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ゴミ

徹夜と残業続きで眠いはずなのに、

美桜のことを考えてしまって、眠れない。

相変わらず可愛かったなあ。電車が混んでて結構近づいちゃったし。

美桜ちょっと照れてたよなあ…。

いや、俺が酒臭いからうつむいてただけか?まあいいや。

あー、また明日も会えるなんて信じられない。強引な俺グッジョブ。

それにしても、美桜がここに来るなんて…。

どうしよう。どこまでしていいんだろうか。

…いや、落ち着け。何もしてはいけない。

一年ぶりに会ったばかりだぞ?何かしていいわけがない。

でも、家に来るんだし、美桜もそれなりに予想してるんじゃ…。いやいや…

なんて考えていたら、心も体も興奮してしまって、やっと寝付いたのは深夜だった。

だからといって、午後まで寝るとは自分でも思わなかった。


”ピンポーン”玄関のチャイムが鳴って、目が覚めた。

美桜が来た。はっとして起きる村田。

こんなこと前にもあったな、と思いつつドアを開けた。

「…寝起き?…おはよう。昼過ぎだけど。」

寝癖の頭を見て、美桜が笑って言う。

「うん。疲れてて…。」

美桜のことを考えてて、眠れなかったとは言えない。

それにしても、せっかく美桜が来てくれたのに、

寝癖頭にスウェット姿で出迎えるなんて。

美桜に何かできる可能性は、もう無いな。

変な妄想してないで、早く寝ればよかった。

後悔して落ち込む村田をよそに

「ゴミ、出せないの?」

美桜は、冷蔵庫の横に溜まっているゴミ袋を見て言った。

「うん…。朝ぎりぎりに起きて行くから、なかなか出せない。」

慌てて外に出て、ゴミ置き場の前を通るときに

今日はゴミの日だった、と気付くんだよな。

美桜は部屋の中に入り、見回しながら

「なかなか、すごいね…。」と呟く。

壁には干したまま片付けてない洗濯物が、ずらりと並び、

床には棚に入りきらない漫画やゲームが散乱していて

ベランダまでたどり着けそうにない。

それに、何でこんなに段ボールがあるんだろう。

引っ越して一年も経つのに。美桜の顔が曇っていく。

昨日食べた弁当の容器が、テーブルに置きっぱなしなことに気付き

片付けながら村田は弁解する。

「忙しくて、全然片付けられないんだ。早起きして

 掃除しようと思ってたんだけど、無理だった。ごめん。」

「うん…大丈夫…。」

全然大丈夫そうではない顔の美桜。ふと、目を輝かす。

「村田の家から見える景色は、どこもいい眺めだね。」

窓の外を見て、微笑んで言う。

「そう?全然気にしてないんだけど。」

笑顔になった美桜に安心する村田。

部屋の汚なさに呆れて、もう帰っちゃうかと思った。

「で、お願いって何?」

ソファに座って美桜は言う。

美桜は単刀直入だ。

シャワーを浴びて寝癖を直したいけど、それを許してくれそうにない。

美桜には、寝癖なんて嫌ってほど見せてるからなあ。仕方ない。

寝癖をなでながら、村田は丁寧に頭を下げて言う。

「…お手伝いさんになってもらえませんか。」

「お手伝いさん?」

「この汚い家を何とかしてください。お金は払います。」

「家政婦ってこと?」

「うん。忙しくて、どうしようもないから、プロに頼もうと思ってたんだ。

 でもどうせなら美桜がいいなと思って。安心だし。」

付き合っている時も、村田の家のことは美桜が全部やってくれた。

大学の時に住んでいた清潔な家を思い出す村田。

美桜は腕を組んで考えている。部屋を見回して、

「プロ並みのお金、もらうよ?」と言った。

「いいよ。」

村田は美桜の隣に座って、昨日ブックマークしておいた

家事代行のページをスマホで見せる。

「これと同じメニューでお願いします。」

村田からスマホを受け取り、じっくり見る美桜。結構高給なんだな…。

「大丈夫なの?お金。」

「うん。忙しくて全然使えないから、貯まりまくってる。」

大学の時はお金が無くて、うちのご飯をよく食べに来てたのに。

掃除も料理も苦じゃないから、問題ないけど…。

でもなあ。元カレの家の家政婦ってどうなの?考え込む美桜。

「…まずは、お試しで一週間。どう?」

村田が言う。

「うーん…。」

何となく不安な美桜。何か起こりそうな気がする…。

美桜の難しい顔を見て、村田は意を決する。

「お願いします!綺麗な家に住みたいんです!」

ソファから降りて、土下座をした。

…村田ってすぐに土下座するんだよね。慣れてしまって動じない美桜。

まあ、でも、確かに片付け下手の村田じゃ、

この部屋はいつまでたっても綺麗にならないだろうな。

「一週間やってみて、無理だったら、断ってもいい?」

村田の腕を引っ張って、ソファに座らせながら美桜は言った。

「もちろん。」

「じゃ、よろしくお願いします。」

丁寧に頭を下げる美桜。

「なにとぞ、よろしくお願いします。」

村田も深々と頭を下げた。

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