再会
村田と会うのは久しぶりだ。大学を卒業してから1年。
村田と別れてからは1年半経っていた。
キラキラと輝く夜の街を抜けて、美桜は約束の店へ向かう。
予約席に案内されると、見慣れた顔が並んでいた。
「美桜、遅い~。」
顔を見た途端、和美が非難の声をあげる。
「ごめん。時間読み間違えてて、予想以上に時間がかかった。」
美桜が言い訳をすると
「自由人は電車乗らないもんね。いいなあ。」
大崎が言った。
美桜は笑って頷く。
「…相変わらず、バイト暮らしなんだ。」
村田が口を開いた。
久しぶりに見る村田はスーツを着ているせいか
やけに大人びて見える。
「ううん、今は完全に自由。
カメラアシスタント、クビになっちゃった。」
「モデルさん、怒らせちゃったんだっけ?」
和美の言葉に、美桜は頷く。
「どうやら私は、言葉に無頓着すぎるらしい。」
「どうせ、ダイエットってそんなに大変なんですか?とか
無神経なこと言ったんでしょ。自分は関係がないからって。」
「まあ、そんなところ。」
和美には何も隠せないな、と思う美桜。
「じゃ、今はお母さんの手伝いしてるの?」
村田が心配そうな顔で聞く。相変わらず優しい。
「うん、こき使われてるよ。この前、
デートの送り迎えまでさせられて、限界を感じた。
そろそろ真面目に仕事を探さないとね。」
「村田の会社で、事務とか募集してない?いい会社なんでしょ。」
和美が聞くが
「うん…。」
何か考え込んでいるような村田。
「いいよ。毎日働くのはきつい。家事も母の運転手もあるから。」
「何かいい仕事、あるといいわね…。
ところで、光は音沙汰無いの?」
急に言われて、焦る美桜。
「和美、光の話はしないって…。」
「何、光君、どうしたの?」
大崎が食いつく。
大崎君はこういうことは絶対に、聞き逃さないんだよなあ。
まだ会って5分も経ってないのに、もう帰りたい美桜だった。
和美は美桜の様子を気にせずに、話し始める。
「光、いなくなっちゃったのよ。」
「え?どういうこと?」
大崎が聞く。
村田は眉間に皺を寄せて、固まっている。
「撮影の旅に出るってメールだけよこして。半年前だっけ?」
しぶしぶ頷く美桜。
「で、美桜は光のこと、待ってるの?」
大崎君は相変わらず鋭い。
「う…うーん。」
「別にいいのよね。付き合わなかったんだもん。」
それも言われるか…。
和美っておしゃべりだよね。今更思う。
まあ半年伝わらなかっただけ、マシなのか。
「付き合ってなかったの?」
村田がとうとう口をはさむ。
「…うん。」
美桜は、村田の目を見ることができない。
「なんで?好きだったんでしょ。」
珍しく問い詰める口調。そして険しい顔。少し怒ってるかなあ。
「好きだけど、つきあうのは何か違うなって思ってたら、
どっか行っちゃった。」
「何で言ってくれなかったの…?」
…違う。村田は怒ってるんじゃなくて、悲しいんだ。
あーあ、だから言うの嫌だったのに。
「村田は彼女出来たんでしょ?」
和美は、美桜に助け舟を出したつもりだったが
「別れた。美桜にもメールした。」
村田にはっきり言われ、意味がなかったと気づく。
確かにメールはもらったけど、
『彼女とは別れた。何かあったら連絡して。
ずっと待ってる』
って未練たらたらで、なんて返事していいかわからないよ。
「そういった込み入った話は、あとで二人でしてね。
せっかく久しぶりに四人で会ったんだから。」
釘をさすように村田を見ながら、大崎が言う。
「和美の彼は元気?アメリカの人なんだっけ?」
「うん。元気よ。」
話題が変わってほっとする美桜だが、村田は相変わらず悲しそう。
予想はしてたけど、ここまでとは。
和美と大崎の話を聞きつつも、視界の隅の村田が
自分を責めている気がして、落ち着かない美桜だった。




