初めて貴方の名前を呼ぶ
連続投稿14日目!
「ようやく養子の件についてまとめる事ができる。私はこれから係のものに書類を書いて提出させるつもりだ。零にはこの家の案内をするとして、アーサーはこの後、用事があるかい?」
「すまない。私はイギリスで会議があるからもう少しでここを出るつもりだ」
「それは残念だ。暇があったのならゆっくり茶菓子を食べなが話したかったんだが・・・」
清隆は少し残念そうな顔をして言った。
「仕方ないさ。お互いに忙しい身分だからね。それと、、最後にレイと二人で話させて欲しいんだが、いいかな?」
「もちろん構わないさ。じゃあ、杏奈は書類を少し手伝ってくれ。美桜は好きなように過ごしてていいよ」
清隆さんと杏奈さんが出て行こうとする時、美桜が清隆さんを呼び止める。
「お父様、よろしかったら私がレイに家案内をしてもよろしいでしょうか」
「それはいいけど・・・いや、何でもない。頼んだよ美桜」
清隆は普段、人とあまり関わりたがらない美桜が珍しいと感じたが、それは親としては嬉しいものだった。
「ありがとうございます。レイ、近くにいるから話が終わったら呼んでちょうだい」
「分かった」
そうして、俺とアーサー・ペンドラゴン以外が部屋から出ていった。
部屋に零とアーサー二人になり、アーサーが自身の腕につけている時計に触れた。
時計に触れた瞬間、緑の光のドームのようなのが二人を囲むように展開される。
「これは・・・?」
「音を遮断する効果の魔道具さ。これからする話を万が一にも聞かれたく無いからね」
音を遮断する魔道具。確かに目の前の男ならばそういった物が必要なのも頷ける。
「その話っていうのは何なんですか?特段、話す内容もないと思いますけど」
「君がいた世界についてだ」
「!?、、忘れていて欲しかったですけど、やっぱり覚えてましたか」
俺は話の内容を聞き驚く。目の前の男はそれでも話を続けた。
「私は記憶力がいい方でね。そう簡単には忘れないさ」
「つまり、僕がいた世界について知りたいって事ですか?」
「いや、君の世界の情報については聞くつもりはない。個人のプライベートまで侵害するつもりはないからね。私は最後、君にちょっとしたアドバイスをしようと思ったんだ」
「アドバイス?」
俺が疑問に思う中、目の前の男は構わず喋り出した。
「7人の魔女に会うといい。彼女達なら今の君の状態についてある程度知っていることがあるだろう」
「それって、どういう・・・」
俺が詳しく聞こうとする中、今度は声を覆い被すように話を続けた。
「これ以上は、話すつもりはない。君は安倍家の一員となった。時期にハンターにもなるだろう。その時に魔女を探すといい」
「・・・もしかして俺がペンドラゴン家に養子に入ってたら教えてくれました?」
俺はペンドラゴン家の養子を断っている。
それを気にしているのかと思い聞いてみた。
「いや、教える内容は変わらなかったよ。魔女は扱いには細心の注意が必要だ。どちらにしろ今の君に教えれる内容はこれが精一杯だったよ」
「そうですか」
レイは思った『この人がそれほど言うレベルって魔女ってどんだけやばいんだ?』と・・。
「君はこれから大変だろうけど頑張ってくれ。私ができる範囲でならできる限り助けると約束しよう」
目の前の男はそう言って、時計を触り光のドームを解除する。
時計の時間も見ているため、そろそろ此処をたたなくてはいけないのだろう。
迫り来る時間を確かに感じながら、ふと俺は聞かなくてもいい事を聞いていた。
「・・・なんで、俺にそこまで気を遣ってくれるんですか?いくら娘さんを助けてくれたからと言って、養子の件といい採算があってないと思うんですけど」
男は一瞬、キョトンとした顔になり喋り出した。
「君は、目ざとい所があるのに鈍感だね。そんなのは、君が気に入ったからに決まっているだろう」
男は、好意を持っているからだと笑いながら言った。
「・・・そうですか」
俺はなぜかそれを聞いて、目の前の人を直視できなかった。
「そろそろ時間だ。私は行くよ」
目の前の男は、そう言って微笑みながら部屋を出ようとする。
俺はその背を見ながら、やっぱりこの言葉を言うのは恥ずかしいなと思いながらも前を見て言った。
「”アーサーさん。ありがとうございました”」
そう言って俺は深々く頭を下げ、親しくしてくれた優しい騎士に感謝した。
「初めて名前で呼んでくれたねレイ。・・・どういたしまして」
アーサーはいつもと表情は変わらないが、心なしか嬉しそうにレイには見えた。
こうして、俺はアーサーさんを見送った。
アーサーさんを見送った後、部屋から出て美桜を探す。辺りを見回すと少し離れた所に美しい青みがかった髪の少女が立って待っていた。
「すまん、待たせた」
「話は無事おわったみたいね」
俺は美桜の方へ歩いていき声をかける。それに美桜も軽い口調で返事をする。
「じゃあ、案内するわね」
「話の内容を聞かないのか?」
「別に家族になったからってプライベートな事を軽々しく聞かないわ」
俺の問いに、目の前の少女は表情を変えずに答える。
「そうか。・・・そう言えば勝負は俺の負けってことになったから美桜お姉ちゃんって呼んだ方がいいかな?」
「やめて、本当にやめて、悔しくてめちゃくちゃムカつくから」
少女は先ほどと違って、ものすごい剣呑な顔をしていた。
「じゃあ、呼び方は今のまま美桜でいいか?」
「ええ、それで大丈夫よ。それに姉弟だからって上下は無しにしましょう。実際、勝負は引き分けだし、今の状態で態度が変わるのも何か気持ち悪いから」
そうして俺たちは、とてつもなく広い家を二人で歩いていく。
今日会ったばかりなのに関わらず、なぜか美桜とはもう何年も友達だったかのように気軽に話せていた。
だが、家族になったという自覚は全くと言っていいほど無かった。
▶︎▶︎▶︎▶︎
「ここが・・・・で、ここは・・・・の時に使用される部屋。ってそう言えば、レイは、うちの事どれくらい知ってるのかしら?」
家の案内をしつつ俺の数歩先を歩く美桜が、こちらに向いて話しかけてきた。
「別にほんとに大枠の事しか聞いてないぞ。12の家門とそれをまとめる安倍家があって、12の家門がそれぞれ色んな事業をしてる、そんで日本一のハンター”一族”ってくらいだな」
「なんだ。ほとんど知ってるじゃない。大体そんな感じよ。付け加えて言うなら、12の家門がそれぞれハンターに関わる仕事のトップ企業に入る事、そして国家級ハンターが3人いるって事ね」
「国家級ハンター・・・」
俺はその単語をこの世界について説明してもらう時に聞いた覚えがあった。確か、かなりの功績と条件をクリアしたものだけがなれるハンターにとっての象徴の一つだと。
「へぇ、そんなすごそうなのが3人もいるんだな」
「S級ハンターなら結構いるんだけど、国家級となるとかなり少ないわね」
「国家級ってなるとやっぱり、アーサーさんとかカリキュラさんとかも入ってるのか?」
「何言ってんの?あの二人は入ってないわよ」
「え、何で?」
俺は予想外の答えに驚いて聞き返してしまっていた。
最強って言われるくらいなら国家級にすると思ったんだが。
「国家級ハンターって言うのは、いわば国の戦力みたいなものなの。だから世界全体の戦力と見做される二人を含めた4人の最強は国家級には入らない。規格外の、ランクSS級冒険者っていうの。貴方って頭切れるのに知らなかったの?」
「いや〜、大枠は知ってたんだけど細かいことは気にならなかったから・・・アハハは」
俺が苦笑いして誤魔化そうとする中、美桜は目を細めてこちらを見続けけていた。
『ちょっと、まずったか?』
正体を怪しまれたかと思い動揺する
「・・・・まぁ、いいわ。うちの案内は次が最後よ。付いてきて」
そう言って、美桜は前を向いて案内をはじめた。
どうやらそこまで気にならなかったらしい。
最後に案内されたのは、修練場だった。
安倍家の屋敷は、地面に石が敷き詰められその上に建物が建てられている。
まさしく日本の城のような作りをしていた。
今までの部屋は、屋敷の中の部屋だったが修練場は、別で建てられていた。
石が敷き詰められた枯山水のような庭に大々的に建てられており、その庭では複数人の大人子供が汗が空気を伝うほどの稽古をしていた。
「すごい人数だな」
「今ちょうど白虎院の訓練が行われているのよ」
「白虎って、もしかして12の家門の・・・」
「そう。12の家門の一つにして戦闘に特化した家門。その流派である”白虎流”の免許皆伝者は、皆一流と呼ばれるほどの実力者よ」
美桜が白虎院について教えてくれている時に突如、人影がものすごいスピードで飛んできた。
「危ない」
「きゃっ」
俺は美桜を抱えて避けた。
飛んできた人影は、レイ達が立っていた部屋の襖を突き破りそのまま部屋に衝突する。
それにいち早く気付いた俺は、美桜を抱えて上手く避ける事が出来たが、美桜を床に押し倒す形になってしまった。
「思ったけど、やっぱ、美桜って独特の匂いがするよな」
「な、嗅ぐな!」
「グヘェ」
距離が近くなって魅惑の香りを強く感じ素直に言うと、美桜は顔を赤くして俺の顔を思いっきり張り手した。
俺は、呻き声を出しながら床へ倒れた。
それを見ていたアルファは『変態だな』と思いながら傍観していた。
「この声は、美桜か?」
俺が床に倒れると同時に襖が無惨に壊れた部屋から110センチほどの小さな人影が出てきた。
「そうよ。んで刃あんたはまた月姫ルナさんにこっぴどく絞られてるの?」
「ああ、そんな感じだ。姉貴のやろう手加減が下手すぎんだよ」
美桜と喋っているのは、金色の眼にツンとした黒髪の少年だった。
「ここにいるって事は、動きに来たって事だよな?1試合やろうぜ」
「今は案内をしてるから無理よ」
美桜は自分が吹き飛ばしたスーツを着た少年を見る。
「案内?」
金眼、黒髪の少年は子供にしては人相の悪い顔で聞き直した。
「てて、美桜、この子は誰?」
美桜の張り手で床に寝ていたレイが起き上がり美桜にそう聞いた。
「テメェこそ、何もんだ」
美桜に飛ばされたレイと黒髪の少年が、互いに睨み合い目を離さない。
それを見ていた美桜は溜め息をしながら仲裁をした。
「はぁ、そこまで。まず、お互いに自己紹介して」
「新しく安倍家の養子になりました安倍 零です」
「白虎院家 長男 ”白虎院 刃”だ」
名前を言うと二人とも目の前いる人物のおおよその正体に気づき、少しのぎこちない空気がありつつも互いに手を出して握手をした。
「「よろしく」」
「そういや、テメェ、さっき美桜と抱き合ってたよな?」
「ああ、お前が向こうから飛んできたからな」
目の前の少年の質問にレイは冷静に答える。
しかし、コミュニケーションを取ると言うのは難しいものである。
少年は、大きな声でレイに続けて衝撃の言葉を放った。
「テメェ、美桜の事、狙ってんだろ!」
少年の飛んだ勘違いにレイは、一瞬思考が止まり少し間を開けて否定した。
「・・・・狙ってねぇよ」
『もう、このくだりやったろ!』と心の中でレイは思った。
「美桜は俺の女だ。手を出すんじゃねぇ!」
「お前、美桜の事が好きなのか?」
少年の言動から美少女である美桜の事が好きなのかと思い確認する。
「ああ、あれだけ綺麗で強くて、賢い。惚れる理由なんざ十分だろ」
「確かに」
そう俺は頷きながら少年の理由に肯定した。
「あんた達、他の人に聞こえる声で何言ってんの!」
レイと刃と言う少年のやり取りを見ていた美桜は少し顔を赤らめながら言った。
「こういう、偶に照れるのも可愛いんだぜ」
「確かに、美桜って普段はクールっぽいけど、こう言う一面があるのはマジ感謝だわ」
「うっさい!」
レイと刃のやり取りを見て、美桜はまた顔を赤らめ、さらに眉にシワを寄せて言った。
いい雰囲気のように思えたのだが、突然、黒髪の少年の言葉により雰囲気は険悪となる。
「カハハ、まぁ、美桜と付き合うなんてありえないよな。テメェみたいなちんちくりんには?」
「どう言う意味だ?」
「ハハ、言ってる意味が分かんねぇのか?そのスーツがダセェって言ってんだよ」
レイは、ペンドラゴン家から貰った大切なスーツを馬鹿にされ怒りが込み上げがる。
「このスーツはお世話になった人から似合うって言って貰ったもんなんだよ。それを馬鹿にしたって事でいいんだよなぁ?このクソガキちび」
レイも怒りにより、口調が荒くなりヒートアップする。
「・・・おい、お前今、チビって言ったか?」
黒髪の少年は、少し間を開け二人に聞こえるくらいの静かな声で言った。
その言葉は静かさとは裏腹に、溢れているのは”激情”だった。
それを見てレイは、最後にトドメを放つ。
「ああ、気に入ったのなら何度でも言ってやるよこのちび!」
白虎院 刃の身長は110センチいかない程度。小学一年の平均身長よりも下で、当然、身長順でいつも一番前。少年のコンプレックスである。思春期の悩みを突かれたらブチギレるのが子供だ。
安倍 零のスーツはペンドラゴン家が用意したスーツだ。
当然、世話になった少年はそのスーツを大切にしようと考えていた。
それをバカにされたのなら怒るのも当然と言える。
しかし、レイはこの世界で6歳と言っても、前の世界では大人だ。我慢するのが当然だろう。
だが、考えてみてほしい。彼は前の世界では彼女を作らず、20代後半まで親の脛を齧り、家を追い出されてからは、努力すら諦めたクズである。そんな大人がクソガキに馬鹿にされたら我慢できるだろうか?それは否だ。
”我慢などする訳がない”。
つまり、どうなるのか?”喧嘩の始まりである”。
前の後書きの事で修正を!主人公の秘密を知るキャラは増えてきます。ですけど、完全な味方キャラだけの話ならアーサー以外知らないです。
新キャラ登場!ここから話を書くのが難しくなったのを覚えている




