8.ギルドマスターとの出会いと禁忌
ちょっと重い回になるかもです....
ギルドは言われた通りバカみたいにデカかった。
ウルドのギルドもかなり立派だったが、レアリアのはとてつもなく存在感があった。
俺はギルドの正面扉を勢いよく開ける。
中にはおびただしい数の冒険者。初心者のFランクから、装備のキレイさからAランク上位だろう、かなりの人数が闊歩していた。
「今日こそあそこのダンジョンを攻略してやるからな!!」
「アホかやめとけ、あそこはBランク以上でパーティ組まなきゃ攻略はおろかボス部屋まで辿り着かねぇよ。」
「クロシキの森に魔女が出たらしいぞ!」
「まじで!?あれって作り話じゃなかたのかよ!!」
様々な会話が耳に入る。人混みをくぐりぬけ、やっとの思いで正面カウンターの方まで来ることができた。
「冒険者登録を頼みたいんだが...」
「かしこまり....えっ?しょ、少々お待ちください!!」
カウンターの受付嬢が俺の顔を見るなり、慌てて裏口に飛び出して行ってしまった。なんだ...?俺の顔、なんかマズかったか?
そんなことを考えていると、横からドンッと少し強めに肩を叩かれた。
「お前...名前は?」
横にいたのは2mはあろうかと思われる巨体の男性。ライオンの鬣を彷彿とさせる青い髪が特徴の大男に話しかけられた。
「え...っと、リンド・アルターヤだ。お前は何者だ?」
急に話しかけられてびっくりしたが、俺はスッと受け答える。
「あっ、あなた!!ギルドマスターにお前なんて...なんて言い方するのよ!!」
先程慌てて裏口に飛んで行った受付嬢が大男の横で言う。え、ギルドマスター?この人が?....まじで?
「フッ、まぁいいじゃねぇか。見たところこの街は初めて来たようだしな。知らなくても仕方ねぇよ。」
大男はニヤリと笑いながらこっちを向きなおして名乗った。
「俺はブルーハーツ・ライオネル。このレアリアのギルドマスターだ。ライオ、とでも呼んでくれ。」
「あ...あぁ、すまない無知なもので。よろしく頼む。」
俺は差し出された手を握り握手を交わす。
「早速で悪いんだがお前....深層に行ったのか?俺が聞いた深層の魔物の特徴と一致している部分が多いんだが?」
「....!?」
俺は一気に警戒する。未発見といわれていた深層について知っている?どういうことだ?
「まぁそう警戒しないでくれ、何もするつもりはない。ただ、話を聞きたいだけだ。」
俺は「鑑定」を使う。このスキルはかなり便利で、敵意のある人間と敵意の無い人間を見分けることもできる。さすが魔物専用スキルだ。
見たところ本当に敵意はないようなので、俺は話すことにした。
「あぁ。たしかに俺は深層で死にかけ、奇跡的に脱出に成功した。お前は一体なにが知りたい?」
「!?....やはりか。ここじゃなんだ、俺の部屋で話そう。」
こうして俺はライオの部屋に案内された。
「まぁ座ってくれ...まずはお前の素性はわかっている。ウルド公認パーティ「ランカーズ」の一員だろ。なぜ一人でこの街にやってきた?」
「....そこまでわかっていたのか。だが一つ訂正がある。俺は「元」ランカーズだ。」
そうして深層に辿り着くまでの経緯を事細かく話した。嘘などはつかない方がいいだろう。この街での信用は勝ち取っていた方が今後動きやすくなるだろう。
「.....そうか、そんなことが、悪かったな。変なこと聞いちまった。」
こいつは悪いやつじゃない。むしろぶっきらぼうなしゃべり方ではあるが善人の部類だろう。
「いや、問題ない。...まぁそれで無職になってしまったがウルドに戻るのは気が引けてな....この街を選ばせてもらったってわけだ。」
「まぁこの街ならまずウルド公認の冒険者に会う事はないだろうしこの街を選ぶ理由としては理にかなってるな。それに冒険者として働けば金にも困らねぇし自由に行動もできる、と。」、
話の早いやつだ。
「そこまではわかった。だがお前のスキル....「捕食」だったか。確かに過去にも”天害級”のスキルは履歴が残っているが、お前のが一番強く見えてしまうな。」
俺は続けて深層であったことを全て話した。こいつには全て話しても問題ないと本能で理解したからこそだ。
「....なるほどな。お前は深層の魔物を食い、自分自身を深層種にすることで深層の魔力に耐え、生き延びたってわけか....こりゃ驚きだ。作り話を聞いてる気分だが、お前の目を見れば真実だってわかるよ。」
どうやらライオは俺を信じてくれるようだった。
「ありがとうライオ、俺も正直自分で話していて現実離れしていると感じていた。」
「とりあえず事情は分かった。お前を俺の名の下、レアリア公認冒険者として認める。これを持ってろ。これがあれば街の門もくぐり放題だしギルドでどの依頼も受けられるようになる。」
ライオから青いプレートがついたペンダントをもらった。
「いいのかライオ?ここまで優遇されちまって、申し訳ねぇな...」
「なに、気にするな。深層を生き延びた冒険者を他の街に渡すわけにはいかねぇ、それにお前に同情した。ってわけじゃねぇが俺もウルドの連中が気に入らねぇ。同志としての証だと思って受け取ってくれよ。」
どうやらギルドマスター同士の不仲説は真実だったようだ。
まぁどっちにしろ都合がいい、ウルドの連中とも関わらずに冒険者として活動もできるなら何だっていい。
「じゃあお言葉に甘えさせておくよ、早速、公認冒険者として明日からダンジョンに行きたい。どこかいい所はあるか?」
「あぁ、それならこの「賢王の墓」というダンジョンがいいだろう。高ランクでかなり人気が少ないが、お前の実力ならいけるだろう。捜索も頼みたい。」
こうしてレアリア公認冒険者として初めての仕事をもらった。
その日の夜。
俺は深層の攻略報酬で手に入れた旧金貨を現在の金貨に換金し、宿を取ってベッドに寝ていた。
「腹が減った....「捕食」が覚醒してから、満腹になった試しがない。」
とてつもない空腹感に悩まされていた。いてもたってもいられなくなり、俺は夜の街に繰り出した。
さすが大都市にも負けぬ活気の街というか、夜でも人通りは多く、あちこちで露店もやっていた。
「いらっしゃい!!こちらレアリア産豚の串焼きだ!!」
ふと見た露店では、串焼きを売っていた。耐えられなくなった俺は露店に向かって歩き出した。
「10本よこしてくれ、金はある。」
「あいよ!10本セットで銀貨2枚ね!」
俺はポケットから銀貨2枚を取り出し店主に支払う。
出てきた豚串はかな厚めに切られた肉が3つ刺さったかなり大ぶりな串だった。
「......んん、まずくはないんだが....なんだこの違和感は。」
前世でいう塩こしょうで味付けされたオーソドックスで美味い。はずなのだが何か満足できない。疑問に思っていると、路地裏から声が聞こえてきた。
「いや....助けて....」
「へへへへ、いくら呼んでも助けはこねぇよ!こんな路地裏に人は寄り付かねぇからな!!」
「アニキの次は俺がヤッちまっても問題ねぇでしょう??グフフ...」
そういえばライオが愚痴をこぼしていたのを思い出した。近頃、女性を狙った性犯罪が多発しており、街の警備をギルドに頼まれる始末なのだとか。こういうことか、まったくしょうもない連中だ。
「へっ、恨むんなら雑魚スキルを与えた神を恨むんだな!!さーて、いただきまーす...っと」
その言葉を聞いて俺は即座に男の前に姿を現した。
「雑魚スキルのせいで人は自由まで奪われるのか?なぁ、そんな理不尽が許されるのかよ!」
「う、うわぁぁぁぁぁぁぁ!ど、どこから出てきたてめぇ!!」
「なぁ、お前のスキルはどんなものなんだ?どんないいスキルを持って生まれたんだ?お前は」
「...へっ、俺のスキルはBランク、「呪いの刃」だ!このスキルを使って与えた斬撃は神聖魔法を使っても癒せねぇ....どうだ!スキルってのは才能....覆せねぇもんなんだよ!!」
「....そうか、死ね。」
「へっ....?」
スパッ
空間魔法で取り出した「冥王の凶剣」による「見えざる斬撃」で男の首を刎ねた。
「お前もだよ、差別主義者のカスが。」
「グギャ.....」
続けて「一閃突き」で腹を一突きする。2人はもちろん即死。あまりにもあっけない戦いだった。
「き.....きゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
いきなりのことでパニックになった女性は走って逃げだした。まぁこんな光景を見たら逃げ出したくもなるだろう。それよりも。
ゴクッ。
目の前に人間の死体。
普通ならこんな感情を抱くことはないだろうが、俺はもう半分人間でないのだろう。
なんて美味そうなんだ。
俺はついに人間の死体にかじりついた。
う.....美味すぎる!!
前世を含めても食べたことのないような美味さに俺は感動を覚えてしまった。あまりにも美味すぎて夢中でかぶりつく。
気づけば骨だけが残り、二人は跡形もなくなっていた。
『ゴド・マクレンを「捕食」しました。経験値を獲得しました。スキル「呪いの刃」を獲得しました。』
『ジャキ・シンガを「捕食」しました。経験値を獲得しました。スキル「魔法妨害」を獲得しました。』




