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ロード・オブ・三国志X ~ 乙女ゲーム転生! 推し軍師・郭嘉の神技能を継承し、曹操を主君として、乙女軍師として征く三国覇道 ~  作者: 初美陽一
第四幕 Battle of RED CLIFFS !! ――運命を超えろ!!

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第36話 〝烏林〟の地に堅陣を敷くべし!

 長江――中華で最も雄大で、世界的に見てすら何と第三位の長さを誇る、最大級の大河だ。

 その圧巻に過ぎる自然の景観を、曹操軍の大船団が悠々と進む。けれど、そんな貴重な体験を楽しむ余裕は、私には無い。


『――諸葛亮孔明しょかつりょうこうめいが、劉備の軍師として迎えられただと!?』


 将官や軍師が集い協議する一室で、誰かが一大事とばかりに叫ぶ。

 まあ実際、荊州の時点で〝そうなっているはず〟と思ってはいたんだけど……複雑な要素が絡むシミュレーションゲームが根幹の世界と考えれば、確実とは言えないはずなので、まずは調査をした。


 でもやはり〝諸葛亮の劉備勢力への加入〟は間違いない事実。人物評の名人・水鏡すいきょう先生でお馴染み司馬徽しばきの『荊州に伏龍・鳳雛あり(※諸葛亮と龐統ほうとうのこと)』という言葉が有名で、曹操幕下の臣にも動揺はあるけれど……〝諸葛亮参戦〟の判明タイミング自体は、特に重要じゃない。


 はっきり言って諸葛亮が劉備に与した時点で〝天下三分〟の発生は、ほぼ確定だから――〝三国志〟というテーマにおいて重要な出来事のためか、このフラグは運命のように避けられないほどだ。


〝ロード・オブ・三国志〟シリーズの大ファンである私としては承知の上で、実のところ裏で色々動いていたんだけど……ここで曹操様が語りかけてくる。


「……甄嘉、またもキミの予見通りになったな。危険な軍師の存在に気付かぬまま長江を下れば、思わぬ策略を受けていたやもしれん」


『! 何と……劉備軍の偵察は、あの女軍師殿の主導と?』

『龐統は孫権勢力下の、江南の地に入ったとの噂もあったが……諸葛亮の行方はどれほど諜報を放っても不明であったのに……』

『情報の狙い所の、何と的確なことよ……彼女は情報戦の達人か……!?』


「……イエ、むしろこれほど情報を得るのが遅くなり、誠に申し訳なく……恥じ入るばかりです」


「フフッ、相変わらずの奥ゆかしい謙虚さだが……偵察や諜報は、荊州に南下する以前から放っていた、というではないか。他の誰も、そこまでの先見をもって行動していなかった。甄嘉でなければ成し得なかったことと、おれは思うぞ」


「それは……い、いえ、恐れ入ります。…………」


 曹操様や諸将は大いに評価してくれるけど、私の不安はむしろ煽られる。そう、私は本当に以前から――何と蔡琰ことサイちゃんと出会った頃から、偵察や諜報を荊州に放っていたのだ。この辺りは荀彧殿にも、それとなく協力を求めたけど。


 でも今まで、諸葛亮の情報だけは()()()()()()()()()()

 普通なら、居場所すら分からないなんて、ありえない。()()()()()()()、何らかの情報は得られるはずなのだ。


 こんなの、まるで――誰かが()()()()()()()()()としか思えない――


(……やっぱり劉備勢力にも、私やサイちゃんと同じ〝転生者〟がいる……!)


 サイちゃんと出会った時には可能性として浮上し、長坂の戦いで強く存在を感じ、今まさに確信した――〝敵の転生者〟の存在!

 しかも行動から察するに、サイちゃんと違って〝ロード・オブ・三国志〟を()()()()()。とすれば、これから起こる運命の大戦の重要性も承知のはずだ。


 劉備・孫権という三国志を象徴する二英傑が同盟を組み、曹操勢力にとっては、ただでさえ厄介な大戦。

 そこに〝転生者〟という非常に大きな影響力を持つ、不確定要素まで加わるなんて――郭嘉様から受け継いだ神技能〝神算鬼謀〟を持ってしても、先は見通せない。


 ……でも、だからといって、早々に諦める訳にはいかない。


「さて、伏龍と称される軍師の加入は捨て置けぬが、我が大軍と比ぶれば劉備は寡兵……恐るるに足らぬだろうが。……甄嘉、キミはどう思う?」


 諸将より、まだまだ日の浅い女軍師に問う曹操様に、室内でざわめきが起こるも――私は怖じることなく、堂々と献策した。


ハイ、曹操様。劉備の下には確かに優秀な武将や軍師が多くおりますが、一勢力ならば兵数の差で圧倒できます。が……伏龍・諸葛亮が権謀術数を操るなら、話は別。まず確実に――わが軍にとって厄介者の二大勢力は、繋がっているでしょう」


『!? 劉備と孫権が、同盟だと!?』

『馬鹿な、孫権の臣・魯粛とかいう輩が、劉備に接触したという情報は聞いたが……それだけで同盟など、話が飛躍しすぎじゃ! 空想が過ぎますぞ!』

『そも、我らが劉備を討伐するとしても……孫権が曹公(※曹操)と敵対する明確な大義など無いはず! 江南を侵略している訳でもあるまいに――』


「諸将・諸官の意見はもっとも。ですが私の絵空事が現実となれば、わが軍は意図せぬ勢力からの奇襲を受け、必ずや大打撃を被ることとなりましょう。袁家を打倒し、荊州を治め、もはや比肩する者のない大勢力となった今こそ、改めて慎重となるが肝要。そのために……曹操様、並びに先達の皆々様、船室を出て、ご覧ください!」


 私の突然の要求に、曹操様以外は困惑しつつ、好奇心が勝ったのか従ってくれた。すると、船団の進行方向に、秘していた策戦の一つが見えて――更に聞こえてくる。


『――おうい! こちらですぞ、ご主君、皆々様――!』


「むむむ――あれは荀攸じゅんゆう! おお、賈詡かくを初めとした、おれの智嚢の軍師たちが、既に川岸に陣営を張っておるではないか――!」

「曹操様、曹操様、司馬懿しばい殿もおりますよ♡」

「アッハイ、ほんとだ……い、いや! 彼の実力は間違いないと、おれも認めるところ! うん、頼もしいではないか――」


『クックック……臭う、臭いますよ……天をも赤く染め抜くような、尋常ならざる大戦の気配が……楽しみですねェ……ククッ、クハハハーッ!』


「大丈夫なのかな……大丈夫なのかな、なあ甄嘉!?」

「ダイジョブデスヨ~♡」


 やはり微妙に苦手意識があるらしい曹操様に、やや雑めに対応し――既にして強固なる陣を敷いていた川岸に、船団を停泊させる。

 すると出迎えてくれた面々を代表し、荀攸殿が手を合わせて礼を示しつつ言った。


「我ら一同、この地――〝烏林うりん〟に、堅牢の陣営を敷き申した! これも甄嘉殿の献策によるもの。地形の選別、的確なる先見、甚だお見事!」(好感度↑↑)


 荀攸殿は絶賛してくれるけど、これも三国志知識があるおかげだ。むしろ初めての地に、まるで城砦を思わせる陣営を築いてくれた荀攸殿たちこそ、さすが天下の曹操軍・軍師と称えたくなる。


 これこそ、曹操軍・最大の危機となる戦を乗り越えるための、まずは一つ――戦場となる〝烏林〟に先んじて陣営を築き、戦闘準備を整える。


 荀攸殿や重臣の軍師を動かすのは、もちろん事前に曹操様から許可を得ていたけど、情報漏洩を防ぐため詳細は伏せていた。

 驚かせてしまったのは申し訳ないけど、ここまでやれば、現時点で参戦の意志は不明な孫権勢力による奇襲も……ッ!


『ッ――報告いたします! 船団の進行予定であった方角から……突如、大船団が現れました! さすがに、我が軍より数は少ないものの、その……船には〝孫〟の旗が、掲げられており……!』


 兵の報告が示す通り、長江の勇壮な景観の只中で、大船団が左右の断崖を通せんぼするように密集していた。

 それはまるで、水上に陣を敷くかの如し――知らず進んで奇襲を受けていたら、圧倒的多数の曹操軍とて、致命的な損壊は免れなかっただろう。


 何にせよ、これで〝孫権勢力の参戦〟は確定で、まだ疑っていた諸将・諸官も気を引き締めたはずだ。

 孫権軍も、こちらが存在を認識したことに気付いたのか、船団を進めてくる。……さすが水戦上手で知られる孫呉、逆に水戦に不慣れな曹操軍と、数の差も感じさせないほど互角に渡り合っていた。


 とはいえ、まだ前哨戦の段階で、陣を敷いた〝烏林〟にまで、争いの火は届いてこない。まずは奇襲を防げたのは、上々の成果と言えるだろう。

 そう、この曹操軍にとって〝負けイベント〟とさえ揶揄される大戦において、一つ一つの損害を徹底的に潰していくことが、何より大切だから。


 俄かに慌ただしくなった陣営で、曹操様や荀攸殿たち軍師が指揮を執る……そんな中。


「劉備が迎えた軍師、諸葛亮、孔明……でしたか。ふむ、気になりますねぇ……」


 既に何か、感じているのか――諸葛亮孔明の運命の好敵手ライバルとも呼べる司馬懿殿が、糸のように細めた目の片側を開き、鋭く輝かせた。

 ……まあ意味深な言動が多い人なので、()()()()()()なのかもだけど……う~ん、こうして目の前にすると、一層()()()()人だなぁ……。


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