掃除
村田との契約は月水金の週三回なのに
掃除が気になって、毎日行ってしまっている美桜だった。
忙しくても漫画は読めるんだな…。
棚に入りきらない漫画を、段ボールにしまいながら思う。
でも押し入れが空いてたから、思ったより楽に綺麗になった。
棚に入りきらないものは、全部押し入れに入れていいよ、と
村田が言ってくれて助かった。
ホコリ取りをして綺麗になったソファに座って、窓の外をみてくつろぐ。
窓ガラスも磨いたから、景色がより綺麗に見える。
最初はどうなることかと思ったけど、汚部屋をキレイにするのって楽しいかも。
仕事にできるかなあ。
ああ、でも知らないおじさんの汚部屋をキレイにできるのだろうか。
んー、無理。ゴミ集めすら無理かも。村田だから許せるんだなあ…。
それに1年しか経ってないから、まだキレイなほうかもしれないし…。
何てことを考えていたら、眠くなってきた。
ちょっとだけ、と思ってソファに寝ころぶ。
気持ちいい…美桜はすぐに寝てしまった。
ちょっと寒いな、と思って起きると、もう夕方だった。
5時かあ。帰ってうちのご飯作らないと、と思うが動けない。
夕焼けが綺麗で見とれてしまう。やっぱりいいなあ。この家。
ぼーっと見ていると、ガチャガチャと鍵を開ける音がして、玄関が開く。
村田が帰ってきた。
「あ、美桜。」
美桜の顔を見て、笑顔になる村田。
「おかえり。こんなに早く帰れるんだ。」
「まだ仕事があるから、一旦帰ってきたんだ。
これからまた会社に戻る。」
「えー、大変だね。」
「帰れず徹夜するよりマシなんだ。美桜はもう帰るところ?」
「そろそろ帰ろうと思ってたけど…。
ご飯を食べてから会社に行くの?」
「うん。美桜のご飯が食べたくて、帰ってきたようなものだよ。」
「じゃ、あたためるね。シャワー浴びてていいよ。」
上着を脱ぎ、ネクタイをはずしている村田を見て
美桜は言い、キッチンに向かう。
「ありがとう。」
村田は、食事の支度をはじめた美桜に言った。
「味噌汁も作ったよ。はい、どうぞ。」
「いただきます。」
何もしてないのにご飯が出てくるって、なんて幸せなんだろう。
もしかして美桜がいるかも、と思って早めに帰って良かった。
美桜がいた形跡だけでいい、とは思うものの、やっぱり顔が見たかった。
手作りの味噌汁も美味しい。
…いつも居てくれたらいいのにな。…いやいや、飛躍し過ぎだ。
今は家に来てくれるだけでいいだろ。一年も会えなかったんだから。
…でも、いつか、そんな日が来たらいいなあ。可能性はあるんだろうか。
ゼロではないよな。今ここにいてくれているんだから。
「…やっぱり夜景も綺麗だね。」
カーテンの隙間から、外を見ていた美桜が言う。
「どんな夜景か、見たかったんだ。」
「そうなんだ。いつでも入って見てていいよ。」
「ありがとう。でも用がないのに家にいたら、
家政婦じゃなくて不法侵入者だよ。」
「いいじゃん、友達なんだから。」
「あんまりいないよね、合鍵持ってる友達。」
笑って美桜が言う。
じゃ、また彼女になって、って言ったらどうなるのかな。
…きっと嫌がるよな。美桜はそんな軽いノリで戻ってはくれない。
真面目で怖がりだから、ゆっくり、焦らず、また心を開いてくれるのを待たないと。
「あ、ママが彼氏をつれてきたとき、家に居辛いから
ここに避難しようかな。本とCDも持って来て。
で、村田が帰ってきたら急いで帰る。」
無邪気に笑って、美桜が言う。
「何だよそれー。嫌われてるみたいじゃん。」
村田も笑って答える。
うん、美桜が笑うのが一番いい。焦らずに時期を待とう。
今は美桜がここに来てくれるだけで、十分だ。
「…村田に会いたかったんだ。」
突然の言葉にドキッとする村田。
「朝ごはんにフルーツ切っておいても食べられないかな。
パンだけじゃ野菜不足だよ。」
あ、そういうことね…。
「じゃお願いします。」
ちょっと残念そうに言ってしまう。
「あ、使ったものは元に戻すこと。それだけはよろしく。」
「はい。」
付き合ってた頃から言われていたのに、未だにできなくて申し訳ない。
「日用品の買い物とか、おつかいとかもあったらメールしてね。」
「うん。」
一週間のお試しなのに、大丈夫そうだな。
ずっとこのまま、ここに来てくれるといいな、と思う村田だった。




