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別れ

和美の話はそっちのけで、

村田は、美桜と別れた時のことを思い出していた。


大学4年生になると、美桜は文学部の卒論に写真研究会の卒展、

村田は就職活動に経営学部のゼミ、とお互いに忙しく、

学校で二人が会うことは、珍しいことになってしまった。

たまに美桜は村田の家に来たが、

写真の現像に集中しすぎて、帰れなくなった時ばかりだった。

そういうときの美桜は疲れていて、話をしても

えっちをしても、何となくぼーっとしていた。

忙しい時期が終わるまでの辛抱、と思ってはいたが

さみしい村田だった。


そんな時に1年の光が写真研究会に入部した。

久しぶりの部員に美桜は喜んでいた。

でも何か暗いやつで、何となく村田は好きになれなかった。

光の写真はすごい、光も文学部だから話が合う、と美桜は光の話ばかりした。

光の話はもういいよ、と村田が怒ると、それきり光のことは何も話さなくなった。


ある日、村田が学校を歩いていると、光に会った。

「美桜を僕にください。」

突然言われた。

何言ってんだ、こいつ。呆れて笑ってしまった。

「美桜を自由にしてください。」

段々腹が立ってきた。それに、美桜って呼び捨てにするなよ。

「君に言われる筋合いはないだろ。」

睨みながら村田は答えた。

ちゃんと光の顔を見たのは、それが最初で最後だった。

光の目はするどく、寒気がするほど冷たかった。

喧嘩をするのは簡単だけど、美桜はどう思うだろう、と考えていると

ふっと鼻で笑った様な顔をして、光は行ってしまった。

追いかけて殴ってやろうとしたが、

「村田ー」と遠くで呼ぶ声が聞こえて、できなかった。


その三日後に、美桜から別れを切り出された。

「光が好きなの。」

美桜は、はっきりと言った。

意志の強い目だった。これは無理だなと思いつつも

あんな奴どこがいいんだ、と言ったり、

さみしい、と抱きついてみたが、美桜は動じなかった。

もうどうしようもないんだな、と思って、

「わかった。別れよう。」と村田は言った。

せめて最後だけは引き際のいい、男らしい恋人でいたかった。

玄関で最後に美桜の顔を見たら、泣いていた。

自分から別れたいって言ったのに、何で泣くんだよ。

泣きたいのは俺のほうだ、と言いたかったが、言えなかった。

かわりに、腕が勝手に美桜を抱きしめていた。

これが最後、と言い聞かせて、美桜の髪を撫でた。

撫でれば撫でるほど、美桜の涙は溢れてきて

どうしたらいいかわからなかった。

ただ、美桜には幸せでいてほしいと願った。

ひとしきり泣くと、美桜は「ごめん」と言って帰った。

それが二人の最後だった。

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