光
光から電話をもらったのは、昨日の夜だった。
今日は雅巳の家に行く日なので、午前中に会う約束をした。
光の家についた美桜は、玄関のチャイムを鳴らす。
何も音がしない…多分寝ている。
残念ながら光の家の合鍵はないので、待つしかない。
10分待って出なかったら、電話しよう。
そう考えていたら、ゆっくりドアが開いた。
懐かしいメガネ。ボサボサの頭。あ、でも日焼けしてる。
光の肌も焼けるんだ、と思ってしまって、少し笑う。
「おはよう。ごめんね、早くて。」
言いながら家に入る。
「うん。」
この、うん、は「別にいいよ」という意味だと美桜は知っている。
「いつ帰ってきたの?」
「おととい。」
なんで?って聞きたかったけど、それはいいか、と思った。
会った頃、光を知りたくて、たくさん質問をした。
でも光は答えたい質問にしか答えない。
質問するのをやめると、光は話したいことをゆっくりと話しはじめた。
光には光のリズムがあるんだな、と美桜は思った。
ちょっとそれは私とは違ってて、心地よい時もあるけど
待ちくたびれることもあった。そんなことを考えていると、
「これ。」
光が写真をテーブルの上に置いた。
「旅で撮った写真?」
「うん。」
美桜は写真を手に取る。
…やっぱり、すごい。どきどきする。
私には、こういうふうに風景を切り取る発想がない。
色も、この色を撮ろうとは思わない。
だからこそ、好きなんだ。
私が撮れる写真じゃないから、光の写真が好き。
ああ、そうだ。私は光の写真が好きなんだ。
離れていたから、よくわかる。
光自身じゃなくて、光の写真が好き。
好きすぎて、光に近づきすぎて、わからなかった。
「美桜。桜の写真、撮りに行こう。」
「…うん。」
何も話せていないけど、光の提案は珍しいので、受け入れることにした。




