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村田

みんなの話を聞きながらも、

村田の頭の中は、美桜のことでいっぱいだった。

何で光のこと、言ってくれなかったんだろう。

ちらっと美桜を見ると、楽しそうに笑ってる。

俺の気も知らないで…。


今日美桜に会うのは、楽しみではあったけど、怖い気持ちもあった。

この一年間は仕事が忙しくて、恋愛なんてそっちのけだった。

でも、大崎に美桜も来ると聞いたときから

仕事が手につかなくなってしまって、困った。

美桜にやっと会えると思うと、胸が痛くてしかたがなかった。

必死に忘れようとしていた古傷が、再び熱を持ってしまったかのようだった。

美桜は光が好きなんだ、もう俺には戻ってこないんだと

自分に言い聞かせても、美桜を思うと胸は痛むばかりだった。

俺、美桜に会ったらどうなるんだろう、心臓が止まって死ぬんじゃないか?

もしくはあまりの嬉しさに、襲ってしまったらどうしよう…。

でも、そんな不安を、美桜の笑顔は全部さらってくれた。

そうだ。いつもそうだった。美桜の笑顔は、絶対に俺を幸せにしてくれた。

美桜と会えた事が嬉しくて、しかたがなかった。

…光の話を聞くまでは。


光のこと好きだって言ったのは、空耳だったのかな。

いや、そんなことはない。

別れた後、学校で二人が歩くのを見かけたし、

卒業式で俺と話す美桜を、遠くから光が見張ってた。

なのに、つきあってないって。

光が好きだから別れたいって言ったんだよなあ。

気が変わったのかな。じゃ、何で何も言ってくれないんだろう。

新しい彼女とは別れたってメールしたのに。

……そうか。…俺のことはどうでもいいのか。

俺は美桜に会いたくてしかたがなかったけど、美桜はそうじゃなかったんだ。

美桜にとっては、俺が彼女と別れようが、付き合おうがどうでもいいんだ。

そりゃそうだよな…。別れた男なんてどうでもいいよなあ。

光のことを好きじゃなくなったからといって、

俺をまた好きになってくれるなんて、都合よく行くわけないか。

女の子はさっぱりしてるって言うし。


…あれ。俺、美桜に怒る権利なんて、無いんじゃないか?

っていうか、すごく迷惑だよな。

元彼だからって、何で言ってくれないんだ、なんて怒って。

…やばい。嫌われる。

光がいないというせっかくのチャンスなのに、嫌われたら戻れないじゃん。

せめて友達でいないと、それ以上なんて無理じゃん。


「…な、村田。」

突然名前を呼ばれて我に帰る。

「村田、聞いてなかっただろ。」

大崎が冷たい目で言う。

「ごめん。えーっと、和美の彼氏の話だよね…。」

「もうその話はとっくに終わってるよ。

 村田の仕事が忙しいんだよなって聞いてるんだよ。」

大崎はぶちぎれ一歩手前だ。これはまずい。

「…ああ、うん。すごく忙しいんだよ。

 今週が山場でさ、徹夜と終電の繰り返し。」

引きつった笑いで答える村田。

「プログラマーだっけ?そんなに大変なんだ。」

和美が驚く。美桜も心配そうな顔。

大崎は…まだちょっとむっとしてる。

「いやでも、慣れれば何てことないよ。」

心配顔の美桜に笑顔で言う。

「ほら、バスケの打ち上げで、盛り上がって夜通しカラオケしたじゃん。

 あれで慣れてるからかな。結構徹夜は平気なんだよね。」

「よくカラオケしたよね。私は寝てたけど。」

笑って美桜が答える。

「仲が良かったわよね、バスケサークルは。うるさいくらい。」

和美も笑う。ちらっと見ると、大崎も少し笑っている。

…危ない危ない。せっかく美桜に会えたのに、帰れって言われたら終わるからな。

よし、光のことは置いといて、美桜が喜ぶ会話をしよう。

それに、美桜にお願いしたいこともあるし。

村田は人が変わったように、笑顔で思い出話を始めるのだった。

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