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7.変化していく



「ぐっ...眩しい、ずっとダンジョンにいたからか光魔法でも浴びた気分だ。」


いつぶりかの日差しを浴びる。ジリジリと肌を焼くような太陽の光に少し嫌気を覚える。俺はダンジョンのクリア報酬として出てきた脱出ゲートをくぐって外に出てきた。

新発見のダンジョンなので転移した入口に人は1人もおらず、ダンジョンの前には色々な露店があるのが基本だが、そういったものもまだ何もできていない。


むしろ好都合だった、この姿を見られると人間かどうかも怪しまれる可能性もあるので、自分の幸運を喜びながら道を歩いた。


来た時は馬車を使っていたが、今はもうないのであいつらが乗って帰ったのだろう。通常ダンジョンの攻略は2~3日はかかる。初見攻略の場合その倍はかかるだろう。俺が穴に落とされたときはまだ1日目だったからあれから最低でも3,4日は経ってるだろう。


魔物は基本的に夜、または暗い場所を好んでおり、日差しの元ではそこまで見かけない。俺も深層種の人間となったことで日差しに対して嫌悪感を覚えるようになってしまったのかもしれない。

あれから歩いている途中で森からオークが出てきたので倒して食ってみてもう一つの変化に気づいた。


美味かった。


最初はあれだけ吐きそうになりながら食べていたはずなのに、今は美味くてたまらない。それに食欲も全く収まらない。1匹では全く足りず、2匹、3匹と「捕食」した。


『オークを「捕食」しました。経験値を獲得しました。スキル「突進」を獲得しました。スキル「神聖魔法」を獲得しました。』


次々と迫りくるオークを倒しては食う。


「あんな時間ぶっ通しで深層にいたんだ、もう俺も体も心も魔物に近づいちまってるんだろうな。」


『オーク・マージを「捕食」しました。経験値を獲得しました。スキル「MP自動回復」を獲得しました。』


深層種との戦闘を経験している俺からしたら、地上の魔物など敵ではなかった。口についたオークの血を腕でふき取りながら立ち塞がるオークの群れに向かって叫んだ。


「まぁいい...俺の邪魔すんなら....全員食ってやるよ!!」


俺は合計30000を超える俊敏ステータスで森を颯爽と駆けていた。









リンドが森を抜ける頃。


新ダンジョンの危険度がランカーズの初見攻略によって「C」と設定された。Bランク以下のダンジョンはダンジョン前での露店の許可が出ており、数人の大工が露店を出店する商人から雇われ、設置工事にやってきていた。


「な....なんだこの大量のオークの死骸は!?」


「いたるところに噛み跡.....魔物の共食いか...!?」


大工たちが見たのは無惨に転がる大量のオークの死骸。通常の死骸とは違いいたるところが食い千切られており、まさに目を塞ぎたくなるような光景だったのだ。


「オークも単体じゃそこまで強くないが、この量が一気に襲い掛かってくるとAランクの冒険者でも手を焼くだろ....それをこんなにも蹂躙できる魔物が近くにいるってのかよ....。こりゃ露店の出店どころじゃないぞ!」



「あぁ...もしかしたら幻の”龍種”が現れた可能性だってありえる...一旦帰って報告だ!!」


そういって大工たちは元来た道へ走っていく。この理解しがたい惨状を報告するために急いだのだった。











しばらく森を駆けていると、ようやく開けた場所に出られた。

タルタリ平原。大都市ウルドの前に広がる平原で、そこまで強い魔物も出ないので新人冒険者のレベル上げにうってつけの場所だ。

見るとまだピカピカの装備を着た若者たちが、必死にスライムを倒していた。


「...スライムはどんな味なのかな」


もう食べることしか考えられなくなった俺は、他の冒険者に見つからないようそっと平原に出て、スライムを一匹倒す。ドロドロと溶けていくスライムを手で掬って勢いよく口に流し込んだ。


『スライムを「捕食」しました。経験値を獲得しました。スキル「弱溶解液」を獲得しました。』


味はレモンのような酸っぱさと砂糖の甘味が口に広がる。デザートのような味わいで美味しかった。オークの脂の乗った肉をたらふく食べた後にちょうどよかった。


「普通の人間ならこんな味しないんだろうけど....食費がかからないのは助かるな。」


俺は先程倒したオークの脚の肉を食いながらスライムを倒して、それを掬って食べる。まるで前世の日本でいうバイキングにいるようだった。


「さ、あまり寄り道してあいつらに会っても良くないからな....さっさと行くとするか。」


俺は目の前にいたスライムたちをキレイに平らげて、次なる目的地に向かう。次に向かう先に選んだのは、大都市ウルドをライバルとし、ガートランド皇国の首都の座を狙っている都市、レアリアだ。

以前一度だけ足を運んだことがあるが、ウルドの公認パーティだとバレて門前払い。どうやらお互いの街のギルドマスターの仲があまりにも悪いらしく、ウルドの公認パーティは街に入れてすらくれないらしい。


ここならあいつらはもちろん入ってくることはないし、ウルドでみかけた連中に会う事もそうそうないだろう。

通常ウルド付近からレアリアまでは馬車を使っても2日ほどかかる距離にあるが、今の俊敏ステータスであれば30分もあれば到着する。





無事にレアリア付近まで到着した。


道中で倒したグリーンコブラから「毒牙」、アングリーベアから「切り裂き」と「威嚇」、プルーダックから「火炎」という計4つのスキルを得た。プルーダックは辛味が強くかなり美味しかった。

どれもそこそこいいスキルだが、特に良かったのが「威嚇」。C~Bランク相当のスキルだが、自分より総ステータスが低い相手をひるませるというものだ。俺の圧倒的高ステータスとかなり相性がいい。


「ひるんでる間に踊り食いしたらスキルってもらえんのかな?」


そんなどうでもいいことを考えながらレアリアの正面の門の前に辿り着く。


レアリアは高い城壁に囲まれており、正面の門以外から入るのは至難の業である。魔物による襲撃も防げるのでとてもいい防衛策ではあるが、それゆえに鎖国気味なところがある。俺にとってはそれが逆にありがたかった。


「次!!貴様!!見たところ冒険者のようだが、レアリアには何をしにきた!!」


列に並んで自分の番が来ると、門番に話かけられた。


「ウルドで職を無くし、大変困っておりました。レアリアはウルドと違って職が見つかりやすく、いい街だとお聞きしました。冒険者としての腕には自信があります!働かせていただけないでしょうか...?」


我ながら大根役者だ、と思う。あの時のガルガン程じゃないが、俺も人を指摘できるような演技力は持ち合わせていない。「大道芸」のスキルでもあればマシになるだろうか。


「そうかそうか、ウルドは人も冷たければ大した職にもつけないだろうからな!だが心配するな少年!このレアリアは冒険者もくいっぱぐれないいい街だぞ!ワッハッハッハッハッハ!」


相当ウルドを嫌っているようだな。まぁ今となっては俺もいい思い出がないけど。


「では、中に入っても?」


「あぁ!もちろんいいぞ!!ギルドはこの門を通って真っすぐいけばあるからな!どうみてもデカい建物があるからそこに入れば大丈夫だ!!」


同情も誘えたのかすんなりいれてくれた。


門をくぐると、ウルドにも勝るとも劣らない、かなり栄えた街並みが広がっていた。人の数もかなり多く、人口だけで言えばウルドよりも多いのではないか、と思うほどだ。


「....!?」


ふと、ドクンっと心臓の音がした。


いい匂い。なんだこの美味そうな匂いは。


匂いの先を目で追う。そこには。


街にあふれた人々が映っていたのだ。


(今俺は....人を....食い物として認識したのか....?)


日に日に魔物になっていくような気がして、恐怖した。


(でも....俺は世界に復讐をすると決めたんだ....その為にも俺は。理性だけは失うわけにはいかないんだ!!)


俺は自然と溢れて垂れてきた涎をふき取り、言われた通りに道をまっすぐ進んだ。



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