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次の日、美桜が村田の家に行くと、テーブルの上のガーベラはしおれていた。

これを見ながら村田は、ここでご飯を食べたのかな。

何だか申し訳ない気持ちになる。やっぱり二日に一度じゃこうなるよね。

花を置くのはもう止めよう。

ベランダの花も見てみる。土が乾いていて、花も元気が無い。

週末はもっと来ないんだから、プチトマトは諦めよう。

大学4年の時も、忙しくて村田の家になかなか行けず、ベランダの植物たちをたくさん枯らしてしまった。

悲しむ私に、村田は謝ってくれたなあ。毎日、水はあげてたんだけどって。

水のあげすぎも良くないんだよねって、思わず言ったら

そうなんだ、ごめんね、ってまた謝らせてしまった。

来年はここにいないんだから、ちょうど良かったんだよって

励ますつもりで言ったのに、村田は寂しそうな顔をしていたな。

私、別れた頃、ちゃんと村田を笑顔にできていたっけ。

4年生になってからの半年は、忙しすぎて

村田とどう過ごしていたか、あまり覚えていない。

思い出すのは、村田の寂しそうな顔ばかり。

…それでも私を抱きしめてくれる腕は、優しかったな。


もう緑を増やすのは止めよう。

花が終わったら、このプランターはうちに持って帰ろう。

また枯らしてしまったら、きっと村田は悲しむから。

それに家政婦さんは、そんな頼まれてないことしないよね。

私、頼られて、うれしかったのかもしれない。

村田を振ったくせに出しゃばり過ぎだ。

やっぱり家事を仕事にするのは、私には無理だな。

家はもう綺麗になったんだし、他の仕事を探そう。

村田にはちゃんとした家政婦さんを雇ってもらおう。


花瓶の水を替えたら、ガーベラは元気になった。

ベランダの花たちも、水をあげたらすっかり元気だ。

…花は強いなあ。私は弱いよ。

ソファから窓の外を見る。

春を告げる風が、洗濯物を揺らしている。その向こうには淡く青い空。

…また写真を撮ろうかな。

光みたいな写真は撮れないけど、この風景は二度と見れないんだ。

またこの家には来るけど、ガーベラはもう枯れているかもしれない。

ベランダの花は風で飛ばされて、無くなっているかもしれない。

もしかしたら何かあって、二度とここには来れないかもしれないんだ。

でも、私がこの家で思ったことを無くしたくない。何かにとっておきたい。

美桜はスマホで、ガーベラとプランターと洗濯物と空の写真を撮った。

久しぶりに撮った写真は、思ったよりも悪くない。

また写真の仕事がしたいな、と美桜は思った。

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