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【連載版】無能令嬢と呼ばれ婚約破棄された侯爵令嬢。前世は『伝説の大魔女』でした。覚醒後、冷遇してきた魔法学園にざまぁして、国を救う。  作者: シルク


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 <赤色荒野の断崖(レッドクリフ)>魔物討伐作戦。

 

 荒野の上から私が魔法で魔物を爆撃。

 ジョアキン率いる地上部隊とビッキーがその取りこぼしの魔物を討伐。

 

 その繰り返しが一週間続いた。

 

 おそらくこの一週間で、私は千体以上の魔物を倒しただろう。

 地上部隊も100体以上の魔物を葬った。

 

 サンドル王国の兵士達は、レジュッシュ王国側の動きに困惑した様子で、何度も斥候部隊を派遣し、掃討作戦の様子を見に来ていた。

 斥候をみかけると、私は魔法で大風を起こし、大雨を降らせて彼等を追い払った。

 魔物討伐の邪魔だ。

 攻撃魔法の爆撃に巻き込んだら大ごとだ。

 

 そして。

 私は討伐作戦七日目のノルマを終えた。

 明日の八日目で最後のブロックの処理をしたら討伐は終わる。

 

 飛行魔法で砦に戻ると、砦の門の前に大きなレッドスライムが湧いていた。

 

 討伐で倒しそこねたスライムが棲む場所を追われ、群れとなり巨大化したのだろう。

 砦の魔法使いと兵士達が集まり、必死にスライムと戦っていた。

 だめだ。

 あの人達は、あの大きなスライムに立ち向かうには弱すぎる。


 私は飛行魔法の行く先を変え、スライムと彼等の間に降り立つ。

 そして強力な水の魔法、そして闇の魔法をかけ合わせて呪言を唱える。


「『凍れ』」


 はい、一丁上がり。


 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 「リンジー、よくやった!」


 よく通る低い声。

 砦の門が開き、鎧姿の筋骨隆々の武人の姿が現れてお出迎え。

 ジョアキンだ。

 

 彼は短く刈り込んだ赤銅色の髪の毛の頭をかきながら、私の側までやってきた。

 

「これで<赤色荒野の断崖(レッドクリフ)>の魔物はほぼ殲滅出来ただろう。

 残りの魔物は数える程度だろうな。

 魔物が一掃された大地が手に入るとなれば、隣国サンドル王国も<赤色荒野の断崖(レッドクリフ)>を引き受け、他の自由国境地帯の領有を諦めざるを得まい。

 向こうが言い出した交渉事なのだからな。

 ハッハッハ!

 俺が育った<赤色荒野の断崖(レッドクリフ)>がサンドル国のものになるのは寂しいものだが……なに、それでこの砦が消えるわけでもない。

 俺は時々、この砦から平和になった<赤色荒野の断崖(レッドクリフ)>を眺めてリンジーの活躍を思い出すとしよう!」


 ジョアキンは、豪胆に笑いながら私の手を握りぶんぶんと握手をしてくる。

 私は彼の汗ばんだ手にうっとなって、そっとその手をそっと放した。


「契約ですから。私は王との約束を果たしただけです。

 さて。最後のブロックの魔物討伐は明日ですね。

 本日はもう休ませて頂きます」

「おい。リンジー」

「はい?」

「あの。そ、その、よければ……よければだな!前祝いに、こここ今夜一杯、俺とどうだ?」


 三十過ぎの武人の大柄な体が幾分もじもじとしている。

 恥ずかしそうに視線をつま先に落とし、頬を赤らめてどもりながら誘ってきたジョアキン・ギマラン公爵。

 ああ、そういうお誘い?

 

 私は軽くため息をついて首を横に振る。


「明日も早いですので、遠慮します。

 それでは」


 「そ、そうか――。

 明日も頼むぞ、リンジー・ハリンソン侯爵令嬢」


 私は振り返らず、砦の与えられた部屋へと戻った。

 途中で仮面の女騎士ビッキーが私を見つけて飛びついてくる。


「どうかされたのですか?お姉様。疲れたご様子ですわね」


 ……この子には、先ほどのジョキアンからのお誘いの件は黙っていた方がよさそう。


「なんでもないわ。ビッキー。

 もう七日目だけど疲れていない?明日の掃討作戦は大丈夫そう?」

「ええもちろんですとも!私、お姉様に尽くす事が生きがいのように感じているんですもの。

 どんな魔物が魔法から逃げのびても!

 私の剣と闇と風の混合術で仕留めてみせますから。お姉様。安心して下さいませね」


 仮面の奥で子供のようにはしゃいで、嬉しそうなビッキー。

 一度懐くと、すごくいい子……。そして何より、強い!

 

 ここまで懐かれるとちょっと引いちゃうけど……この子は真面目で忠実。

 とても信頼が出来る子のようだ。

 元婚約者、そして彼女の兄であるアンドルーに、ビッキーの爪の垢でも飲ませてやりたいもんだわ。

 

「私は疲れたから休むわ。ビッキーもしっかり休むのよ」


「はい!お姉様!」


 ビッキーはビッと騎士の敬礼をすると、優雅な歩き方で砦に与えられた部屋に下がって行った。

 

 やれやれ。

 この戦地での職務が終われば、私の『望み』は王によって叶えられる。

 それまで、遊んでいたり、ジョアキンのナンパに引っ掛かっている場合ではない。

 しっかり休んで明日の掃討作戦最終日に備えないとね。

 

(続く)

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― 新着の感想 ―
[良い点] ヴィッキーが強キャラに育ってきて良いですね 身分に溺れず腕を磨いてきた人がヒロインに負けて退場のままだったら気の毒なので [気になる点] ジョアキン公、良いキャラだなと思ってたらおいおい……
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