5.戦いの果てに
アルス=ノヴァは翼から無数の針を飛ばしてくる。
「はぁ!「風牙」!!」
針を全て切り伏せて本体まで接近し、切りつけると同時に傷口に「毒霧」を噴射する。
『グウゥゥゥゥゥゥゥゥ!!!』
痛みに耐えられず声を荒げるアルス=ノヴァ。
必死に痛みを堪え、次々と黒雷を放ってくるが、20000を超える俊敏ステータスのおかげか、全て難なく躱せる。
「そんなんじゃ俺はとらえられないぜ、「一閃突き」!!!」
俺は攻撃を躱しながら傷口を剣で突く。
『ガァァァァァァァァァァァァ!!!』
俺の攻撃の嵐に耐えきれず下半身から地上に着地する。
『ナゼダ...!?ナゼ ニンゲンガ マモノノ スキルヲ ツカッテイルノダ!?』
驚愕と恐れ。俺の本来はあり得ないスキルの使用でこいつは俺に対して恐怖と困惑を覚えているようだ。まぁそりゃそうだろう。本来決して使うことのできないものを使える人間が現れたら、誰だって驚く。俺もスキルの説明を見て驚愕した。
「さぁ、ナゼだろうな。これから死ぬお前が聞いても意味ないけどな!!」
再び「蒼炎弾」をぶつける。青く燃え盛る炎がアルス=ノヴァを焼き尽くす。
気づけば翼も3本落ちて、無数のように生えていた触手も数本しか動いていない。まさに満身創痍の状態まで追い込んでいた。
『ニ、ニンゲンノ ミデ ココマデツヨイトハ....イイダロウ。キサマニハ ワレノ キュウキョクノ スガタヲ ミセテヤロウ。オソレオノノクガ イイ!!!』
そういうとアルス=ノヴァの体が光りだし、グチャグチャと混ざり、ついに一つの球体となった。
「....!?なっなんだ!?」
やがてその球体は小さくなっていき、ヒビが入り始めた。
バキンッッッ!!
球体が割れて中からアルス=ノヴァが出てきた。
先程までの巨体とは打って変わって、2mほどの人型。しかし真っ黒な肌に赤い紋様。深層種と同じような色になっていた。頭部も人間と全く変わらず、髪の毛は赤色に靡き、2本の角が生えていた。
『ククク...やはりこの姿は素晴らしい。力が溢れてくるわ....喜べ人間、人間相手に姿を見せるのは貴様が初めてだ!!』
先程までのカタコトから流暢な喋り方で人間の言葉を話し始める。
「...へぇ、そんなにちゃんと喋れたのか、ずいぶんと小さくなりやがったな、可食部が減って悲しいぜ、俺は」
『何を訳のわからぬことを...まぁよい。貴様に本当の地獄を見せてやろう!!』
そう言ってアルス=ノヴァは超速で詰め寄る。
正直言って人智を超えた速度だった。おそらくだが、俊敏のステータスは10000は軽く超えてるだろう。普通の人間であれば、ついていくことはおろか視認することすら難しいだろう。
普通の人間ならな。
「遅いんだよ!!「風牙」!!!」
『ぐぅぅぅぅぅぅ!何故だ!何故我のスピードに人間ごときがついてこれるのだ!!』
「俺をそこらの人間と一緒にすると痛い目を見るぞ!!「見えざる斬撃」!!!」
透明な斬撃がアルス=ノヴァを襲う。
一つ、二つと躱していくが、見えない攻撃を全て避けきるのは難しく3発目が命中。アルス=ノヴァの腕が切断される。
『ぐぉぉぉぉぉぉぉ!!ありえん!!ありえてはならぬのだこんなことがぁぁぁぁぁぁ!!』
アルス=ノヴァが狂ったように叫ぶ。
目の前にいるのはただの人間。それもたった一人。それなのにここまで追い詰められている。耐えがたい屈辱。なぜこんな力があるのだ...!?なぜ我の力が及ばぬのだ!?わからぬ...いくら思考を巡らせても全くわからぬ!!なぜ...こんな事が....。
『我が人間に負けるなど、あり得ぬのだ!!』
アルス=ノヴァが虚空から漆黒の剣を取り出した。
両者の剣がぶつかり合う。剣の質は互角のようで、ガキンッと金属がぶつかる音が鳴り響く。
「な、なんだそれ、かっこいいな!お前を食えば俺もそれ使えんのか!?」
お互いの剣が何度もぶつかり合う。先ほどよりもさらに早い攻撃が俺を襲う。
「まだこんな力残ってんのかよ!!くそっ、うぉぉぉぉ!!負けるかよ!!!」
一撃一撃が重いが、「風牙」や「一閃突き」を使いながら渡り合う。
「くっ...まだまだぁぁぁぁ!!」
『ぐぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!』
お互い一歩も引かない中、ついにアルス=ノヴァに隙ができた。
片腕を失ってることで俺の攻撃に対応しきれず態勢を崩した。俺はその隙を逃さなかった。
「今だ!!!「星砕き」!!うぉぉぉぉぉぉ!!!!」
ここぞというタイミングで奥義を繰り出した。アルス=ノヴァは必死に防御姿勢をとろうとしたが間に合わない。
ズドォォォォォォォォォォン!!!
物凄い音と共に部屋のタイルがはじけ飛んだ。最大威力の「星砕き」がアルス=ノヴァに直撃したのだった。
「ハァ...ハァ...よし!このレベルの相手でも勝てるんだ俺は...!!」
形態が変わったアルス=ノヴァはたしかにとてつもない強さだったが、こうして勝利を収めた。死骸を探そうと振り返ったその時だった。
『グガァァァァァァァァァァァァ!!!』
アルス=ノヴァの死骸から取り込まれていた魔物が一斉にあふれ出したのだった。
「ちっ...めんどくさいな。まとめて殺してやるか。見せてやるよ究極奥義....「流星群」!!!!」
俺がそう叫ぶと、頭上から無数の隕石が降り注いだ。
無数の隕石はあっという間に魔物たちを蹴散らし、跡形もなく消し去った。
「死骸すら残らないからこのスキルはあまり使いたくないんだよな....さて、あいつの死骸は残ってるかな....っと、腕が残ってたな」
俺は切り落としたアルス=ノヴァの腕を拾い上げると、躊躇なくかぶりついた。
『アルス=ノヴァ・深層を「捕食」しました。経験値を獲得しました。スキル「黒雷」を獲得しました。スキル「深層化」を獲得しました。スキル「空間魔法」を獲得しました。』
かなり強そうなスキルを3つも手に入れた。おそらく3つともSランク相当以上だろう。
そして足元に落ちている奴が使っていた剣を「鑑定」してみた。
冥王の凶剣
筋力3000以上で装備可。
ボーナス
筋力+2500
魔力+1000
スキル「冥王の呪い」
人間に対するダメージ+200%
その他にはダメージ+80%
この効果は消去されない。
なるほどな。人間に対して大ダメージが出る特攻付きの武器。だから俺が受けたときにめちゃくちゃ重く感じたのか。
それにしても凶悪な武器だ。魔物が使う専用武器って感じだな。いや、俺の復讐にもピッタリだろう。俺は空間魔法で持っている2つの武器を亜空間にしまって、玉座の奥に向かう。
ダンジョンボスを倒したボーナスの宝箱が出現していたのだ。
「さて....何が出るかな....ん?これは...装備か?それもいくつか入っている。太っ腹だな」
全て「鑑定」を使って調べた。
深層の胸当て
深層と名づいた者のみ装備可。
ボーナス
防御+1500
魔防+2000
特殊効果
深層種からダメージを受けない。
深層のブーツ
深層と名づいた者のみ装備可。
ボーナス
防御+1000
俊敏+1500
特殊効果
ダンジョン内の壁を歩ける。
深層王のマント
深層と名づいた者のみ装備可。
ボーナス
防御+2000
魔防+2000
特殊効果
装備中スキル「透明化」を獲得。
どれもこれも最強と呼ぶにふさわしい防具ばかりだった。というか「深層と名づいた」って書いてあるが深層とは何なんだ?原理も何もかもわからない。
そういえばここに来てから自分の顔を見ていないな。深層が名前についたことで何かかわったことがないか見てみることにした。
水魔法で水たまりを作り、それを覗いた。すると....
「な....なんだこれ....!?」
ゴールドだった髪の毛は真っ黒に染まり、左目から左頬に深層種と同じ赤い線ができていた。
「俺自身も....深層種になったっていうのか...!?」
深層はまだ誰も到達していないまさに前人未踏の場所。何が起きてもおかしくないのだった。




