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食べれません

しかし、最悪の事態は起こってしまった。

連日のトラブル対応で疲れた顔で課長が言う。

「村田…。悪いんだけど、そのプログラムの修正が

 終わるまで帰らないで。急いで対応せなあかんねん…。」

「はい…。」

薄々感づいてはいたけど、とうとう帰れないか。

土曜出勤の上に、徹夜って最悪のパターンだな。

それに、美桜のご飯…。

もう家から会社に戻る電車が無いから、弁当を取りに行くこともできない。

昨日美桜が作ってくれた分だから、食べずに捨てろって言われるかもなあ…。

暗い顔の村田に気づき、課長が声をかける。

「ごめんな。彼女、待ってたりする?」

「あ、いえ。大丈夫です。」

本当は彼女じゃないから、待ってたりはしません。

でも美桜に、自分が作った料理を捨てさせるのは忍びない。

「…明日は帰りたいです。」

「ああ。それは大丈夫。村田ならできる。」

俺次第かよ…。しょうがねえ、やるか。

課長に返事をせずに、村田は再び仕事にとりかかった。


次の日、帰りの電車の中で美桜にメールをした。

『昨日徹夜でご飯食べられなかった。ごめんね』

すぐに返事が返ってきた。

『大丈夫だよ。お弁当は捨ててね。

 二日経ってるし、魚だから食べないほうがいいよ』

…やっぱり。美桜はこういうところ、厳しいんだよなあ。

美桜は敏感だから、すぐおなかを壊すけど、俺は全然平気なのに。

でも、嘘をついて食べても、絶対ばれるよな。美桜は鋭いから。

万が一、それで体調が悪くなったら、美桜が悲しむし…。

でも何とか食べられないものかと考えていると、また美桜からメールが来た。

『明日も仕事だよね?無理しないでね。

 何かできることがあったら言って』

美桜は本当に優しい。メールで気遣ってもらえるだけで、嬉しいよ…。

よし、絶対に無理しない、と思いつつ返信をする。

『ありがとう。明日のご飯楽しみにしてます』

明日は絶対帰る。で、美桜のご飯を食べたい。

俺の愛はトラブルなんかに負けないんだ。

徹夜明けの目には眩し過ぎる青い空を、

薄目で見ながら決意を固める村田だった。

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