↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
13/38

まさか闇市に囚われた魔人少女が勇斗の行動に影響し、世界の行く末を左右するとは誰も思わない

イーストバロニア連邦は情報をメインに扱うビジネス街ですが、良い面ばかりではありません。そんな裏側を演出してみました。

ミリカに情報料を支払った勇斗たちは、紹介屋と合流した。


地下へと続く階段の壁には苔(こけ)が張り付き、じめついた空気が肌にまとわりつく。足音が響くたびに水滴がしたたり落ち、息苦しささえ感じられた。


階段の突き当たりには、錆び付いた鉄扉が待ち構えていた。紹介屋が合言葉を告げると、扉の小窓が冷たい音を立てて開き、奥から鋭い視線が突き刺さる。


「今日の天気は……」

「晴れなきゃ雨だ」


紹介屋がぶっきらぼうに答えると、小窓は荒々しく閉じられた。勇斗が睨み付けると、紹介屋は肩をすくめて鼻を鳴らす。


数分の沈黙の後、鉄扉が軋む音を響かせながらゆっくりと開いた。紹介屋は現れた大柄な男から銀貨を数枚受け取り、笑みを浮かべて立ち去っていく。

勇斗たちが入ろうとすると、大男は無言で立ち塞がった。


「一人だけだ」


真理が抗議の声を上げるのを制し、勇斗はクラウスから硬貨の入った袋を受け取った。不安げに見守る仲間たちを背に、勇斗は扉の奥へと足を踏み入れる。直後、鉄扉は悲鳴のような音を立てて閉じられ、固い施錠音(せじょうおん)が地下に響き渡った。


狭く空気が淀(よど)んだ管理部屋を通り抜け、奥の重厚な扉が開けられると、目の前に広がる光景に、勇斗は息を呑んだ。


(ここが、本当に地下なのか?)


まるで別世界だった。高い天井から吊るされた豪奢(ごうしゃ)なシャンデリアが、赤と金の装飾で彩られた空間を煌(きら)びやかに照らし出す。カジノのような華やかさの中、繊細(せんさい)な細工が施されたテーブルでは金貨や宝石が飛び交い、人々の笑い声とざわめきが渦巻いていた。タバコの煙と香水が混じり合った、むせ返るような匂いが鼻をつく。


会場の奥には一段高いステージが設けられ、競りが行われていた。貴族らしき男女がグラスを片手に値を吊り上げ、木槌の音が響くたびに拍手が沸き起こる。


勇斗は眉間に皺(しわ)を寄せながらも、ステージが見える椅子に腰を下ろした。その繁盛ぶりに圧倒されつつ、心の奥底で嫌悪感が広がっていく。

やがて、これまでの品々が片付けられ、司会の男がことさら大きな声を張り上げた。


「皆様、本日最後の一品は、滅多に世に出ることのない魔人の娘であります! かの暗黒の森から連れてきた正真正銘の魔族! 秘密を厳守できる会員の皆様だからこそ、本日特別にご用意いたしました!」


その言葉に合わせ、鉄の手枷と足枷をつけられた少女がステージへと引きずり出される。服はボロボロで、肌には痛々しい痣(あざ)が浮かび、乱れた髪の隙間から覗く瞳は光を失っていた。


勇斗は強く下唇を噛み、両の拳を握りしめた。競りが始まると、少女の値は瞬く間に金貨三百枚を超える。勇斗は必死に手を上げ続けた。


しかし、五百枚を超えたところで、聞き覚えのある声が響いた。


「八百枚!」


観衆がどよめく中、勇斗は声の主を睨む。そこには、あざ笑うレオン・バルステッドがいた。

勇斗は膝を拳で叩き、悔しさに顔を歪める。他に手を上げる者はおらず、魔人の娘はレオンの手に渡ることが決まった。


◇


会場を後にした勇斗は、やり場のない怒りに拳を壁へ叩きつけた。

「クソッ……どうすれば……」


クラウスたちに事の次第を報告すると、真理が憤慨した。

「なんて奴なの! 二度ならず三度までも私たちの邪魔をするなんて!」


エリスがこれまでの経緯を簡潔に説明すると、クラウスは静かに頷いた。

「事情は理解いたしました。ここは私にお任せを」


クラウスはそう言い残し、一人闇の中へと消えていった。


夕刻。宿で悶々(もんもん)と過ごしていた勇斗たちの前に、クラウスが戻ってきた。その手には、あの魔人の少女がしっかりと握られている。髪は整えられ、可愛らしい服に着替えさせられていた。


「クラウスさん、どうやって……?」

「少々、込み入った交渉をしまして。バルステッド家の弱みの一つや二つ、我々は把握しておりますので」


クラウスは片眼鏡の位置を直し、普段と変わらぬ笑みを浮かべたが、その瞳の奥には冷たい光が宿っていた。


「とにかく、一件落着ですね! さ、お夕飯にいたしましょう!」

リアナが明るく手を叩き、クラウスから少女を引き取って部屋へと連れていく。その声が、緊張した空気を解きほぐした。


少女の名はマジョルカ。暗黒の森にあるゼルファ村で暮らしていたが、山菜採りの最中に見知らぬ魔人に連れてこられたと、震える声で語った。


「それは怖かったな。家族も心配してるだろう。俺たちが村まで送ってやる」


勇斗が笑顔で言うと、マジョルカはご飯を頬張りながら、不思議そうに彼を見つめた。隣でイザベルが呆れたように鼻を鳴らす。


「本気で言ってるの? 魔族の総本山に乗り込んで戦争を仕掛ける気?」

「ユウト様。直接向かうのは外交上の問題が生じます。西方のエルダリア公国に助力を求めてはいかがでしょう」


クラウスの提案に、皆が頷いた。エルダリア公国はエルフ族が治める中立国で、古くから精霊信仰を共有する魔族にも寛容なのだという。


「エル=ノア様……私も知ってる、精霊の神様」


マジョルカがぽつりと呟き、卵焼きを頬張った。そして皿に残った一切れを巡ってミュリエルと静かな攻防を繰り広げ、リアナに「大人げない!」と叱られる。その微笑ましい光景に、部屋は和やかな笑いに包まれた。


その夜、勇斗は布団の中で天井を見つめていた。救い出せた安堵と、これから為すべきことへの決意が胸を満たしていた。


◇


翌朝、勇斗はマジョルカを街へ連れ出した。外の世界を知ってほしかったからだ。

リアナに手を引かれたマジョルカは、俯(うつむ)きがちに、しかし好奇心に満ちた目で、行き交う多種族の姿を追っている。


活気あふれる広場では、焼きたてのパンの香ばしい匂いが漂っていた。マジョルカが露店のパンをうらやましそうに見つめているのに気づき、勇斗が声をかける。


「食べたいのか?」


彼女はこくりと頷き、慌てて口元を手で拭った。その仕草に皆が微笑み、リアナが彼女の手を引いて露店へ向かう。その後ろで、ミュリエルが「私も、食べる」と対抗心を燃やし、山盛りのパンを買い込んでいた。


露店には工芸品を扱う店も並び、その中に見知った顔があった。装飾品を売るグレイヴだ。


「旦那。やっぱり来てたんですね。幻鋼の情報は見つかりやしたかい?」


愛想よく笑うグレイヴに苦笑で返すと、彼の視線がふとマジョルカに注がれた。


「その子は……魔族ですね。しかも純血の……」


グレイヴはハッとして口元を両手で隠し、すぐに笑顔に戻った。

「失礼。俺みたいな混じり者とは違って、純血の魔族は珍しいもんで、つい。色々大変でしょうが、お気をつけて」


その言葉に、勇斗はこれまで聞いていた魔族像との違いを感じ、物思いに沈んだ。リアナの手を握り、パンを頬張るマジョルカの無垢な瞳が、幼い頃の妹、玲奈と重なって見えた。


――その時だった。


甲高い奇声と共に、巨大な影が広場を覆(おお)った。漆黒の翼を広げた鳥型の魔物、スカイレイヴンだ。


「スカイレイヴンだ!」


叫び声が上がり、広場は一瞬でパニックに陥る。人々は悲鳴を上げて逃げ惑った。


「リアナ、マジョルカを頼む! エリスは二人を護衛して、安全な建物へ!」


勇斗が叫ぶ。リアナは即座にマジョルカを抱きかかえて走り出し、エリスがその背後を固めた。その一瞬、人波に紛れて黒い外套の男が近くに寄ったのを勇斗は見た気がした。だが、すぐに雑踏に消え、目の前の危機に集中する。


「真理、アイツの情報は!」

「でっかいカラスです! 敵とみなしたら突撃してきます! 黒いものを狙うかも!」


行った途端に真理は青ざめ、自分の黒髪を押さえてしゃがみ込んでしまった。

勇斗が呆れつつ空を睨んだその時、闘技場の方角からいくつもの火球が放たれ、スカイレイヴンは奇声を上げた。体の向きを俊敏に変える。


「クソッ、行くぞ!」


闘技場に駆け込むと、中ではスカイレイヴンが起こす暴風が吹き荒れていた。翻弄される魔導師たちの中に、大剣を振るうレジーヌの姿も見える。


「ミュリエル、この風を止められるか!」


勇斗の声に、ミュリエルは静かに頷き、目を閉じて詠唱を始めた。


「黎明より続く時の輪よ、今ここに鎖を下ろせ。白き霧よ、境界を描き、邪を遠ざけよ。結界顕現――“時霧結界(クロノ・ミスト)”!」


足元から広がった魔方陣の光が霧へと変わり、闘技場を満たす。途端にスカイレイヴンの翼の動きが鈍り、羽ばたきが泥の中をもがくように重くなった。


好機は今しかない。

勇斗は重い空気の抵抗をものともせず、地面を蹴った。鈍重(どんじゅう)になったスカイレイヴンの懐(ふところ)に潜り込み、ガラ空きになった首筋を目掛けて、ヴェイル・リフォージを抜き放つ。


――一閃。


斬撃は音もなく巨体を切り裂き、わずかに遅れて、空間が裂けるような凄まじい音が響き渡った。勇斗が剣を鞘(さや)に収める頃には、戦いは終わっていた。


「勇斗さん!」


駆け寄る真理に、勇斗は笑顔で親指を立ててみせる。ミュリエルも無表情のまま、小さく親指を立て返した。

そこへゼファンを伴ったクラウスたちが到着する。砂にまみれた魔導師たちと、涼しい顔の勇斗たち。その対照的な光景に、ゼファンは唖然としていた。


勇斗がゼファンへ状況を説明していると、リアナが血相を変え駆け込んできた。その顔には焦りと絶望が滲んでいる。背後に、マジョルカとエリスの姿はない。


「大変です! マジョルカが……マジョルカが、攫(さら)われました!」


リアナの声が闘技場に木霊する。駆け寄るリアナを抱きとめた勇斗は言葉を返すことが出来なかった。

 伏線回収といいますが、ここまで変えられるとどうしたものか。ハッキリ言って慌ててます。だから逃げるように13話を終わらせました。僕に三分だけ時間を下さい。

 スカイレイヴンは群れで行動する大型鳥魔物です。設定ではそう書いてあります。翼の生えた魔物とリクエストしたらできました。画像生成したらカラスでした。

 大群をイーストバロニア連邦に送ると勇斗が卓球ラケットでボールを弾き返すみたいにバンバン空気泡飛ばしやがって、大ボスが出るタイミングも作れないし、一匹にしました。そしたら一撃でお終い。なのにマジョルカが攫われました。なぜだ?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。