧嘩をしない」

『その通り』と俺は心の中で思いながらも現実世界でも口が緩んでいた。

「テメェ、今、笑ってやがるだろ!」


それに気づいた少年がレイを指差して指摘した。


「何の事だか?」

レイは、口元を手で隠して緩んだ口を元に戻し、何も無かったかのように振る舞った。

「この!!」


「二人とも落ち着け。私も喧嘩をただ闇雲に止めた訳ではない」

「それって、どういう意味ですか?ルナさん」

傍観していた美桜がルナという女性の言葉の意味を聞いた。


「お嬢様、互いの意見が通じない場合の解決策は一つしかありません。それは、相手に自信の意見を押し通す事です」

「ええ、だから二人は喧嘩でそれを決めようとしていたんですよね?」

「そうですが、仮に二人が喧嘩をして決着がついても二人とも納得しないでしょう」

「だったら、どうやって決めるの?話し合いでは当然無理だし・・・」

美桜がルナの言葉を聞いて考える。しかし、答えは出ない。


「簡単ですお嬢様。”それは、決められたルールで仕合をする”事です」

「仕合ですって?」


こうして第三者の介入により、”殴り合いから仕合という勝負”に切り替わった。


▶︎▶︎▶︎▶︎

第三者であるルナの介入にによって二人は仕合ををする事になり。レイと刃は、負けた方が謝るという約束を決めてその勝負に納得した。


ルールは3つ。そして、仕合の審判はルナがする事になった。

1つ目 ジョブのスキルを使わないこと

2つ目 木製の武器を使って勝負をすること

3つ目 決着は、戦闘不能か敗北宣言、もしくは、審判が決着を決める


「あなた大丈夫なの?刃はかなり強いわよ?」

「そりゃ、やってみないと分からないだろ」

俺は美桜の話をストレッチしながら聞く。服装もスーツから道着に着替えた。

『大事な服だからな、汚したり、破損させたくない』

そう心の中で思いながら、先の会話で気になったことを美桜に聞いた。


「なぁ、美桜。王冠級って何だ?俺、ジョブ持ってないから分かんないだよ」

「確かに、あんたジョブを持ってなかったわね」

美桜は俺がジョブを持ってない事をハッと思いだし、王冠級について教えてくれた。


「王冠級っていうのは、ジョブの階級の事よ。ジョブは5階級それぞれに一つずつ段階があって、計10段階あるの。そして、能力を分かりやすくするためにジョブ覚醒者は階級と今到達している段階で能力別に割り振られる。刃の場合は、”王冠級”4階級7段階ってなるわ」


「なるほど、ジョブには階級みたいなのがあるのか。んで、それってどれくらいすごいんだ?」

「そうね。わかりやすく言えば世で言う”天才”って言われるくらいすごいわね。ハンターのランクは、SS級、S級、A級、B級、C級、D級ってあるんだけど。王冠級ならジョブをある程度使いこなせればS級に入れるわね」


「一番上がSS級で。それは国家級ハンターに入らないんならS級が国家級に選ばれるって事だろ?そしたら、めちゃくちゃすげーな」

「半分あってるけど、半分間違ってるわね」

「どう言う意味だ?」

美桜の言葉に俺は、首を傾げてそう言った。


「国家級の候補はS級ハンター。それは正解。けどS級の条件は、”王冠級”4階級7段階から”神域”5階級9段階に到達している事とS級試験に合格するのみ。3段階も範囲があるなら実力が段違いに違ってくるわ。実際、国家級ハンターに選ばれているのは、基本的に”王冠級”4階級8段階から。さらにそこから経験を積んで強くなって実績を積まなきゃいけないから刃は国家級には程遠いわ。けれど、貴方の言う通り普通は中学生くらいでジョブに覚醒するのに、あの若さで王冠級に覚醒しているからほぼ国家級になれるとは周囲に言われているけどね」


「どっちみち、超天才って事じゃねぇか」

「そうよ。私、超天才なの」

「それで何でお前がって事になるんだよ」

美桜のボケにツッコミで返す。すると美桜は、驚きの言葉を言い放った。


「何でって、私も刃と同じ”王冠級”4階級7段階だからよ」

少女は、今日会ってきた中で一番、自信に満ちた顔をしていた。

『お前もかい!』と心の中で俺は思った。


「まぁ、あのクソガキが強いってのは、最初から分かってた事だけどな」

レイは会った時に白虎院 刃が強いと分かっていたと美桜に向かって言う。


「やっぱり、気づいてたのね。勝算はあるの?刃は、才能だけで言えば白虎院の歴代でもトップて言われてる位に強いわよ」

「勝負を受けた以上、やってみるしかないだろ」


美桜の言葉に俺は素直に答えた。

美桜はその後、仕合で使う武器についても聞いてきた。


「それで武器はどうするの?ウチなら大体どんな木製武器でも置いてあるけど。まぁ、貴方なら色んな武器を使えるんでしょうけど・・」

「いや、そんな事はないよ。俺も色んな武器を練習してみたりしたけど、武器を扱う才能はあまりないらしい。けど一つだけ妙にしっくりしたのがあったんだよ・・・」


レイは、美桜と喋りながら大量の木製武器が置かれている場所へ歩いていく。

そこに着くと、目に留まりやすい一番前に置かれている武器を取った。


「・・・やっぱり、これだな」

「へぇ、案外普通なのね」


レイが取ったのは、人類が初めて手に取った武器。

数ある武器の中で取り回しがきき、相手を突き刺し、切り裂く、刃が欠けても鈍器として使用できる。

武器の始まりであり象徴、”剣”である。


「準備はできたか?」

ある程度、準備をし終えて美桜と話していると薄い水色の髪をした美女がそう言って近づいてきた。

「ええ、バッチリですよ」

「じゃあ、位置についてくれ」

俺の返事におもしろそうに笑みを浮かべて女性は言った。

「分かりました」


そう言って俺は仕合の位置に着く。目の前にはクソガキがおり対面する形となる。

その周りには、観客の大人・子供がおり俺とクソガキの勝敗について喋っていた。


「絶対、刃様が勝つよ。だって大人の人でも勝つのが難しいんだもん」

「だな。刃様は天才だ。あの歳で王冠級に覚醒した才能に武芸の才能もピカイチ。あの少年では無理だろう」

「だよな。感じからしてジョブに覚醒すらしていない。あんな子供では相手にすらならない」


周りのほとんどがそう思う中、それとは違う考えを持つ者もいた。

それに該当する者の特徴はもれなく白虎院の有段者であり、そしてもちろん”白虎院家 当主 白虎院 月姫ルナ”もそうだった。


「お嬢様は、どちらが勝つと思いますか?」

「正直、分かりません。刃は武器を使った実力はピカイチです。有段者である私ですら、得意である剣同士ならともかく好きな武器となると敵いません。ですけど、レイの強さにはそこが見えません」


少女は女性の問いに自身の考えを言った。そして女性も少女とほぼ同じ考えだった。


「私もお嬢様と同じ考えですね。実力という点ではかなり拮抗していると思います。なので勝敗がつくとしたら、技術ではなく、それ以外の要素となるでしょう」


そう言って女性は美桜から離れていき今も互いに睨み合っている二人の少年の間に審判として入る。

ようやく少年二人の負けられないくだらない仕合が始まる。


「これより白虎院 刃と安倍 零の仕合を初める!ルールは先ほど決めた通り、スキルを使わず木製武器を使って相手が負けを認める、戦闘不能になる。もしくは、審判により勝敗が決められることで仕合の決着が決まる。双方。準備はいいか?」

「オーケーです」

「いつでもいいぜ」

審判である女性の言葉に剣を持った少年と槍を持った少年は、目の前の敵に少しの怒りと高揚感を持ってそれに答える。


間も無く号令が放たれる。

この戦いを見たものは”子供とは思えない仕合”と驚嘆し、当事者である二人はあの戦いがあったからこそ自分達は強くなれたのだと言った。


「はじめ!!」


「シッ、」

号令が放たれ先に動いたのは、

白虎院 刃。攻撃は全力最速の突き。

号令の合図とほぼ同時にする先制であり、静止の状態から緩急を使った攻撃。

少しの油断で隙を作られ、最悪、決着すら付きかねない。

「ぬるいな」

しかしレイは、その攻撃を軽々しく木剣で弾く。

レイが攻撃を弾けた理由は、相手の攻撃を読んでいたから。

号令により仕合が始まる前から目の前の少年を観察し、構えと号令後の動きから最速の牽制攻撃を予測した。

「やるな!」

「そりゃ、どうも」

攻撃を易々と防いだ目の前の敵に刃は、驚きと高揚感を半々に褒めた。

それを聞いてレイは、相手の実力の確信と高揚感を感じながら返事をした。


「なら、これならどうだ!」

牽制を完璧に対処された所で、天才”白虎院 刃”は、攻撃の手を緩めはしない。

己の技が対処されたのなら対処できない技を繰り出せばいい。

選択したのは、”連続の突き”。

一つの木の槍が数十本に分裂したかのようにレイに炸裂する。

しかし、それすらも目の前の少年には、緩かった。


「互角?」

それを見ていた才女”安倍美桜”は、驚きと納得を半々に思いながらそう呟いた。

周りで観戦する者たちも、それぞれ驚き、または納得、感嘆し、その仕合から目を離さない。


『やはり、武器の練度はほぼ互角。勝負が決まるとしたら”駆け引き”。もうすぐで動き出すだろう』

薄い水色の髪の女性は、予想通りかのように心の中で考えていた。

その表情は、笑っており。とても美しいものだった。しかし、それを見たものは、誰一人いない。

何故なら、皆違う事に目を奪われていたのだから。


「・・・・・」

レイは、確かな駆け引きを持って刃の攻撃をことごとく防いでいた。

体の重心を動かせる事で相手の攻撃を誘導し、それを剣で弾く。

その表情は、真剣で冷静、まるで水面の水のようだった。

「こいつ・・・」


しかし、レイの内面は攻撃を防いで行く度にイラついていた。


「テメェ、いい加減にしろ」

ついにイラつきの限界に達し、突きを木剣で滑らせるようにいなしながら敵に接近し横腹に一撃を加える。

「ガハッ」

一撃を喰らった刃は、呻き声を上げながら飛ばされ、地面を転がっていく。


「さっきからお手本のような単純な動きしかしやがらねぇ、舐めてんのか?」

「うるせぇ」

レイが怒っていた理由、それは相手の攻撃に殺気が無かった事にある。

一流の武芸者になれば相手の動きに合わせて考えられた変則的な攻撃をする。

そして、その当てようとする”気”が殺気と言われる。

しかし、白虎院 刃からは、それが感じられず、ただ基本的な攻撃ばかり。

レイから見ればやる気がないも同然である。


「仕方ねぇだろ。・・・姉貴にこうしろって言われてんだよ」

「知るかよ。ならそれで勝手に負けてろ」


レイは刃の答えに、一切耳を傾けず刃に近づき攻撃する。それにより攻守が反転した。


『クソが』

刃は攻めるのは得意だがそれに比べて防御はそれほどではない。

そして、レイは満遍なくできる万能型。

その上、レイの方が駆け引きが上である。

つまり、刃にレイの攻撃を防ぎ切る事は出来ない。


「グッ、ガハッ、グホッ、・・・」

最初は手や足などの細かい隙に木剣を打ち込まれ。

そこから生まれる大きな隙から人体の急所である首、脇腹へと攻撃が繋がっていく。

計15発の打撃を受け刃はついに地面に膝をつける。

「終わりだ・・・」

その隙をレイが見逃すはずもなく。脳を揺れ気絶する顎へ強力な一撃を加えようと木剣を振り下ろす。


『やはり、刃には早かったか』

審判であるルナは刃の負けを確信する。

そしてそれを見ていた美桜も、傍観していた周りの大人・子供でさえ、天才白虎院 刃が負けると思った。ただ一体機械の存在を除いて・・・・


「マスター。相手の集中力が急激に上がりました。反撃が来ます」

『!?、殺気』

アルファの言葉の後に目の前の敵から殺気を感じたレイは、踏み込んだ後ろ足を半歩、反射で下がらせる。

「シッ!」

その直後、目の前の膝をついていたはずの敵が仕合開始の時と同じ、いやそれ以上のスピードと緩急で槍を突く。

「クッ」

木剣を振り下ろしていたレイは、それを中断して間一髪で避ける。


『後ろ足を半歩下げてなかったらやばかった』

冷や汗をかきながらレイはそう心の中で反芻した。


「久々だぜぇ、このワクワクは!!」

「なんだよ、今から本気か?にしては、かなり勿体ぶるじゃねぇか」

「まぁな、俺はスロースターターって言うらしいからな」

レイが苦渋の顔をする中、刃は嬉しそうに満面の笑みを浮かべていた。


白虎院 刃は天才である。

幼い頃から槍を手にして僅か一年で駆け引きを使わずして、白虎院の有段者相手にもいい勝負をしていた。

それ故に同年代で武芸に関して本気で切磋琢磨できるものはおらず。

当主であり白虎院最強である姉、白虎院 月姫ルナに師事をした。

姉から『基本技を磨け』と言われてそうして来た。

しかし、目の前には自分を興奮させてくれる強敵がいる。

自分よりも駆け引きが上であり、最初の攻撃も含め、油断するトドメの時ですら自慢の一撃を避ける強敵が・・・。ならば天才から”◾️◾️”へと戻るだろう。

日本最強のハンター”一族”である安倍家の中でも、戦闘に特化した家門”白虎院家”において、歴代の中でもトップクラスの才能と称された”白虎院家の若き虎 ”若虎”白虎院 刃”へと。


『ようやく刃にも切磋琢磨できる相手が見つかったか』

審判であるルナはまたも笑っていた。

その笑みは、姉が弟を思う美しい兄弟愛であった。


場面は、戦う二人へと戻る。

「テメェの要望通り本気でしてやるよ。さっさとくたばったら、ぶち殺す!」

「そう言うのは、俺に一撃でも当ててから言いやがれ」

「クハッ』


互いに言葉をぶつけ合い、先に動いたのは刃。


『相手は防御、攻めにおいて万能。防御じゃあ歯がたたねぇ。なら攻めて、攻め切る!』

『正直、攻めに関しては相手の方が上、なら耐えて、相手の隙を狙う!』


互いに勝利へのプランが決まり第2ラウンドが始まる!!


今までの刃の攻撃は、構えから上半身を使った教科書通りの技。

しかし、本気を出した”若虎”白虎院 刃の動きは違った。

獣のように俊敏に動き、上半身だけでなく、全身を使った攻撃をしてくる。


『獣みたいな動きの上に、最初の突きだけじゃなく、槍を回して複数の場所から攻撃をして来やがる』

先の攻撃とは違い、多彩な動きから繰り出される攻撃をレイは冷静に対処し防ぎ切る。

しかし、”若虎”の本領はここからである。


敵の攻撃を防ぐ中、アルファが俺に喋りかけてきた。

「マスター、相手のスピード、攻撃速度、攻撃手段が増加しています。このままですと、数手先でダメージを受けます」


『やっぱりか、クソ』


”若虎”刃の最も優れているのは、才能でも、多才な型でもない。

それは、実戦で成長する”成長スピード”。

相手が強ければ強いほど集中力を上げ、実戦で実力を伸ばしてくる。


「クッ、まだ上がるのか!」

際限なく成長する敵にレイは驚きながらも攻撃を未だ防ぎ切る。


「おいおい、さっきの威勢はどうした!防ぐだけじゃあ、勝てないぜ!」

「ッ、ウルセェ!」

刃の煽りにレイは、攻撃を捌きながら決め手である顎へ反撃を繰り出す。

それは見事なものであり、確かな隙を捉えたものだった。

その攻撃を防ぐのならば、予測していなければ無理だろう。


「待ってたぜ・・・」

「!!」

刃はそれを予測していた。

故にレイの顎への一閃は虚しくも、刃が姿勢を低くした事で空を切る。

そして今度は逆にレイが決定的な隙を晒す。

その隙を見逃す事なく刃は、背中で槍を回し遠心力をつけてレイの足元へ振り抜く。


「おりゃ!」

「うお、」

刃の足元への一撃はレイの姿勢を崩し、さらには宙に逆さに浮かせるまで至る。

「終わりだ!」

空中では身動きがとりにくい。

宙に投げ出されたレイに刃は、決着の一撃を加えようとする。

「ッ!、舐めんな!」

しかし、その一撃をレイは空中で回りながら回避し、その上で一撃を喰らわす。

「ハハ!」

刃はその一撃を笑いながら防御し、足を地面に擦りながら飛ばされる。

宙へ投げ飛ばされたレイもうまく地面に着地する。

二人にはすでに雑念なく、目の前の勝負にしか頭に入ってはいなかった。


『相手は、まださらに成長する。けど、それでも勝つ!』

『あいつは、俺の攻撃を殆ど防ぐ。けど俺が勝つ!』

二人の思考は、今までになく集中しており、考えている事も類似していた。


『『やる事は、変わらない!!!』』

『最強の一撃を喰らわす!!』

『相手の決め手を防いで一撃を喰らわす!!』


ついに、二人のボルテージは最高潮に到達。すでにルールすらすでに頭から抜け落ちている。


「スキル発動・・・」

刃から濃密な殺気がレイに集中する。

姿勢を低くした構えは正しく虎の幻影をレイに想起させた。

「相手からジョブスキルの発動を確認。スキル”神が与えし肉体”が発動。筋力、反射速度、スピードが上昇」

刃の気配からアルファはスキルを発動させる。

スキルが発動したことにより、レイの筋肉が隆起して力が漲る。

反射速度の強化により思考速度も上がって思考がクリアになる。


互いに準備はオーケー。後は、スタートするのみ。

「行くぞ、安倍 零!」

「来やがれ、白虎院 刃!」

すでに二人の間に怒りや嫌悪感などは無くなっていた。


白虎院家の歴代の中でも屈指の才能を持つ若き虎”若虎”。

アルファの仮想世界で濃縮された10年間を過ごし、その体感時間は数倍以上。

そんな常人では狂ってしまう空間でただひたすらに己を鍛え続けた”狂気の怪物”。

”若虎”と”怪物”、今ここで決着の一撃が交差する。


「白虎流槍術・・・」

「我流魔剣・・・」

己の最高の一撃。

刃にとってもレイにとっても今まで一番、最高と言える技を繰り出す。

それは、木製の武器であっても互いに危険なものだった。


それ故に、この勝敗の決着はつける事が出来ない。


「双方!そこまで!」

「「!?」」

少年二人しかいない世界に誰かが入ってくる。

それは薄い水色の髪をした女性で少年二人の最高の一撃はそれぞれ片手で止められていた。


「双方、能力の使用を確認。ルール違反のため、引き分けとする!」

その女性は、審判であるルナだった。

審判であるルナの判断でこの勝負は引き分けとなる。

それを見ていた観客は、大いに沸き。場は最高潮に盛り上がる。


こうして”若虎”と”怪物”の仕合は幕引きとなった。


その気を境にレイは、”神童”と称され安倍一族の中で敬意と確かな地位を獲得し称賛された。


”しかし4ヶ月後、レイはある事件を機に、その立場と称賛を自ら手放してしまう事となる。”








伏線を出していくような話を今後も出していきたい!

ブックマークなどして頂けると嬉しいです。

以上 正体不明でした。

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