誘拐犯の正体は同族!?魔将の罠と仲間への絆
前回の続きとなります。護衛のエリス、そして魔人の少女マジョルカの運命はどうなったのか。
リアナは勇斗にすがるように倒れ込み、マジョルカが攫われたと悲痛な声で訴えた。
勇斗たちはリアナの案内で、スカイレイヴンの爪痕が残る建物を横切り現場へと急いだ。
闘技場のほど近く、瓦礫が散乱する細い路地を抜けた先に――その惨状はあった。
肢体があらぬ方向に捻じ曲がり、美しい銀髪は乱れ、メイド服がボロボロに引き裂かれたエリスが、そこに倒れていた。
「エリス!」
勇斗は駆け寄り、その上半身をそっと抱き起こす。
魔導繊維でかろうじて繋がっている腕から、パチパチと火花が散っていた。
「申し訳、ございません。ボウズ様の命令を、遂行……できませんでした……」
痙攣しながらも、エリスは淡々と告げる。その瞳から光が消えかけていた。
リアナは両手で顔を覆って嗚咽を漏らし、真理は言葉を失い立ち尽くす。
ミュリエルは蒼い瞳に静かな怒りを宿し、小さな拳を強く握りしめた。
エリスは、犯人を「ムスカ・アイストロイ」だと断定した。
黒い外套で顔は隠されていたが、ドワーフ特有の体躯と戦槌から判断したという。
「ドワーフとは……思えない強靭な魔力が……。誰かに操られている確率――八十五パーセント……」
その言葉を最後に、エリスの関節から熱い蒸気が噴き出す。
イザベルが即座に氷魔法で冷却し、クラウスと共にルミナ王国へ緊急移送することを決めた。
「魔族は狡猾よ。深追いは禁物。クラウス様を悲しませるな」
イザベルの険しい忠告に、勇斗は静かに頷いた。
遠ざかるエリス達の姿を見送りながら、心の奥で冷たい誓いを立てる。
(必ず、見つけ出して討つ)
勇斗が顔を上げると、そこに真理の姿がなかった。
「お嬢ちゃんなら、血相を変えて闘技場の方角へ走っていったよ」
ギルドマスターのゼファンが指し示す。
続けてムスカが犯人だとは信じられないと心境を語り、話が聞けるなら穏便に済ませてほしいと勇斗に懇願した。
ゼファンの協力もあり、ムスカ本人はすぐに見つかった。
だが、獣人猫族のミレーヌが彼のアリバイを証言し、捜査は振り出しに戻る。
その時、一人の冒険者がギルドへ駆け込んできた。
「大変です! 黒髪の娘さんと冒険者が、街中で大暴れしてます!」
その言葉に、勇斗の胸に嫌な予感がよぎる。
「場所はどこですか!?」
勇斗は案内役の冒険者の後を追い、現場へ急行した。
砂塵が舞い、瓦礫が飛び散る中で、三つの影が激しく衝突している。
「真理!」
勇斗の声は、金属音にかき消された。
外套の男が振るう漆黒の戦槌と、真理の短刀“サイレント・ヴェイル”が火花を散らす。
そこへレジーヌの大剣が叩きつけられ、衝撃で地面が抉れた。
「このままじゃ街が! ミュリエル、 闘技場へ誘導できないか?」
勇斗の言葉に、ミュリエルがこくりと頷く。
「“時霧結界”!」
彼女は手で円を描くと小さな魔方陣が浮き上がり、そこから放たれた緑色の光球が、意志を持つように外套の男を捉え、その動きを鈍らせる。
「レジーヌ! そいつを闘技場へ!」
「おうよ! 行っけーっ!」
レジーヌがフルスイングした大剣の一撃が外套の男を、ホームランバッターのように闘技場の方角へと吹き飛ばした。
「援護を頼む!」
勇斗はミュリエルに託し、闘技場へ急いだ。真理も続く。
それを待っていたかのように、ミュリエルの声が響いた。
「“天蓋結界”!」
複雑な魔方陣が闘技場を包み込み、光の膜が勇斗、真理、そして外套の男を閉じ込め、城内に避難している住人たちとの間に防壁と形成した。
男は光の壁に触れ舌打ちすると、ゆっくりとフードを脱ぐ。
その姿はムスカと瓜二つだった。
「よくも私の崇高な計画を邪魔してくれたな。そこの娘……それと貴様は仲間か?」
声はムスカだが、その口調は荒々しく、赤い瞳は狂気に満ちていた。
「マジョルカを攫い、エリスを傷つけたのはお前か」
勇斗が静かに問うと、隣の真理が低い声で続けた。
「こいつです。こいつがマジョルカをレオンに引き渡している現場を押さえました」
その言葉を合図に、勇斗は“ヴェイル・リフォージ”を抜き放つ。
偽ムスカは不気味に笑うと、その姿を黒い霧へと変えた。
霧が晴れた時、そこに立っていたのは、青白い肌に赤い瞳を持つ、燕尾服の男だった。
「我が名はヴァルター・エドラム。魔胎泉より生まれし魔将候補。光の世を終わらせ、真の秩序をもたらす者」
ヴァルターの手には、闇で鍛えたような黒刀剣が握られていた。彼は不敵に笑う。
「まずは貴様からだ、娘!」
真理が地を蹴り、ヴァルターに肉薄する。
激しい剣戟が始まり、結界の中で火花が咲き乱れた。
勇斗も加勢し、風を纏った一閃を放つが、ヴァルターは二人の猛攻を余裕の表情で捌いていく。
ヴァルターの左手に黒霧が纏い、黒刀剣が現れる。
二刀流となった彼の攻撃は嵐のように激しさを増し、ついに真理の短刀“サイレント・ヴェイル”を粉砕した。
「真理!」
鋼の破片が舞う中、真理が吹き飛ばされる。
(ゼルヴァさん……ゴメン)
勇斗は心の内で鍛冶師に詫び、全神経を刀の切っ先へと一点集中させた。
魔光石が光り輝き、鈍い音を響かせる。
「――“断裂穿閃”!」
咆哮と共に放たれた斬撃は、天地を裂く閃光となってヴァルターを呑み込んだ。
凄まじい轟音が結界を震わせ、光が収まった時、ヴァルターは黒い血を流しながら膝をついていた。
彼の体は怒りに震え、その赤い瞳が倒れている真理を捉えると、口の端を歪ませた。
黒霧が周囲に漂いヴァルターを包み込む。
勇斗の”ヴェイル・リフォージ”も限界だった。
魔光石には亀裂が走り、刀身は半分ほど溶け落ちている。
荒い息をつきながら真理に駆け寄った勇斗は、目の前の光景に息を呑んだ。
そこには――二人の真理が倒れていた。
「おい、真理! しっかりしろ!」
勇斗が手前の真理を揺り起こすと、彼女はゆっくりと目を開けた。
「勇斗さん……」
安堵したのも束の間、もう一方の真理も同じように揺り起こすと、全く同じ声が返ってきた。
「勇斗様……」
二人の真理は互いを見るなり、「「偽物!」」と叫び、激しい口論を始める。
「私が本物です!」
「いいえ、私よ!」
勇斗は混乱する頭で、必死に思考を巡らせた。
(待てよ……。真理は普段、俺のことをさん付けで呼ぶよな)
確信を得るため勇斗は、二人を制して問いかけた。
「俺の名前と、自分の名前を正確に答えてみて」
左の真理は得意げに答える。
「決まってるじゃないですか。勇斗様と、真理は真理です」
右の真理は訝しげに答えた。
「勇斗さん……名前は水野真理、でいいですか?」
勇斗は頷くと、右の真理を指差した。
「お前が偽物だ!」
「え? そんな、勇斗さん……どうして」
驚く右の真理を背に、左の真理――ヴァルターはにやりと笑い、霧の中から漆黒の短刀を取り出し隠し持つ。
「観念しろ、ヴァルター!」
勇斗は笑みを返し、真理に向かって掌に風の力を凝縮させる。
「――“颶風掌弾”!」
放たれた風の弾丸は、目の前の真理ではなく、背後に回った真理――ヴァルターの腹を正確に貫いた。
「なぜ……ただのニン、ゲ……ぐぼッ」
真理に義体化したヴァルターはくぐもった声を残し、黒霧となって消え去った。
光のドームが霧散し、ミュリエルが駆け寄ってくる。
その後ろから、マジョルカの手を引いたリアナ、レジーヌが続く。
勇斗たちが死闘を繰り広げている頃、リアナはレジーヌと共にレオンのもとへ向かっていた。
レオンは涙と鼻水で顔を歪ませながら土下座し、命乞いをしたという。
「今回はあのドワーフが勝手に! 私も被害者なのです! どうかクラウス様には寛大なご処置を……」
そのみっともない姿に、リアナは毅然と言い放った。
「あなたの保身のために、エリスは重傷を負い、マジョルカは恐怖を味わいました。その罪は、涙で流せるほど軽いものではありません。覚悟なさってください」
その言葉に、レオンはただひれ伏して泣き崩れるばかりだったと、レジーヌは過去の雇い主を笑い飛ばした。
エリスは魔導人形というヒューマノイドでした。ロボ的な描写をしていたので気づいた人もいると思いますが、プロトタイプなので回復には時間がかかりそうです。
<裏設定>
-イザベルが開発者
-ボディは魔導繊核合金(マギ=コア・アロイ)という魔力を通す特殊金属と、精霊繊維を融合させた人工素材
-イザベルの亡き妹・レアの記憶断片と人格構造を元に構築された人工意識を搭載
-王城地下の魔導封印室“第七層”に設置された禁術級記憶装置と魔力リンクしており、定期的に同期
こういった小難しい設定も勝手に作ってくれるので、AIアシスタントは便利です。それによってアイデアも膨らみます。




