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第12話 知ってしまった真実

春だった。


桜が咲いていた。



美咲は二十一歳になっていた。



そして。



長年の夢だった看護学校に合格した。



合格発表の日。



掲示板に自分の受験番号を見つけた瞬間。



涙が出た。



嬉しかった。



母との約束。



自分自身との約束。



そして。



悠真との約束。



ようやく夢への第一歩を踏み出せた。




真っ先に電話を掛けた。



「お兄ちゃん!!」




電話の向こうから聞こえる声。



「どうした?」




「受かった!!」




数秒の沈黙。




そして。



「本当か!?」




今まで聞いたことがないくらい嬉しそうな声だった。




「うん!!」




「やったな!!」




その声を聞いただけで。



また涙が出た。




電話の向こうで。



悠真も笑っていた。




心の底から。




その夜。



お祝いをすることになった。




久しぶりに二人で食事。




小さな定食屋。



豪華ではない。



でも。



二人にとっては十分だった。




「おめでとう。」




「ありがとう。」




「母さん喜ぶぞ。」




「うん。」




二人で笑った。




本当に幸せな夜だった。




だが。



その数日後。



美咲は偶然。



あるものを見つけてしまう。




悠真のアパートだった。




合格祝いのお礼に掃除を手伝っていた。




古い棚を動かした時。



一冊のファイルが落ちた。




「ん?」




何気なく拾う。




そして。



中を開いた。




そこにあったのは。



大学の資料だった。




何校分も。




パンフレット。



願書。



模試の結果。




そして。



先生からの推薦状。




美咲は息を止めた。




「え……?」




知らなかった。




悠真がここまで大学を目指していたなんて。




ページをめくる。




付箋。



書き込み。



線が引かれた箇所。




本気だった。




遊びではない。




本当に。



本当に行きたかったんだ。




その時。



一枚の紙が落ちた。




古いメモだった。




そこには。



悠真の字で書かれていた。




『大学進学は諦める』



『生活費優先』



『美咲の進学資金を貯める』




美咲の手が震えた。




目の前が滲む。




読めない。




でも。



意味だけは理解できた。




「嘘……。」




声が漏れる。




嘘だ。



そんなはずない。




お兄ちゃんは。



働きたいから就職したんじゃなかったの?




夢を叶えたかったんじゃないの?




違った。




全部。



全部。



自分のためだった。




美咲のためだった。




その瞬間。



涙が溢れた。




止まらない。




次から次へと。




「なんで……。」




しゃがみ込む。




「なんで言わないの……。」




苦しかった。




今まで。



何も知らずにいた自分が。




情けなかった。




悔しかった。




夕方。



悠真が帰宅する。




ドアを開ける。




そして気付いた。




美咲が泣いている。




机の上には。



大学の資料。




悠真は全てを悟った。




「あー……。」




静かに頭を掻く。




「見つかったか。」




その言葉で。



美咲の涙がさらに溢れた。




「なんで……。」




「……。」




「なんで言わなかったの!?」




声が震える。




「なんで一人で決めたの!?」




「美咲。」




「なんで夢を捨てたの!?」




部屋が静かになる。




悠真はしばらく黙っていた。




そして。



小さく笑った。




「夢は捨ててない。」




「え?」




「変えただけだ。」




美咲は首を振る。




「違う!」




涙が止まらない。




「違うよ!」




「お兄ちゃんはずっと我慢してきたじゃない!!」




「……。」




「私ばっかり!!」




「私ばっかり守られて!!」




ついに。



声を上げて泣いた。




子供の頃以来だった。




悠真はそんな妹を見つめる。




そして。



ゆっくり近付いた。




頭を撫でる。




昔と同じように。




「泣くな。」




「うぅ……。」




「看護師になるんだろ?」




「なる……。」




「じゃあ胸張れ。」




「でも……。」




悠真は優しく笑った。




「お前が夢を叶えるのが一番嬉しい。」




その言葉を聞いた瞬間。



美咲は崩れ落ちた。




泣いた。




人生で一番泣いた。




そして心の底から思った。




今度は自分が。




お兄ちゃんを幸せにしたい。




守られるだけじゃ終わらない。




絶対に。




そう誓った春の日だった。

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